オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

「孤独」が一流の男をつくる

川北義則 著 アスコム 刊

1,050円 (税込)

著者は元東京スポーツ新聞社文化部長。『男の品格』など100冊を超える著書があり、講演などでも活躍している人物です。本書は著者が以前に青萌堂から出版した『ひとりの品格』を大幅に加筆して再出版したものです。

本書の内容はずばりタイトルの通りで、なにかと群れて行動することの多い日本人に対して自立をうながす本です。自己啓発書などでさかんに言われる「自立」や「自律」を、本書では「孤独」「孤独力」と言い換えているところが新鮮です。

本書の冒頭で著者は「孤独」のメリットをいくつか例示しています。
「一人でぼんやりしているようなときに、悩んでいた仕事のヒントが生まれたり、新しい企画のアイデアが浮かんできたりする。」
「孤独は『自分を高め、自分の力を育んでくれる実り豊かな時間』なのだ。」
「男性よりも女性のほうが長生きなのは、一人暮らしの能力に長けているからではないだろうか。」

帯にはこんな項目が並んでいます。
・バーにひとりで行けない男は大成しない
・「人づきあいのいい人」をやめれば、人生を変えられる
・「孤独」と向き合えない人は幸せになれない
・一流は「孤独」を愛し、二流は「群れ」を愛す
・若者よ、「ひとり」を恐れるな
・「孤高」はいい、「孤立」だけはするな
・自然体でつきあえる友がいるか
・一流の男は「ひとり時間」をもっている
・あなたは、生きたいように生きているか
・幸せを追求する人は、まず孤独である
・組織に頼らず一人で生き抜く
・自分だけの「隠れ家」をもっているか
・「孤独」が人生後半を愉しくする

いつも誰かと一緒にいる人は、にぎやかで楽しく、社交的に見えるかもしれませんが、その実、中身が空っぽだったりします。自分を見つめる時間を持っていないために、自分自身が育たないからです。「孤独」であるということは、安直な時間の消費に背を向けて、自分と向き合う時間を持つということです。

かねてから日本人には「問題と向き合う勇気」が不足していると指摘されてきました。だからいろいろな組織が問題を棚上げ、先送りして致命的な事態を招くわけです。自分とさえ向き合えない人は、あらゆる問題の責任をとることができず、人の顔色ばかり見ています。著者が言いたいのは、そのことです。

たとえば著者は、「私たちはうつになっている暇なんてない」と主張します。これから深化していく「ひとり社会」では、強い精神力がなければ生き残っていくことはできません。上司から叱責されただけで欠勤してしまうような精神力では、時代の変化に対応することなど不可能です。精神力を鍛えるためにも、「孤独」の時間を持って自分と向き合うべきだというわけです。

とはいうものの、自分自身と向き合うのは簡単なことではありません。著者は「君自身が出会う最大の敵は君自身であろう」というニーチェの言葉を引用しています。だからこそ、「孤独」が人の器を大きくしてくれるのです。

現代社会では完全にひとりになれる場所がありません。家族がいれば、家の中でひとりになれるのは風呂場かトイレくらいでしょう。そこで著者は、「隠れ家を持て」とアドバイスします。隠れ家とは、どこかに借りた一軒家でもいいし、ワンルームのアパートでも、あるいは誰にも教えていない居酒屋でもいいのです。あらゆる人間的しがらみから解放され、リラックスして「素の自分」になれる場所が現代人には必要です。

仕事で「孤独」を貫くと、いわゆるサラリーマン的人生からの決別になります。組織に頼らず一人で生き抜く覚悟を持つと、組織の中にいても価値観や行動が変わってきます。辞表を出すことを恐れなければ、自分を曲げて仕事をする必要もありません。そして皮肉なことに、組織はそういう人間のほうを評価するものです。

実業家の世界では、「事業経営で一人前になるには、死ぬほどの大病をするか、刑務所に入るのが一番」と言われているそうです。つまり、徹底して孤独になることが経営者には必要ということです。なぜそうなのか。著者はこう言います。「なぜ孤独が人を成長させるのか。自分の内側を見つめて、じっくり考えることができるからだろう。人間は生きていると毎日の生活に追われてじっくり考えることがない。それではなかなか成長できないのだ」

手軽に「孤独」を手に入れる方法のひとつに、「一人旅」があります。昔から「可愛い子には旅をさせよ」と言う通り、知らない環境、知らない人との触れ合いが心を洗い、育みます。最近は一人旅のために企画されたツアーも多いので、そういうツアーに参加してみることを著者も勧めています。

ただし、著者は「孤立してはいけない」と言います。「孤独」と「孤立」は違うのだそうです。ではどんな人が孤立してしまうのでしょうか。著者の答えは、「人に与えることをせず、与えてもらう立場でいたがる人」です。

孤立しないコツのひとつに、「しゃべり力」があります。まわりが話を聞いてくれる人は、決して孤立などしないからです。本書では「しゃべり力」のコツとして「エーッと驚かせる、ヘェーと感心させる、なぜ?と好奇心をくすぐるという三要素を紹介しています。

そして著者はこう言います。「孤独を愛する人は品格を持たねばならない」と。一時期の流行語になった「品格」ですが、著者の定義は「その人からにじみ出てくるごまかしのきかない格調と気品」です。これを持つためには高い志や生きる目標を掲げて毎日を過ごす必要があります。

現代人は情報から離れることができません。電車の中を見回しても、多くの人がスマホやケータイの画面に釘付けになっています。孤独を愛する姿勢と真逆の姿がそこにあります。著者はそういう世の中を一喝します。「情報を断ち、持っているものを潔く捨て、人から離れてみる。そうすると必然的に一人の孤独を味わうことになるが、そこから今まで味わえなかった新しい人生の楽しみ方が見えてくる」

「孤独者はこの世で最も強い人間になる」というのはノルウェーの劇作家イプセンの言葉です。お釈迦様も一人で瞑想して悟りを開きました。孤独は間違いなく人を成長させるのです。

エッセイ的に読み流しても得るものが多い好著です。


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