オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

世界中で採用されているのに日本人だけが使っていない日本流の働き方

原マサヒコ 著 扶桑社 刊

1,470円 (税込)

タイトル総数32文字。途中で息継ぎをしそうになる長いタイトルの本です。本のタイトルにも流行があり、長いタイトルが流行ったかと思えば、短くなってみたり、振り子のように変化します。

著者は元トヨタのメカニックマン。5000台以上の自動車整備を経験し、23歳のときに整備技術の優秀さを競う「トヨタ技能オリンピック」で優勝、最年少記録を樹立しました。また、カイゼンのアイデアを競う「アイデアツールコンテスト」でも2年連続全国大会出場を達成しています。

6年間のトヨタ勤務の後、カイゼンを他業種で活かそうと転職。デルでは「5年連続顧客満足度No.1」に貢献し、現在は東証一部上場のグループ企業でマーケティング責任者として活躍しています。すでに『人生で大切なことはすべてプラスドライバーが教えてくれた』『アクセルを踏み込め』(経済界)という2冊の著書があります。

本書は携帯電話キャリアのua社に勤務する中村一歩という営業部の若手社員を主人公に、ドラマ仕立てで進行していくビジネス書です。ストーリーを追っていくことで、ひとりでに「カイゼン」の真髄が理解できるようになっています。

目次の章立てを紹介してみましょう。
プロローグ
第1章 いつも机が汚い人の仕事は絶対に捗らない
第2章 拙くとも素早い仕事こそが人の心を動かす
第3章 「プロフェッショナル」が仕事を滞らせる
第4章 仕事は「言われた通り」やってはいけない
第5章 真の解決とは問題の本質を突き止めること
第6章 「パッと見」で分からなければ意味がない
第7章 目標は非常識なほど劇的な結果を生み出す
ヱピーローグ
中村一歩のカイゼンまとめ
あとがき

ところで本書のタイトルにある「世界中で採用されているのに日本人だけが使っていない日本流の働き方」とは何のことでしょう。それは「カイゼン」です。日本人の多くは「カイゼンは製造業でしか使われない」と思い込んでいますが、じつは世界の名だたる企業がカイゼンを取り入れて業務改革を行っているのです。

本書の主人公、中村一歩は、「営業成績がビリの班は関連会社に転籍」という脅しにビビリながら、偶然出会った老人にカイゼンの手ほどきを受けます。その老人はかつて自動車メーカーで「カイゼン番長」と呼ばれ、退職後はコンサルタントとして世界企業の経営指導をしている人物でした。

老人が最初に一歩に教えたのは「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5Sでした。そして「整理と整頓の違いは」と言われて、一歩は絶句します。それに対して老人はこう言います。
「いいか、まず整理というのは必要なモノとそうでないモノを区別して、必要でないモノを捨てることだ。そして、整頓というのは『整理して残った必要なモノ』を分かりやすく表示させていくことなんだ」

次に老人は、なぜ5Sのうちで整理整頓が最初にくるかを説明します。それは、整理整頓によって時間が生み出されるからでした。老人は一歩に「サラリーマンが1年間でモノを探している時間」を約150時間と説明します。1年間のうちで、1カ月がモノ探しに費やされているのでした。

そして老人は整理整頓にとりかかるきっかけとして、次のようなヒントをくれました。
「まずはモノを探している時間を意識してみなさい。何かを探してるな、と思ったら、その時間をゼロにするためにどうしたら良いかを考えてみるがよい。そうやって探している場所をひとつずつ減らしてみるのだ」

5Sの残り3つは清掃・清潔・しつけ。一歩は老人に言われた通り、朝早く出社して職場の掃除をし、身だしなみに気を配り始めます。最後のしつけは「ビジネスマナーを守ること」と「継続させる仕組みを作ること」。一歩はそれを実現するために、ビジネスマナーの本を読み、社内の掃除を習慣にします。ここまでが第1章です。

第2章の冒頭に出てくるのは「巧遅より拙速」という言葉です。「頭で考えているより、まず動け」という意味です。一歩は老人のアドバイスに従って、机の目立つ場所に「まず動け」と書いた紙を貼り、それが目に入るたびに積極的な行動を心がけます。

第3章で一歩は、「多能工」の重要性を教わります。その結果、残業時間が目に見えて少なくなり、職場の雰囲気も良くなりました。「でも、人によっては向いていない仕事もあるのでは」という一歩の質問に対して、老人は「そんなのは思い込みだ」と一蹴します。

以降、第4章では「動くな。働け」という言葉を教わり、人間としての知恵を加えて仕事をすることの大切さに気づかされます。そして第5章では「なぜ5回」。重大な問題が起きたとき、「なぜ」を少なくとも5回繰り返すことで問題解決に近づいていきます。第6章では有名な「視える化」を、最後の第7章では「非常識な目標」の重要さを学びます。

恋も事件もあるストーリーを楽しみながら、日本が世界に誇る「カイゼン」を学べる1冊です。


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