オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

インセンティブ
自分と世界をうまく動かす

タイラー・コーエン 著 高遠裕子 訳 日経BP社刊

1,995円 (税込)

「インセンティブとは何か」と聞かれたら、みなさんはどう答えるでしょうか。

「歩合」「販売報奨金」「臨時ボーナス」…etc。

どれも間違ってはいませんが、それらはインセンティブが形になったものの一部でしかありません。正確に言うなら、インセンティブとは「人や組織のモチベーションを誘引するものすべて」となります。

本書はそのインセンティブを経済学の切り口で解説したものです。といっても、難解な専門用語や数式は皆無で、グラフや表も出てきません。すべて平易なたとえ話や著者の身近な事例で解説されています。

著者タイラー・コーエンは、米国ジョージ・メイソン大学で教鞭を執る経済学者。ニューヨーク・タイムズの常連筆者であるほか、フォーブズ、ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナルなどにもよく寄稿しています。

本書の第1章には、いきなり気になることが書かれています。 「経済学の核となる概念はカネではない。インセンティブである。インセンティブとは、簡単に言えば、人間に行動を起こさせるもの、あるいはいくつかの選択肢のうちひとつを選ぶよう促すものだ」

著者は本書の目的をこう語っています。「この本では、経済学の基本原理を使って、みなさんが欲しいものをより多く手に入れる方法をお教えしよう」

第1章から第10章までの300ページあまりでは、さまざまな角度からインセンティブの性質とその取り扱い方が解説されていきます。たとえば、こんな感じです。 「インセンティブは、カネの場合もあるが、チップの場合もあれば、笑顔やほめることである場合もある。生涯の約束がインセンティブになる場合もある」 「望みを叶えるためには、他人をそして自分自身を動機づけしなくてはならない」

ブロガーとしても著名な著者の博学ぶりを反映して、本書にはじつに多彩な話題が登場します。美術、音楽、映画、本…。そうして著者が見せようとしているのは、従来なら認知心理学の領域であった顧客や取引先の扱い方です。

著者は「不足」という概念が経済学の重要なポイントであると説きます。特に現代は「時間」と「関心」の不足が大きな問題です。相手の時間を自分のために使わせるにはどうするか。相手の関心を自分に向けさせるためには何が必要か。

また、世間一般で理解されている「インセンティブ」の意味である報酬についても、著者はこんな風にまとめています。
「追加的な努力で著しく向上する作業については、金銭的な報酬を提示する」
「内側からのやる気が弱いときに、金銭的報酬を提示する」
「報酬を受け取ることが社会的評価につながる仕事については、金銭的報酬を支払う」

読めば必ず、思い当たることが見つかるでしょう。最近のお手軽なノウハウ本とは違い、さらっと読み通すことは難しい本ですが、手元に置いて損はないと思います。

最後に、著者が引用している「女性に好印象を持たれるための手管」をご紹介しておきます。
「ワインをふるまい、食事を御馳走し、電話をかける。ハグし、支え、抱きしめ、驚かす。ほめたたえ、笑いかけ、話に耳を傾ける。ともに笑い、ともに泣く。うっとりさせ、励まし、信じる。彼女とともに祈り、彼女のために祈る。添い寝をする。買い物に付き合い、宝石をプレゼントする。花を買い、手を握る。ラブレターを書く。世界の果てまで行って、彼女のために戻ってくる」


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