オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

憂鬱でなければ仕事じゃない

見城徹・藤田晋 著 講談社 刊

1,365円 (税込)

2人の著者については先刻ご承知と思いますが、念のためご紹介を。見城徹氏は元角川書店の敏腕編集者。1993年に幻冬舎を設立し、出版界で話題となるヒット作を連発しています。藤田晋氏はサイバーエージェントの創業社長。史上最年少で東証マザーズに上場するなど注目を集めました。幻冬舎とサイバーエージェントは業務提携やアメーバブックス新社の合弁設立を通じて、深い友好関係にあります。

本書はよくある対談本ではありません。おそらくこれからこのスタイルを模倣した対論形式の本がたくさん出てくると予感させる、新しい編集形式を導入しています。それはどういうものかというと、1ページ目に見城氏の自筆による格言ないしは警句、2ページ目にその短い解説、3~4ページがそれにまつわる見城氏の発言、5~6ページがそれを受けての藤田氏の発言となっています。これが延々と繰り返されて1冊の本にまとまっているわけです。

この構成のおかげで、本書はどこから読んでも読みやすく、違和感なく中に入っていけます。また、明快に2人の発言を分けてあるため、この2人の人となりがとてもよく理解できます。年配の人は見城氏の発言にうなずき、若い人は藤田氏の発言に共感を持つことでしょう。

また、ぜひ注目してほしいのは、本書が幻冬舎ではなく講談社から出版されていることです。さすが見城氏は公私混同と思われることを避けるだけの見識の持ち主でした。大手出版社の経営者で、自著を自社から出している人がいますが、恥じるべきです。

本書のテイストを知るために、「あとがき」から見城氏の言葉を引用してみます。
--何か事をなすためには、身体を張らなければならない。もし誰かが、うまくいかないと嘆いていたら、「君は身体を張ったのかい?」と問いたい。身体を張って七転八倒しながら、リスクを引き受けて、憂鬱な日々を過ごす。そうやって初めて、後悔のない、清々しい気持ちになれる。

もう1カ所、同じく「あとがき」から引用します。
--正面突破。自分を傷めないで、誰が僕に心を動かしてくれるだろうか。恋愛も仕事も人生も同じである。僕はこれからも圧倒的努力を続けるしかない。

以下は本書の「標題」から抜粋したものです。
・小さなことにくよくよしろよ
・かけた電話を先に切るな
・自己顕示と自己嫌悪は「双子の兄弟」
・努力は自分、評価は他人
・スムーズに運んだ仕事は疑え
・パーティには出るな
・これほどの努力を、人は運と言う
・切らして渡せなかった名刺は速達で送れ
・初対面の相手と、カラオケには行くな
・良薬になるな。劇薬になれ
・すべての道は自分に通ず
・ヒットは地獄の始まり
・勝者には何もやるな

「小さなことにくよくよしろよ」の解説は、次のような文章です。
--「神は細部に宿る」という建築家の言葉は、仕事にもあてはまる。つい、見過ごしてしまうものにこそ、事を左右する鍵がある。
そして見城氏はこの項目で次のように発言しています。
--これは角川書店の新入社員時代から守ってきた、僕の座右の銘だ。小さなことを守れないやつに、大きな仕事などできるはずがない。(中略)こと仕事においては、小さなことでくよくよしなければ、相手の心は掴めない。ましてや大きな仕事など、できるはずがない。
それを受けて、藤田氏の発言はこうなっています。
--上司と部下の関係でも、同じことが言えます。抜擢しようと思うのは、小さなことを頼んでも、きちっとレスポンスしてくれる人。あるいは、ダメだった時は、なぜダメなのか、報告してくれる人。(中略)だから、上司から小さな頼みごとをされた時こそ完璧に対応したほうがいいと思います。

最後に、「スムーズに進んだ仕事は疑え」の解説を紹介しておきましょう。
--誰でも、面倒なことは避けたがる。それをあえて行うことにより、凡庸を脱する道が開けるのだ。いばらの道を一歩ずつ進むことでしか、勝利へは近づけない。

仕事への意欲が足りないなと思ったときに、読んで効く栄養ドリンクです。


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