オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

ゆるく考えよう

ちきりん 著 イーストプレス 刊

1,365円 (税込)

本書の帯にはホリエモンの「オヤジの書いた説教本を読むより、この本を読むほうが100倍役に立ちます」というメッセージがあります。最近の本にはこうした有名人の推薦文がキャッチとして使われることが多いのですが、これは著者が望んだことではない場合がほとんどで、たいていは編集部のアイデアです。

なぜそうするのかというと、「この著者は知名度が薄いのでは」などと社内の出版会議や取次店との折衝で言われたときに、「いえ、ITリテラシーの高い人たちはみなご存じです。そうでない層をカバーするために、堀江さんの推薦文を目立つように帯につけます」と対応するためです。

もちろん著者が「頼んでおくから、彼の推薦文を入れてよ」と言ってくることもありますし、その有名人のファンは書店で見かければ手に取るでしょうから、すべてのケースが出版界の内向きな理由によるものではありません。ただ、「どうしてこの人が推薦しているのだろう?」と疑問に思うようなマッチングも多々あります。

さて、本書は月刊100万ページビューを誇る有名プロガー「ちきりん」さんの「Chikirinの日記」を書籍化したものです。タイトルの「ゆるく考えよう」というのは、不真面目に生きるのを推奨しているのではなく、形骸化した日本社会の固定概念を打破することを、著者なりの表現で語りかけたものです。

したがって、本書を「脱力系エッセイ」と思って読み始めると、どこかで痛い目に遭わされます。本書には、平均的日本人にとって「耳に痛い」話がたくさん出てくるからです。たとえば著者は日本人や日本の組織の特徴を「やめる判断が遅い」と断言しています。自分が倒れるまで後継者を育てない経営者、冷却期間をおいて結局離婚する夫婦、粉飾決算をしてまで不採算事業を抱え続ける大企業…。

本書の章立ては、次のようになっています。
第1章 ラクに生きる
第2章 「自分基準」で生きる
第3章 賢く自由に「お金」とつきあう
第4章 仕事をたしなみ、未来をつくる
第5章 ストレスフリーで楽しく過ごす

以上の章立ては、著者が日本人に突きつけている批判です。「あなたがたは、このように生きていない。だから幸せを感じられないのだ」と。高すぎる目標を掲げて自分と周囲に努力を強制し、常に他人と自分を比較し、せっかく働いて得たお金を考えなしに浪費し、目先のことしか考えずに文句ばかり言っている、まるで楽しみ方を知らない鬱病予備軍が今の日本人だというわけです。

本書の最初の項目は「目標は低く持ちましょう!」です。「できることしか目標にしない」「13億人の中国には負けて当たり前と考える」「人生は早めに諦める」といった考え方を著者は勧めています。今の日本人が「目標は高く! 努力は尊い」を当たり前と思っているのに対して、「それは誰かに刷り込まれた考えなのでは?」と疑念を表明しているのです。

批判はしますが、著者は日本をすばらしい国だと言っています。食べ物が美味しい、決めたことが必ず実行される、平和で安全、社会が平等、宗教のストレスがない、自然と四季が多彩で美しい、世界の中でユニーク、といった点が「世界のどこよりも一番」と褒め称えます。

そして著者は「これからの日本は明るい」と言います。その理由は、世界に売り込めるユニークな価値がたくさんある、若者が昔より優秀、世界の中心がアジアになるので近くなる、などです。そんな未来の日本に対して、「日本はアジアのイタリアになれ」というのが著者の主張です。

とてもこのコーナーでは魅力を紹介し尽くせない、頭を柔らかくするのに絶好の参考書です。


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