オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

岩崎夏海 著 ダイヤモンド社

1,680円 (税込)

3月2日のトーハン調べでは、本書はビジネス書の第4位。発売3カ月で18万部を売り上げ、「ベストセラーでも20万部止まり」というビジネス書の定説を覆そうとしています。著者の岩崎夏海氏は「200万部のロングセラーを狙いたい」と3月3日付の「日経流通新聞」で語っています。

表紙カバーにはアニメタッチの女子高生が描かれ、とてもビジネス書の体裁ではありません。むしろ、若者たちに人気の「ライトノベル」の大型判かと思ってしまいます。しかしこれが本書の狙いで、山ほど出ているドラッカー解説書と一線を画する効果を生んでいます。

内容は小説仕立てで、都立高校野球部のマネージャーであるヒロインの「みなみ」が、偶然読んだドラッカーの『マネジメント』に傾倒し、本に書かれている通りに野球部の運営を改革しながら次々と効果を上げていくストーリーです。文章が軽快ですらすらと読めてしまうので、数時間あれば276ページを読み終えてしまうでしょう。

著者は「ダウンタウンのごっつええ感じ」などの制作に関わった放送作家で、秋元康氏に師事し、AKB48のプロデュースにも関わっています。主人公「みなみ」のモデルは、AKB48の峯岸みなみさんだそうです。そのあたりの経歴と感覚が、従来のビジネス書とはまったく異なる本を世に出すことにつながったと思われます。

本書執筆の動機は、著者自身がドラッカーの『マネジメント』を読んで感銘を受けたことと、「なぜ大リーグの監督はマネージャーと呼ばれるのに、日本の高校野球の女子マネージャーは雑用しかやらされていないのだろうか」という疑問を持ったこと。それが結びついて、「女子高生」と「ドラッカー」という意表を突いたコンビネーションが生まれました。

本書の要所要所には、『マネジメント(エッセンシャル版)』からの引用が掲載されています。しかもページ数まで。たとえばこんな感じです。
あらゆる組織において、共通のものの見方、理解、方向づけ、努力を実現するには、「われわれの事業は何か、何であるべきか」を定義することが不可欠である。(22頁)

「みなみ」はこの箇所を読んで、自分たちの野球部の「目的」を真剣に考え始めます。そして、さまざまな部員たちとの会話を通して、野球部の目的が「感動を与えること」であることに気づきます。

その後「みなみ」は、部員たちとの間に溝があった監督に補佐をつけて風通しを良くし、他のクラブとの提携関係を作って活動をやりやすくし、トレーニングメニューを変えて部員たちのやる気を引き出します。チームの強みを出すため、監督は「送りバントをしない」「ストライクだけを投げる」「塁に出たら次の塁を積極的に狙う」という作戦を立てます。最終目標は「甲子園に行く」こと。果たして彼女たちの夢は実現するでしょうか。

ドラッカーといえば、「有益らしいがむずかしい」と敬遠していた人の多い経済書。しかし本書を読んでから『マネジメント』を読めば、すらすら理解できるでしょう。そのためか、本書が出てから『マネジメント』は3万部を増刷したそうです。もっとも、出版社は同じダイヤモンド社なのですが。


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