世界一シンプルな経済入門
経済は損得で理解しろ!
日ごろの疑問からデフレまで

飯田泰之 著 エンターブレイン 刊
1,365円 (税込)
A5判2色刷り256ページのボリュームたっぷりの本ですが、お値段は普通のビジネス書並み。ただし本文が横組みなので、一見するとIT関係の参考書のような雰囲気で、あまりビジネス書という感じはしません。
著者は今売り出し中のエコノミスト。「一番わかりやすく経済を語る」と評判で、いろいろな出版社から著書が出ています。駒澤大学の准教授で、内閣府経済社会総合研究所と財務省財務総合研究所の客員研究員でもあります。
そのような紹介の仕方をすると、「結構むずかしい本なんじゃないの?」と疑う人もいるかも知れません。でも大丈夫です。なぜなら、この本の出版社は角川グループでゲーム雑誌やコミックスを専門にしている会社だからです。奥付を見ると「ホビー書籍部」という部署が編集を担当しています。
論より証拠、実際に書店で立ち読みしてみてください。水色と黒の2色印刷が目に優しく、イラストや吹き出しを使って参考書のようにていねいに内容をフォローしているので、自称「経済オンチ」の人でも目からウロコが落ちまくるはずです。
「プロローグ」で著者は次のように言っています。「今まで経済の入門書を読んでよく理解できなかったのは当然です。世にある経済入門書の多くは、読者が経済問題を自力で理解できるようになるとか、経済学をビジネスやプライベートに役立てる目的では書かれていないからです」
そして「本書は次のような目的を持ったあなたのための本です」と語りかけます。
・経済のニュースを理解したい
・教養として使える経済学の基礎を身につけたい
・経済の動きを把握して今後の人生に役立てたい
・ビジネス上の問題を分析し、解決する力をつけたい
著者はそのために、シンプルな考え方から思考のスタイルを読者に学ばせようとします。その基本になる考え方が、タイトルにもある「損得」です。世界を動かす損得勘定の流れを理解することで、難解に見えていた経済の動きが容易に見えるようになるのだそうです。
本書の第1章は「経済学って何ですか?」ですが、ここで著者は経済学という学問をいとも簡単に整理して見せます。
「経済学とは希少な対象について考える学問である」
「そして希少性、インセンティブ、ノーフリーランチの3つを使って問題を整理し、理解し、リアクションを考える学問である」
これだけでは理解しづらいと思いますが、この後に続く数ページは、まさに興奮モノ。ここを読めば誰もが「経済学とは何か」を説明できるようになってしまいます。ちなみに「インセンティブ」はご存じの通り「誘因」とか「動機」と訳される言葉で、人々の行動の元になるもの。「ノーフリーランチ」とは「タダ飯はない」という意味で、「うまい話はめったにない」ことを表します。
以下、本書では経済にまつわるさまざまなテーマを予備校の授業のように解説していきます。「知の快感」を味わってみたい人に、ぜひオススメの1冊です。 |