オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

コミュニケーションをデザインするための本

岸 勇希 著 電通 刊

1,890円 (税込)

はじめにお断りしておきますが、本書は知り合いのオススメで手にしたものです。その知り合いとは、ある外資系コンピューターメーカーでマーケティング・コミュニケーション課に勤務する人。よく一緒に仕事をするのですが、ファンキーな容貌とはうらはらに、勉強熱心な若者だと感心しておりました。今流行の「お弁当男子」でもあります。

B5判、204ページ、オールカラーというボリュームは、ビジネス書というよりは、もはや美術書やムック本の範疇。なぜこの大きさにしたかというと、豊富に写真資料や図版を入れられるようにでしょう。「デザインするための本」と謳っているのに、デザインがなくて言葉ばかりでは、読者から怒られてしまいます。

本書の構成は4章立てで、後ろに行けば行くほど専門的な内容になっていきます。読者対象は、広告業界に興味のある学生から、実際にキャンペーン・プランニングをしているプランナーやクリエイター。とはいえ、現代はさまざまなデジタルメディアを通じて、だれもがプランナーの役割を果たす時代ですから、万人向けの書といってもいいかもしれません。

第1章は、「コミュニケーション・デザインの背景~激変する広告環境」というタイトルで、「広告業界の今」を解説したもの。本格的な内容に入っていくための、ウォーミング・アップの役割を持たさせている部分です。「メディア環境の変化」が「生活者行動の変化」をもたらし、それが「広告コミュニケーションの変化」につながることを説明しています。

第2章は、「コミュニケーション・デザインの実際~事例とその設計図」ということで、本格的に本書の内容に入っていきます。たっぷりページを割いて7つの事例を登場させ、その背景や制作裏話、メディアでの反響などがていねいに並べられています。同時に、事例に登場する基本的な考え方や専門用語なども、きちんとフォローされています。

第3章は、「コミュニケーション・デザインの実践~考え方とヒント」。第2章の7つの事例でたっぷり知識を吸収したら、いよいよ自分の問題を考える番。ここではそのための方法論を考えます。いきなり出てくるのは、一般的なプランニングのフローチャートと、コミュニケーション・デザインのプランニング・プロセスのフローチャートの比較です。日ごろから問題意識を持っている人なら、このフローチャートは「ぐさり」とくるはず。

第4章は、「コミュニケーション・デザインのこれから~日々試行錯誤」と題した、「おまけ」のページ。それまでの章が体系的に構成されているのに対して、この章のみ筆者の考えが自由に述べられています。「人を魅了する、人を集める要素は何か」「時間を奪われるだけの価値を人はどこに求めるか」「生命システムを広告に利用する」といった興味深い内容が続きます。

章と章の間には、コラムとして「素敵なコミュニケーション・デザイン」という見開きの記事が挿入されています。有名な電通の「100色名刺」にまつわる話はとても興味深く、「なるほど」と思わせます。あの名刺、本当は101色だとご存じでしたか?

がつがつとではなく、ふわりと広告やコミュニケーションのことを考えさせてくれる本です。


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