オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

山手線と東海道新幹線では、どちらが儲かっているのか?
JR6社の鉄道ビジネスのカラクリ

中嶋茂夫 著 洋泉社 刊

1,470円 (税込)

カバーを見ると、一瞬「鉄道オタクの本かな?」と思ってしまうかもしれませんが、本書は鉄道の話題を例にとって、「儲けのしくみ」を詳しく解説したビジネス書です。
とはいうものの、内容はすべて鉄道に関することですから、鉄道に興味のある人の方が、より理解しやすいでしょう。

著者はインターネット活用コンサルタント。講演会や顧問先訪問で毎日のように旅をしていて、JRに支払う運賃は年間数百万円に達するそうです。しかし、子供の頃からの鉄道ファンなので、少しも苦にならないとか。これまでに『ポッドキャストでガンガン稼ぐ!』『無料ブログSEOバイブル』『アメブロだからできるパワーブロガーになって夢を叶える方法』などの著書を刊行しています。

本書の表題は、いわゆる「好奇心をくすぐるタイトル」です。雑学好きな人なら、つい「うーん、どっちかな?」と手に取りたくなってしまうでしょう。ラッシュ時は超満員の11両編成が2分30秒間隔で発着する山手線なのか、それとも最高速度270キロの16両編成が1時間に最大12本運行される東海道新幹線なのか、鉄道ファンならずとも好奇心をそそられます。

で、表題の答えですが、著者の判定は「山手線」。東海道新幹線には長距離を高速で移動し、運賃もそれなりに高額というイメージが働くため、こちらの方が儲かっていると思った人は多いのではないでしょうか。実際は、乗客1人1キロあたりにかかる運送費は両者ほぼ同額のため、輸送密度が東海道新幹線の約4倍となる山手線の方が儲かっているそうです。これを評して著者は、「最小の設備投資で回転率を上げて利益を追求する例」としています。

他の章でも同様に、意外な角度から「利益」についての考え方を学ばされます。大阪~札幌の国内最長運転距離を22時間かけて走る人気列車「トワイライトエクスプレス」には、その入手しにくさから「プラチナチケット」と呼ばれる豪華客室「スイート」が1編成に2室だけあります。なぜそれほどの人気なのに部屋数を増やさないのか。その疑問を著者は、「利益の最大化」という観点から解説していきます。

以下、本書の内容を列挙します。
「東海道新幹線に掛川駅を作った本当の理由」
「人気の高い500系新幹線が消えた理由」
「東京~鹿児島中央の直通新幹線はなぜできないか」
「長距離普通列車が激減した理由は」
「大阪環状線に40年前の車両が走っているワケ」
「なぜJR九州はデザインに投資するのか」
「のぞみ号グリーン車に普通車よりも安く乗る方法とは」
「特急車両を使う『ホームライナー』が生まれた理由」
「スキーのパッケージツアーが新幹線代より安い理由」
「なぜ回数券や割引切符の種類がやたらに多いのか」
「運賃の往復割引はなぜ601キロ以上に設定されているのか」
「JR北海道はなぜオレンジカードを熱心に販売するのか」

鉄道の雑学を学びながら、同時に表面からは見えにくいビジネスの本質についても勉強することができる、一挙両得の1冊です。


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