オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

大丈夫、なんとかなるから。

川村妙慶 著 石玉サコ 絵 KKベストセラーズ 刊

1,050円 (税込)

本書はいわゆる「自己啓発書」のジャンルに属する癒しの書です。自己啓発書というのは、能力向上や成功のための方法を説いた本のことで、イギリス人のジェームズ・アレンが1902年に発刊した『As A Man Thinketh(邦題『「原因」と「結果」の法則』など)』がそのルーツであるといわれます。

その後、カーネギーの『道は開ける』、『人を動かす』、コヴィの『7つの習慣』、ナポレオン・ヒルの『小さなことにくよくよするな』など、世界で1000万部以上を売り上げる自己啓発書が続出しました。他にも、スキナー、マーフィー、ロバート・キヨサキといった名前を耳にしたことがあるはずです。

本書はお金持ちになったり、いわゆる「成功」をおさめたりする方法を説いた本ではありません。生きることが息苦しくなったり、人生が行き詰まったと感じている人たちを心の泥沼からすくい上げる「癒しの書」です。著者は僧侶にしてアナウンサー、広島経済大学では客員教授として教鞭をとる川村妙慶師。2007年にはYahoo!の人名検索で第1位になった人気者の「癒し僧侶」です。

そもそも、人はなぜ行き詰まったと感じたり、生きるのが苦しくなったりするのでしょう。それは人間社会の「ルール」と深い関係があります。人間がみな本能のみで生きていれば、おそらく抽象的な問題で悩み苦しむ人はないでしょう。自然界で生きる動物にうつ病がないのは、彼らが本能のみで生きているからです。

しかし人間社会は複雑な組織になっているため、めいめいが本能で生きると混乱します。そこでルールが作られ、それを守らなければならないというプレッシャーのもとで人々は生きるようになりました。人生上の悩みは苦しみは、そこから生まれてきたわけです。

でも、すべての人がみな悩み苦しみながら生きているわけではありません。中には、成功者ではないのに、むしろ失敗の連続で逆境の中で生きているように見えるのに、悩みや苦しみと無縁の人がいます。それはなぜなのか、どうしたらそういうふうに生きられるのか。本書を読めばその答えがわかります。

内容を概観したい人のために、目次を紹介します。
1 「地獄」が私たちの住みか
2 見栄をはらないこと、先読みばかりしないこと
3 人生には「思い通り」という道はない
4 自分の心に向き合おう!
5 パン食い競争にはハチミツを持っていこう
6 わからなくなったら語り合おう!
7 相手の成功を喜びましょう
8 人生は毎日「くじ」を引いている
9 「堪忍な!」で仲直り
10 過去を忘れられないなら水割りを飲め
11 どこにいっても挨拶から
12 クレームもご縁
13 悪口は自分を汚す毒
14 気分屋という商売はない
15 善人は暗く、悪人は明るい
16 冥福は祈らない
17 恨みは恨みで返ってくる
18 好きと得意は違う
19 愛の反対は「無関心」
20 大切な「私」を生きる
21 ひとつの水には4通りの見方がある
22 この世は嘘や偽りばかり
23 「願いが叶いますように」では叶わない
24 本当の拠り所に気づくこと
25 賢い人のたったひとつの習慣
26 憂いている人に、寄り添う
27 「いま、ここ」の縁が大切
28 聖人も凡人も一緒
29 自力で解決するのをあきらめる
30 学んで「問う」ことが大事
31 悩むのは思い込みが強いから
32 しっかり者ほど落とし穴に落ちやすい
33 新しい「色」に出会うこと
34 捨てるのではなく「棄てる」
35 片思いで人生を学ぶ
36 「嫌いな人」との付き合い方
37 無理して勝とうとしない
38 「大袈裟」は身の程知らず
39 いかなる暴力も許されない
40 「一番」の落とし穴
41 この世のすべては無常
42 人間の情と向き合う
43 スーパーマンにはなれません
44 自分基準の定規で測らない
45 頑張ることは「我に張る」こと
46 見返りを求めない
47 魚のように生きてみよう
48 罰はあたりません
49 やる気スイッチとは?
50 引き算から足し算へ

本書には随所で「逆転の発想」が出てきます。たとえばこんなふうに…。 「苦しいときはとことん『地』に足をつけて悩みぬきましょう。『天』は気持ちが良さそうですが、雲の上に乗っているみたいなもので常に不安定なところなのです。もう落ちることはないこの地獄が私たちの住みかです。しっかり大地に足をつけて歩きましょう」

著者は自身の運営するサイトで「ロココ主義」を標榜しています。この「ロココ」はヨーロッパの美術様式ではなく、「ココロ」を反対から読んだものです。「生きるのに行き詰まったら、自分を逆さまから見てみよう」という著者の提案がロココ主義というわけです。

本書を「癒しの書」としてさらに高めているのが、各見開きごとに添えられた石玉サコさんの素敵なイラストです。ぬくもりのある絵が、含蓄に富んだ文章を深く、柔らかく包んでいます。この絵があるおかげで、ともすれば理屈っぽくなりがちな生き方指南が、心の弱った人にも手に取りやすい雰囲気になっています。

本書はそもそも、「親鸞聖人の教えを、世代を超えてわかりやすく書いてほしい」というKKベストセラーズ編集部のリクエストから生まれたそうです。その親鸞聖人の教えとは、つきつめて言えば次のようなものです。「自分一人の力ではどうにもならない。力を抜いて、共存する中で大切なものを見つければいい。人間は賢いだけではなんにも気がつかない。だから、愚かなまま生きたらいい」

ご自身やまわりの人たちの心が弱ったときの常備薬として、本書をそばに置いておかれてはいかがでしょう。


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