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経済ニュースが10倍よくわかる
「新」日本経済入門

三橋貴明 著 アスコム刊

1,000円 (税込)

帯カバーに大きく目立つ文字「日本は破綻しません!」。本書は今の日本で「常識」とされる経済のテーマに異を唱え、経済の素人にもわかりやすく解説したものです。

取り上げられるのは、「財政赤字」「輸出依存」「消費税増税」「少子化問題」「郵政民営化」「中国の台頭」「アメリカの復活」といった、現在の日本にとって深刻なテーマです。

著者は40歳の経済評論家。中小企業診断士の資格を持つほか、1日4万アクセスを誇るブロガーでもあります。先の参院選では比例区に自民党から立候補しましたが、落選しました。

本書の第1章は、日本の財政破綻について述べられています。日本は本当に借金大国なのか、このままいくとギリシャのように財政破綻を迎えるのか、その検証を平易な言葉で進めています。

結論から言うと、日本の赤字額はGDP比で10%程度。これは他の先進国と比べて「並」の比率であり、悲観すべきデータではない。そしてギリシャと日本は借金の構造が全く異なり、日本は破綻の心配が全くないと著者は主張します。外貨建ての借金を他国にしているギリシャと、自国通貨での借金を自国民に対してしている日本では状況が全く違うというのです。

また、日本が輸出依存国であるという「常識」にも、著者は反論しています。経済産業省が2010年2月に出した「各国の輸出依存度」という指標において、日本は韓国よりも中国よりも、フランス、イギリス、ドイツよりも輸出依存度が低く、日本よりも低い国はわずかにブラジルとアメリカだけという状況でした。「貿易立国・日本」は幻だったことになります。

第2章で著者は、先の参院選で争点となった消費税増税について一刀両断しています。「国内から徴税して国内の債権者に借金を返済するのはナンセンス」というわけです。なぜなら、返済された人たちが再び国債を買うからです。日本やアメリカのような、借金が自国通貨建てで借りている相手が自国民の場合は、中央銀行に国債を買い取らせるのがもっとも手っ取り早い赤字解消策なのだと著者は言います。

そんな簡単なことをなぜ財務省のエリートたちが理解できないかについて、著者は明快に語ってくれます。「財務省といっても所詮は経理畑の人間なのだから、切り詰めと増税しか考えない。しかも予算を決める際の担当者は1年で異動してしまうから、目前の予算をどれだけ切り詰められるかしか念頭にない」というわけです。

第3章では、政治の世界で流行語になっている「構造改革」がやり玉に挙げられます。構造改革とは本当は何なのか。構造改革をすれば景気が良くなるのか。著者の見解では、構造改革はインフレのときにこそ実行すべき政策で、デフレのときにはやるべきではないそうです。国鉄と電電公社はインフレのときに民営化されたので成功したというわけです。郵政民営化はデフレを収束させてから手を付けるべきであったと著者は言います。

ではデフレの今はどんな政策を選択すべきなのか。著者の提言によると、「生産性の低い需要をつくるべき」で、公務員を増やす、公共投資を増やすといった政策が望ましいのだそうです。一例として、政府経営の派遣会社を作り、ピンハネしないで報酬を全額労働者に渡し、仕事がないときは国有林の間伐などをやらせておけばどうかと著者は提案しています。

第4章では、「日本が中国に飲み込まれるのか?」を検証しています。著者の結論は明快で、「中国の経済成長はアメリカの貿易赤字によって支えられているだけであり、力強いものではない」。また人民元が世界の基軸通貨になるかどうかについては、「変動相場制に移行しなければ基軸通貨にはなり得ないが、人民元が変動相場に移行した瞬間に、中国の貿易黒字はすべて吹き飛ぶ」と予言しています。実質失業者2億人、年間暴動回数10万回というのが、中国の正体なのだと著者は紹介しています。

マスコミが伝えるニュースとは違う角度からものを考えてみたい人に、ぜひおすすめの1冊です。


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