オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

「それ」をやめれば、健康になる 大往生する人が、さっさと捨てている10の習慣

岡本 裕 著 PHP研究所 刊

1,365円 (税込)

慶應大学医学部講師の近藤誠さんによる『医者に殺されない47の心得』が100万部近いベストセラーになるなど、ここのところ日本の医療の歪みを告発する本が人気です。世界的に見てもかなり特殊な日本の医療事情に、ようやく日本人も気づき始めたのでしょうか。

しかし、医療関係者による日本の医療の告発ということでは、岡本裕さんが草分けです。岡本医師は阪大医学部出身で、同大学病院などで臨床医として活躍。悪性腫瘍の研究にも従事していましたが、日本の医療現場における医師活動に限界を感じて臨床医をリタイヤ。志を同じくする医師たちと本音で患者と向き合うバーチャル医療機関「e-クリニック」を立ち上げ、現在に至ります。

e-クリニックを訪れるのは、医者に「もう治療法がない」とさじを投げられた末期がんの患者や、治療方針を巡って主治医とケンカした人、辛すぎる副作用に「このままでは病院に殺される」と逃げてきた人などさまざまですが、岡本医師たちは患者さんたちの本音をしっかりと聞き取り、それに対してしがらみのない立場から本音のアドバイスをします。日本医学界の常識である西洋医学の枠にもこだわらず、最先端医療や東洋医学、民間療法までもとりいれています。そして最も患者さんに適した医師や病院を紹介し、患者さんを送り込んでいきます。といっても丸投げするのではなく、その後も医療機関と連絡をとりながら、ケアを続けてくれます。

その結果、誰もが知っている大病院の医師から「打つ手なし。余命3カ月」と宣告された末期がんの患者が全快し、10年経ってもピンピンしていたりします。岡本さんの本を読むと、そういう患者さんの例はいくらでもでてきます。岡本さんたちによれば、がんは治らない病気ではないということです。

「日本の医療は間違っている」という思いから、岡本さんは過去にたくさんの本を書いてきました。一番売れたのは、中経出版の『9割の病気は自分で治せる』ですが、そのほかにも『実はまちがっていた健康の常識』(だいわ文庫)、『薬をやめれば病気は治る』(幻冬舎新書)、『「死の宣告」からの生還』(講談社+α新書)、『9割の医者は、がんを誤解している!』(飛鳥新社)、『一生、薬がいらない体のつくり方』(知的生き方文庫)などは、そのごく一部です。

本書は、著者が老人ホームのお年寄りや「がんサバイバー」(重度のがんからの生還者)たちから聞き取った内容を吟味してまとめたものです。誰でも「健康で長生きしたい」と願っているはずですが、新たに健康にいいことを始めるのは大変です。しかし、元気で長生きしているお年寄りやがんサバイバーたちは、始めるのではなく、何かをやめることから健康生活をスタートしています。習慣にするのは大変でも、習慣をやめるだけなら意志の力でできます。

それらの項目のなかには、一般人が「健康にいい」と信じてきたものもあります。たとえば「走ること」や「牛乳を飲むこと」「医者のくれた薬を指示どおりのむこと」などは、医師でない人に言われたら信じられないのではないでしょうか。でもそれらの項目は、健康を第一に考えるなら、今すぐやめたほうがいい習慣なのだそうです。

「走ること」は健康にいい習慣の上位にランクされることですが、なぜそれが体に悪いのでしょうか。筆者は「副交感神経から交感神経への交代を急激におこなうので体にダメージがでる」「酸素不足ががんを招く」「走り終えた後は活性酸素が多量に発生して細胞を傷つける」「とくに人とタイムや順位を競うマラソンはよくない」と指摘しています。

「そもそも動物は必要に迫られたときしか走らない」と著者は言います。サバンナを颯爽と疾駆するチーターも、走り回っていることはなく、数十秒から長くても2分しか走らないといいます。少なくとも動物の世界には走ることを習慣にしているものはいません。

代わりに著者が勧めているのは、ウォーキングです。多くの人は走ることを歩きの延長、歩きより負荷の多い運動ととらえていますが、それはまったくの間違いで、走ることと歩くことは別のものだそうです。動物も人間も歩くことなら日常的にいつもやっています。いつもやっていることをするのが、体にいいのです。

牛乳を飲むのがなぜいけないかですが、著者は牛乳だけでなく、肉もとらないほうがいいと指摘します。なぜなら、動物性タンパク質は歴史的に見て「非常食」「代用食」だからです。人類はサルから進化してきましたが、肉を食べるサルはいません。もっぱら植物性の食べ物を食べてきたわけです。当然、体はそれに合わせて作られていますから、いろいろな不都合がでます。「がんが増えている」というのも、そのひとつです。

「肉を食べないと体が大きくならない」「肉を食べるとスタミナがつく」というのは完全な迷信です。牛や馬は草だけ食べてあんなに大きな体を作りますし、クジラだって大きいものはプランクトンしか食べません。たしかに肉を食べると元気になった気がしますが、それは錯覚です。肉の栄養素をいくら精密に分析しても、スタミナと関係する「肉でしかとれない」栄養素は見つかりません。

また牛乳ですが、アレルギーの人だけでなく、すべての人に害があると著者は言います。そもそも動物の乳は子どもを育てるためにその動物に最適化されているはずです。人間の赤ちゃんには母乳がいいし、牛の赤ちゃんには牛乳がいいわけです。では人間が牛乳を飲むとどうなるか。著者は「もしかすると牛乳がホルモンバランスを乱し、がん細胞を育てたり、アレルギーを誘発したりしているかもしれない」と懸念しています。

医者のくれる薬を指示どおりのむことについては、日本の医療の根幹に関わる問題です。当たり前のことですが、西洋薬はほぼ単一の化学物質で、効能がなければただの毒です。「毒をもって毒を制する」という言葉のとおりに、薬は「いまこの症状を抑えないと困る」という状況のときだけに、期間限定で他の薬と併用せずに服用するというのが正解です。血圧が危険なくらいに高すぎる、痛みが辛くて安静にしていられない、筋肉のけいれんが止まらない、そんな症状を抑えて時間稼ぎをしている間に、病気の原因を解消するというのが本来の医療です。

そして多くの人が間違っているのは、「薬が病気を治す」という誤った認識を信じていることです。これは患者に限らず、医者でもそうです。薬にできるのは特定の症状を抑えることだけで、病気を治すことはどんな薬にもできません。その証拠に、科学が進んだ今日でも、風邪の薬というものは存在しないのです。同様に、がんの特効薬も永久にできません。

ではなぜ病気が治るのかといえば、それは人間の体がもともと持っている自然治癒力が働くからです。自然治癒力とは、免疫や再生能力を総合して呼ぶものです。「寝てれば治る」というのは、寝ている間に自然治癒力が働くからですし、風邪で発熱するのは、免疫機構を効果的に機能させ、侵入してきた外敵を弱らせるために、自然治癒力が働いて体温を上げるからです。

薬を大量に服用したり、必要がなくなってものみ続けたりすることは、この自然治癒力にダメージを与えます。著者は「5種類以上の薬をだす医者は信用してはいけない」と明言しています。

参考までに、今すぐやめるべき10の習慣を列記しておきます。
(1)スポーツをやめる
(2)薬をのまない
(3)動物性タンパク質はとらない
(4)食べすぎない
(5)いい人にならない
(6)医者を過信しない
(7)エスカレーターに乗らない
(8)一人にならない
(9)働きすぎない
(10)夜更かしをしない

健康について、新たな気づきが得られる好著です。


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