ウェブを炎上させるイタい人たち --面妖なネット原理主義者の「いなし方」
中川淳一郎 著 宝島社新書
700円 (税込)
「ネット原理主義者」というサブタイトルには思わず笑ってしまいますが、目次を見るとさらに強烈な表現が並んでいます。
「ウェブは集合痴の世界」
「ネットは何年経ってもただの遊び場」
「本当に頑張った人が報われないのが“ネット”」
「20~30代のネット世代は、全能感を持った『ただの負け組』」
それもそのはず、著者はベストセラー『ウェブはバカと暇人のもの』でウェブ世界を荒らす困った住人たちの生態を明らかにした人物です。本職はニュースサイト編集者兼PRプランナーだそうですが、元ライターだけに攻撃対象に対しての舌鋒は鋭いものがあります。
著者は毎日ネットを見ていると、良い点よりも以下のような悪い点を目にする機会が圧倒的に多いといいます。
・揚げ足取り
・言われなき中傷
・「オレ、頭いいんだぜ」自慢
・当事者以外から見れば不気味な馴れ合い
・コミュニティの古参者が新参者に「ルールが分かってない!」と説教する姿
・芸能人ブログの気持ち悪いファシズム的絶賛キャーキャーコメント
・やたらと品行方正な学級委員的発言をする人々からの注意
・どうでもいい一般人の日常の垂れ流し
・「バカがここまで世の中に多いか」の確認
・合意するわけのないゴールの見えない議論(主張の押し付け合い)の活発化
・人がいかに他人を貶めるために力を注ぐかのプロセス確認
著書はこう言います。
「私自身もネットニュースの編集者として、これまで何十万というコメントに接し、罵倒を繰り返されてきた。出した記事の内容に問題があり、こちらの落ち度であることもあるが、まあ、なんと負のエネルギーとはすさまじいものだ! と感心することだらけである。殺害予告をされたことも何度もあるし、クレームメールも一時期は殺到していた」
あまりに多くの人が入り込んだ結果、いまやインターネットはカオスと化しています。そこには期待されたプラスの効用も山のようにありますが、同時にマイナスのエネルギーも膨大になっているわけです。
著者はネットで傷ついた人たちに対して、「何とかうまくいなしてください」と語りかけます。続いて、「これ以上ネットに燃料投下しないでください」「決して自殺なんて考えないでください」と呼びかけます。
また、著者は企業のネット利用について、次のように言います。
「企業の人に対して『それって本当に必要ですか? ブログやツイッターで何をしたいんですか?』と聞き返すと、『いやぁ、それくらいやらなくては遅れちゃうでしょ?』程度の返事しか彼らからは戻ってこない。完全な『表現強迫観念』『交流強迫観念』に囚われているのである」
著者のネットに対する本音は、こうです。
「ネットユーザーはただ自分が好きだから、面白いから使うのである。そこは情報の送り手側がコントロールできるものではない。ネットではB級商品以外ブランディングはあまりに難しいし、よほどおトクなことがない限り普通のネットユーザーは会員登録などしない。その厳しすぎる現実を企業は知れ! と思うのだ。あなた達はネットのことが実感として分かっておらず、専門家の言う最先端過ぎること、ネットの理想論を聞きすぎてムダなカネを使っているだけだ」
そして、ネットで絡まれた場合の「いなし方」ですが、「自分が悪いと思った場合は、素直に謝る。人間味あふれる誠意ある文章を書く。『一度お会いいただけますか』と言う」、「自分が悪くない場合、バカの意見は無視する。もはや『敵』だと反論する。粘着されたら『いい加減にしろ』で終わりにし、それで済まなければ弁護士に相談する」が基本だそうです。
最後に、著者が指摘する「ネットで叩かれる13項目」を紹介しておきましょう。「炎上」を避けるためのポイントです。
・上からものを言う、主張が見える
・頑張っている人をおちょくる、特定個人をバカにする
・既存マスコミが過熱報道していることに便乗する
・書き手の「顔」が見える
・反日的な発言をする
・誰かの手間をかけることをやる
・社会的コンセンサスなしに叩く
・強い調子の言葉を使う
・誰かが好きなものを批判・酷評する
・部外者が勝手に何かを言う
・強い立場にいる人が、あたかも弱者に擦り寄ったかのような発言をする
・自慢をする
・ネットに対してネガティブな発言をする
ネットの「現実」を見つめ直すきっかけとして、一読の価値がある本だと思います。
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