オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

不動産屋は笑顔のウラで何を考えているのか?

大友健右 著 幻冬舎メディアコンサルティング 刊

1,470円 (税込)

幻冬舎メディアコンサルティングという出版社は、幻冬舎グループの中で企業や士業の先生をクライアントにして自費出版本を出すところです。同じグループ内で、個人を相手にする幻冬舎ルネッサンスという自費出版部門もあります。

本書の著者は、住宅リフォーム会社と不動産Webプラットフォーム運営会社の2社を経営する実業家で、一般財団法人「全国不動産次世代流通振興会」の代表理事もつとめています。要するに、不動産の裏事情に通じた専門家というわけです。

著者は「はじめに」で、アメリカ中古車業界を描いたマンガを掲載し、その中で業界の隠語である「レモン」と「ピーチ」という2つの言葉を紹介します。「レモン」とは少々難ありで相場より安いクルマ、「ピーチ」とは極上の出物で相場より高いクルマのことです。

普通に考えれば、お客さんは「ピーチ」の方を買っていくと思いがちですが、実際は「レモン」ばかりが売れていきます。なぜなら、お客さんは商品の程度の差を理解できないからです。したがって、つけられた価格でしか良し悪しを判断できず、相場より安い「レモン」を買ってしまうというわけです。

著者は、不動産業界も、まったく同じであると言います。いまだに商売の中身がブラックボックスで、素人には何もわからない業界。それが不動産業界であるというわけです。その謎に満ちた世界の一端をのぞくために、目次の一部をご紹介しましょう。

・なぜ、不動産屋が高級車に乗れるのか?
・なぜ、駅前の不動産屋のお爺ちゃんはろくに働かないのにゴルフ三昧なのか?
・なぜ、仲介手数料ゼロの会社が成り立つのか?
・「損をしたくない」消費者心理が損に向かうワケ
・交渉ごとは必ず後出しジャンケンで進められている
・問題は、営業マンと消費者の間にある情報の非対称性だ

本書の前半は、まさに不動産業界の暴露話です。「ヌキ」「担ボー」「レインズ」といった、素人の知らない専門用語と、それにまつわる業界の悪習が次々と披露されていきます。古いといわれている出版界が、公明正大な正義の業界に思えるくらい、不動産業界は古く、情報が隠蔽され、不公正が横行していることがわかります。

著者は本書で何を目的にしているのでしょうか。それは、古くて闇に満ちた業界に光を当て、外からの批判で革命を起こすことです。売り手と買い手が知らないうちに損をさせられている業界を、一刻も早く他の業界と同じような公明正大な業界に変えたいと望んでいるのです。そのために著者は大枚をはたいて、本書を出版したわけです。

不動産の世界で、いかに庶民が騙されているかは、迷惑メールとの比較で明らかになります。今、よほど不慣れな人でなければ、「交際相手募集」などといった迷惑メールに引っかかる人はいないでしょう。でも、「この地区で売り物件を探しています」という不動産業者のチラシには、簡単に引っかかってしまう人が多いそうです。著者によれば、それらのチラシは迷惑メールとほとんど変わりがない存在だといいます。

不動産業界のいびつさは、仲介業者の立ち位置にも表れます。本来、仲介業者は売り主か買い主の代理人であるべきですが、契約の時の立場を思い出せばわかるように、まるで契約相手であるかのように振る舞っています。それが、「業界の代理人」といわれるゆえんです。

そのために、不動産について素人である人の味方はどこにもいないという残念な状況になってしまいます。いい物件とは、仲介業者がより多く儲かる物件のことであり、お客さんの利益になる物件のことではないのです。冒頭の「レモン」と「ピーチ」で言えば、不動産業界は客にレモンを高値で売りつける世界ということになります。

家を買おうとしている人に対する著者からのアドバイスは、「どんなことがあっても、売却や賃貸に回して自分たちが動ける物件を買うこと」だそうです。それならば、ローン破綻や自己破産といった悲劇を避けることができます。ただし、素人が不動産で優良物件を購入するチャンスはほとんどありません。なぜなら、広告に載る前に、儲かる物件を業者が買いあさってしまうからです。つまり、不動産広告に載っている物件はすべて「売れ残り」なのです。

闇に閉ざされた不動産業界の一端をのぞく、いい機会になる本です。


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