オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

今やる人になる40の習慣

林 修 著 宝島社 刊

1,260円 (税込)

本書はベストセラーになった『いつやるか? 今でしょ!』の1年後に刊行された続編です。前作が理論編であったとすると、本書は応用編または実践編といった位置づけになっていて、前作は1色刷りであったのに対して、本書は同じ価格で2色刷りになっています。ベストセラーの続編ということで、初版の刷り部数が増えたからでしょう。

著者は東進ハイスクールという予備校の先生で、現代文を教えています。東大法学部を出て日本長期信用銀行に入ったものの、「この銀行は潰れる」と予測して半年で辞め、予備校講師の道を選んだという変わり種です。驚異的な東大合格実績を示す同予備校にあって、東大受験生から業界随一といわれる圧倒的な支持を得ている先生で、「いつやるか? 今でしょ!」はそもそも東進ハイスクールのCMで使われたものが流行したのでした。

お読みになっていない方のために前作の目次を掲載しておきましょう。
第1章 今すぐやるべき基本の習慣
第2章 今すぐやめるべき無駄な行動
第3章 逆算の哲学
第4章 権威トレンドをとらえろ
第5章 自分の判断基準を一度リセット
第6章 流れをとらえる眼を備える

それに対して、本書は全3章で構成されています。第1章「すぐやるための習慣」は、「やろう」「変わろう」「歩きだそう」と思った人がすぐ行動に移せるようにしておくための準備について書かれています。少し小見出しを抜粋します。
・デスクを「戦闘態勢」に変えておく
・日曜午後からは「戦闘モード」に戻る
・企画は未完成のまま「すぐ」に周囲に投げかける
・取り返しはつかないと考える
・コミュニケーションの取り方を使い分ける

そして第2章「『今!』を決断するための習慣」には、このような内容があります。
・いつやるか? 今でしょ!
・仕事を選ばない。仕事が自分を選ぶと思っている
・夢や希望をどんどん語る
・飲み会での帰るタイミングをわかっている
・「自分はやれる!」という自信をもっている

最後の第3章「今やる人、できる人の習慣」には、こんなことが書かれています。
・嫉妬心をプラスに転換できる
・愚痴や不満の「内向き」活用法
・付き合ってはいけない人を認識している
・たまにはグリーン車に乗ってみよう
・見送り方をよくわかっている
・ピンホール効果を利用できる

ここで出てきた「ピンホール効果」というのは、著者独特の表現で、「見えない部分が突然見えた際に人の心に与える、きわめて強い影響」のことです。たとえばオシャレなスーツをビシッと決めているビジネスマンが、新幹線の席につくなり靴を脱ぎ、両足をこすり合わせたとしたら。そしてその靴下に穴が開いていたとしたら。それを見た瞬間に、その人に対する信頼が吹き飛んでしまうかもしれません。

その反対の例として、著者は昔の通人がよくやったという「服の裏地に凝る」という技を、「ピンホール効果のわかっている人」として持ち出しています。ふだんはありふれた格好に見えていたのに、ある瞬間に派手な裏地が見えて驚かされる。そういう凝り方をしている人は、ピンホール効果が人の心に及ぼす影響の大きさをよく理解しているのだということです。

著者はまた、「できる人はいつも自分を批判する自分を頭の中に住まわせている」と言います。「もう一人の自分」が常に自分のやることを批判的な眼で眺め、独りよがりになることを防いでいるわけです。これができる人は、想定外の事態に慌てたりはしません。いつも頭の中で意地悪な自分にシミュレーションさせられているからです。

「何事も好き嫌いで判断してしまう」というのは、凡人の陥りがちな罠ですが、それを避けるための方法もこの第3章に示されています。それは「頭の中に直行する座標軸を描き、すべてのことを4つのゾーンで分類する」という方法です。

まず縦軸に善悪をとります。上が善、下が悪です。次に左右に好き嫌いをとります。右が好き、左が嫌い。そして「好き・善」をAのゾーン、「嫌い・善」をBのゾーン、以下「嫌い・悪」をC、「好き・悪」をDとします。

著者はAとCについては問題なしと言っています。好きで善ならどんどん進めればいいし、嫌いで悪のことに手を出す人はまずいないからです。問題はBとDです。特に「善だが嫌い」というBについて、人の態度には大きな差が出ます。できる人は、それが善であれば自分の「嫌い」という気持ちを抑えて取り組むことができますが、凡人はつい「嫌い」という感情に引きずられてしまいます。

同様に「好きで悪」なことでは、できる人は自分の思いを断ち切ることができますが、凡人は「好き」に縛られて冷静な判断ができません。喫煙や深酒、深夜の高カロリー食など、いくらでも例が出てきそうです。

最後の40番目に紹介されている習慣は、「『人生のアイウエオ』を胸に抱いて生きる」というものです。「アイウエオ」とは、「人をアイして、ウンを逃さず、エンを尊び、オンを忘れず」というフレーズですが、「予備校の先生、人生を語る」という趣のある言葉だと思います。

興味のある方は、前作とまとめて「大人買い」されてはいかがでしょう。


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