どう伝わったら、買いたくなるか
--絶対スルーされないマーケティングメッセージのつくり方
藤田康人 著 ダイヤモンド社 刊
1,575円 (税込)
自社の商品を買ってもらうためにメッセージを発信する…これは商売を行っているすべての人が実行していることでしょう。そのメッセージが的確に狙う相手に届き、しかも相手が想定通りに反応してくれるかどうかで、私たちは一喜一憂しているわけです。
「メッセージがスルーされる」とは、狙った相手に発信した情報がうまく届いたにもかかわらず、思ったように反応してもらえない状態のことです。メルマガなら開封せずにゴミ箱に直行、といったところでしょう。そうならないようなメッセージを作るにはどうしたらいいかというのが、本書のテーマです。
著者の藤田康人氏は、統合型マーケティングをプランニングする株式会社インテグレートのCEOで、前職の素材メーカーではキシリトール・ブームを仕掛け、ゼロから2000億円の市場を作り上げました。気になる言葉を本文から拾ってみましょう。
「これまで長らく日本では、マス広告という4番のスーパースターがひとりいれば、どんな試合もたいてい勝つことができました。しかしこれからは、間違いなく、PRも店頭販促もソーシャルメディアも自社サイトも、すべてを使って戦う全員野球が求められています」
マス広告というかつての「4番打者」にかげりが出ていることは、誰もが認める事実でしょう。著者はその穴を「あらゆるメディアを使って埋めなければ勝てない」と言っているわけです。では私たちは現在あるすべてのメディアに、さらにはこれから登場するすべてのメディアに精通し、それらを使いこなさなければ競争に負けてしまうのでしょうか。著者はそうは言っていません。
「人々の情報、メディアとのかかわり方が明らかにこれまでとは変わり始めています。(中略)これからも、次々に新しいメディアやデバイスやアプリケーションが登場してはまた消えていくことでしょう。だからこそ特定のメディアやツールに依存しないソリューションが重要なのです。いつの時代でも消費者を動かすのは、心のスイッチを押すことができるストーリーと、そこに込められたメッセージです。われわれが常に追い求めるマーケティングの本質はそこにあります」
「消費者の心のスイッチを押すストーリーやメッセージ」は、思いつきや小手先の技術によって魔法のように生まれてくるものではありません。著者はそこに至るアプローチを「情報クリエイティブ」と呼び、次のような筋道が必要だとしています。
「調査」→「整理」「分析」→「プランニング」→「メッセージ」「ストーリー」「コンテンツ」→「AD」「SP」「PR」「Web」「営業」「社内資料」
本書の内容は、その多くが具体的な「事例」です。そのために学問的な固さがなく、全体にとても実践的な印象を受けます。肩書きだけの講師のセミナーに大金を払うくらいなら、本書を熟読して自分のケースに当てはめ、すぐに行動を起こしたほうが結果につながるでしょう。
自分のビジネスの「根本」を考え直すチャンスになる本です。
|