オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

ビジネス界に脈々と伝わる先人の知恵 業界のセオリー

鹿島 宏 著 徳間書店 刊

1,470円 (税込)

「企画は半歩先を行け」というのは、出版界の鉄則です。「1歩先」では読者がついてこれず、「半歩後ろ」では情報が古すぎて相手にされません。本書の「はじめに」では、この出版界では知らぬ者のないセオリーを例にとって、他業界の鉄則を学ぶことの重要性を説いています。ある業界では当たり前のセオリーでも、違う業界の人が知ると非常に斬新で有益な技となることがある。これが本書の企画意図です。

構成は全部で10章。仕事の悩み別に、さまざまな業界のセオリー200が紹介されていきます。たとえば第1章「なにがなんでも数字が欲しいとき」に効くセオリーでは、次のようなものがあります。
「困ったときには動物と子ども--広告業界」
「オレンジ色は食欲を刺激する--食品業界」
「要約できない脚本にヒットなし--映画業界」

第2章は「急いで売上げを上げたいとき」に効くセオリー。こんなものがあります。 「混んできたらBGMのテンポを上げろ--外食業界」
「実車とすれ違う道は吉--タクシー業界」
「売上げが落ちたら値段を上げろ--おむつメーカー」

第3章は「思うように結果が出ないとき」に効くセオリー。
「汚い工場から名品は生まれない--製造業」
「もうダメだと思ってからが勝負--代理店営業」
「息抜きも仕事のうち--植木職人」

こんな調子で、1ページ1テーマのセオリーや格言が解説文とともに並んでいます。ちなみに各章のテーマは以下のようになっています。
第4章「仕事で失敗したくないとき」
第5章「どうしてもアイデアが浮かばないとき」
第6章「予算がないとき」
第7章「顧客の気持ちをつかみたいとき」
第8章「人間関係に疲れたとき」
第9章「揺るぎない自信を持ちたいとき」
第10章「プロフェッショナルになりたいとき」

著者は個人のように見えますが、これはフリーライターとフリーエディターのユニット名。リクルート系の雑誌でビジネス界、エンタテインメント界を多数取材した経験が本書に生きています。

本書はビジネスのためのヒント集ですが、同時にネタの宝庫でもあります。たとえば解説文の中にさりげなく出てくる「木戸に立てかけし衣食住」という古くから接客業で伝えられてきた言葉は、「気候」「道楽(趣味)」「ニュース」「旅」「テレビ」「家庭」「健康」「仕事」「衣(洋服)」「食べもの」「住まい」が話題のきっかけとなることを示したものです。

「人生の3Dがビジネスチャンス--画商」 オークションに絵が売りに出されるきっかけは「3つのD」だそうです。ひとつめは「死(Death)」。遺産相続で価値のわからない相続人が絵を手放す場合です。ふたつめは「借金(Debt)」。会社の倒産や破産などで急いで財産をお金に換えなければならない場合。そして最後が「離婚(Divorce)」。慰謝料を支払うために絵を手放すケースです。

「女性誌がマネー特集を組むと相場が下がる--証券業界」
女性誌がマネー特集を組むというのは、ふだん株や投資に興味を持たなかった素人たちが市場に興味を持ちはじめたことを示します。専門家はこれを見て、「ピークは近い」と判断するわけです。投資家のジョセフ・P・ケネディが路上で靴磨きの少年から株の話をされ、あわてて持ち株をすべて売り払ったというのは証券界では有名な話です。その結果、ケネディは大恐慌による暴落から財産を守ることができたそうです。「人の行く裏に道あり花の山」という格言も、このことを示しています。

ビジネスのヒントに、会話やスピーチのネタに使える便利な1冊です。


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