オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

記者クラブ崩壊
新聞・テレビとの200日戦争

上杉 隆 著 小学館101新書

735円 (税込)

Twitterに積極的に参加されていたり、ブログメディアに熱心に目を通していたりする人なら、本書や著者についてはすでによくご存じでしょう。また、本書の背景となっている「記者クラブ」についても、基礎知識はお持ちだと思います

そうでない人たちのために簡単に解説しておくと、「記者クラブ」とは戦前から存在する組織で、大手マスコミによって作られ、省庁や自治体、警察などにおかれているものです。

もともとは公権力による情報隠蔽を防ぐためのものだったはずですが、いつの間にか体質が変わってしまい、大手マスコミのための「取材拠点」と化してしまいました。「記者クラブ」に入っていないメディアは取材活動を認められず、加盟しているメディアは横並びで報道活動をするようになったのです。

民主党は政権交代前から「記者会見のオープン化」を公約にしていました。大手マスコミだけのための既得権益である「記者クラブ」を解体し、国籍やメディアの規模を問わない自由な取材活動を認めることにしたわけです。

しかし、民主党政権になっても「記者クラブ」は依然として存在し続けました。政権交代直後に記者会見をオープン化したのは岡田外務大臣だけで、その記者会見は読売新聞など「記者クラブ」のメンバーによってボイコットされそうになりました。

本書によれば、日本の記者クラブ制度は世界でも悪名が高く、EU議会などは毎年のように「非難決議」を採択しています。しかし日本の国民はそのことを知りません。なぜなら、「記者クラブ」のメンバーである大手マスコミが、都合の悪いニュースを報道しないからです。

それでも、「記者クラブ」のメンバー各社が国民のための報道を一生懸命にやっていれば、その罪はまだ軽いといえるかもしれません。しかし実際は、役人から渡された情報を横並びで報道しているだけだと著者は主張しています。

薬害エイズ問題を熱心に追求したのは、櫻井よしこ氏をはじめとするフリーのジャーナリストたちでした。自民党政権の命取りとなった年金問題を追及したのは、フリージャーナリストの岩瀬達哉氏でした。もしもこの人たちが記者会見に参加できていたら、これらの問題はもっと早く明らかにされていたはずだと著者は言います。

「記者クラブ」がなくなれば、大臣も役人も記者たちも、みな忙しくなります。記者会見でどんな質問が飛んでくるかわからず、答弁するのが大変になるからです。また、不勉強な記者は失笑を買うでしょう。しかし、そういう状態こそが真のジャーナリズムなのでしょう。

「記者クラブ」問題は、ヤミカルテルや談合とまったく同じ性質のものです。役人と当事者が結託して競争状態を解消し、居心地のよい利権のプールを作り出しているのですから。いま、中央官庁から「記者クラブ」に、年間13億円以上もの便宜供与がなされているそうです。

本書は著者が当事者であり、「現在進行形」のテーマを扱っているところがユニークな点です。また、Twitterやブログ、ネットジャーナリズムにおけるホットな話題でもあります。複数の情報ソースと比較しながら読むと、興味は倍加するでしょう。

なぜ日本にすぐれたジャーナリズムが存在しないのか、既得権益にしがみつく姿はなぜ醜いのかを赤裸々に描いた好著です。


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