オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

逆境は飛躍のチャンス
妻を亡くしたシングル・ファーザー、48歳で起業する

澁谷耕一 著 PHP研究所 刊

1,575円 (税込)

メインタイトルだけ見ると、ありがちな自己啓発書かビジネス書かと思ってしまいますが、サブタイトルの通り、本書はひとりの男性とその家族の起業物語です。このタイトルは、「たとえ失意のどん底にあっても、そこには無限のチャンスが眠っている」という著者から読者へ向けてこめられたメッセージなのです。

著者は元・日本興業銀行のエリート銀行マン。24年間の勤務中は、ニューヨーク支店や香港支店で海外勤務を経験し、M&A事業や海外投資アドバイザリー事業を手掛けてきました。学生時代にアルバイト先で知り合った奥様との間には2男1女の3人のお子さんができ、幸せ一杯の家庭を築いてきました。

大学院を卒業後、さらにコロンビア大学大学院で博士課程に進んだ奥様は、コンサルタントとしての道を歩み、ダブルインカムの一家は順風満帆に見えました。奥様の体に乳がんが発見されるまでは。

香港支店に異動になったばかりの著者には、「妻ががんになったから帰国させてほしい」と会社に言い出すことなど思いつかなかったそうです。エリートにありがちな「キャリアに傷がつくのを恐れる気持ち」。夫婦ともにその罠にはまりこんでしまい、手術後の奥様は充分に体を休めることなく仕事に復帰していきました。

運命の宣告の日、医師から再発と肝臓への転移を告げられ、エリート夫婦の人もうらやむ暮らしは一変します。徹底した抗がん剤治療が始まりましたが、奥様のがんはついに脳に転移し、悪性の脳腫瘍となって命を奪ってしまいました。享年45歳。あとには2人の高校生の男の子と小学校3年生の娘さんが残されました。

失意の底に沈んだ著者は、ひたすら「今後のこと」を考えます。そこで得た結論は、「子育てを最優先しよう」ということでした。しかし、エリート銀行マンのままではそれは不可能です。そのために著者が選んだのは、「退職・独立」への道でした。

それまで一度も「独立」を考えたことのなかった著者にとって、会社を辞めるのは本当に勇気のいることでした。47歳という年齢だけでも無謀と思われがちなのに、それに加えて3人の子どものいるシングル・ファーザー。周囲の誰もが起業に反対しましたが、著者の決意は固く、ついに退職するに至りました。

驚いたことに、著者は退職するまで「次にどんな仕事をするのか」を決めていませんでした。自分に何ができるのか、どんなことをすれば食べていけるのかが見えなかったからです。しかし、自分のキャリアを振り返っているうちに、あることを思い出しました。それは、お客さんである中小企業の社長さんたちが、みな事業計画書を作成するのが苦手だったことです。

もともと融資先からヒアリングして事業計画書をまとめる仕事は、メインバンクの銀行員がやっていたことでした。それが銀行の省力化とともに忘れられ、「借りたいけど書類が作れない」「書類のない相手には貸せない」という空白を生んでいたのです。著者はその間隙に割り込み、企業と銀行の両者がともに得をするビジネスをスタートさせました。

このビジネスは著者の人脈や経験が功を奏して成功し、今では都心の一等地にオフィスを構えるまでになりました。人脈の広がりは、本書に安倍晋三元首相や大竹美喜アフラック創業者が推薦文を寄せられていることでも明らかです。

ちなみに著者の会社は「リッキービジネスソリューション」といいます。「リッキー」は亡くなった奥様のニックネームでした。


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