スティーブ・ジョブズ名語録
人生に革命を起こす96の言葉
桑原晃弥 著 PHP文庫
580円 (税込)
タイトルと表紙の写真をお見せすれば、あとはもう「お読みください」で筆を置きたくなってしまうのですが、それでは叱られてしまうので蛇足ながら解説を試みるとします。
スティーブ・ジョブズについては、ご存じない方はおられないでしょうから省くとして、著者はトップアスリートやものづくり職人などの名語録を多数書いているビジネス・コンサルタント。ジョブズ本も多く、本書はPHP研究所の書籍売れ筋ランキングで堂々の第1位です。
ジョブズの死後、雨後の竹の子のように「ジョブズ本」が大量に発刊されましたが、評伝であればこれから出てくる本人公認の伝記にまさるものはないでしょう。かといって、プレゼンのハウツー本を今読むのは、故人に失礼な気がします。
というわけで、ではないでしょうが本書は売れに売れています。その理由は恐らく、本人の「生の声」がコンパクトに収録されているからでしょう。本書の大部分のページが、右ページをジョブズの短い言葉、左ページをそれに対する解説という見開きスタイルになっています。
以下、収録されているジョブズの言葉をランダムに拾ってみましょう。
「オーケー、誰も助けてくれないなら自分たちでやるまでだ」
「何が起こるかをぴたりと当てることはできない。しかし、どこへ向かっているかを感じることはできる」
「コンピュータに進んだのは、やってる人がほとんどいない領域だったからだ」
「何をほしいかなんて、それを見せられるまでわからない」
「どんなマーケティングでも、駄作をヒットさせることはできない」
「次にどんな夢を描けるか。それがいつも重要だ」
「私たちのゴールはいついつまでにではない。最良の製品を生み出すのがゴールなのだ」
「最善とは言えない状況でやった仕事に、いちばん誇りを感じる」
「お金が目当てで会社を始めて、成功させた人は見たことがない」
「即戦力なんて存在しない。だから育てるんだ」
日本では「天才経営者」の呼び声高いジョブズですが、本書の著者は「ジョブズは天才経営者でも、天才技術者でもない」といいます。では何なのか? ジョブズ自身の言葉を引用しましょう。
「多くの企業は、すぐれた技術者や頭の切れる人材を大量に抱えている。でも最終的には、それを束ねる重力のようなものが必要になる」
エド・キャットムルやジョン・ラセターがいて、資金と機材、優秀な人材に恵まれていたのに、ジョブズがやってくる以前のピクサーは、すぐれた長編アニメーションを生み出すことができませんでした。なのに、ジョブズがやってきたら「トイ・ストーリー」「ファインディング・ニモ」「ウォーリー」といったメガヒットが次々と生まれました。
「今の日本企業に足りないのはどういう人か」がはっきりと見える本です。
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