オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

本日は、お日柄もよく

原田マハ 著 徳間文庫

680円 (税込)

本書は「お仕事小説」と呼ばれるジャンルの小説です。大ヒットドラマ「半沢直樹」もこのジャンルに属しますが、有川浩の「空飛ぶ広報室」、三浦しをんの「神去なあなあ日常」、百田尚樹の「夢を売る男」など、最近のヒット作の多くがこのジャンルから生まれています。

作者の原田マハは、元美術館勤務の学芸員。フリーのキュレーターとして活躍後、小説家としてデビュー。「カフーを待ちわびて」で第1回「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、「楽園のカンヴァス」で第25回山本周五郎賞を受賞しました。直木賞候補にも2回ノミネートされています。小説家の原田宗典はお兄さんです。

「小説じゃあ、仕事の役には立たないな」とお思いかもしれませんが、そんなことはありません。本書はスピーチライターという、言葉で人の心を動かす仕事を紹介していますが、読み進むにつれて「スピーチの極意」が頭に入ってくる仕掛けになっているのです。

主人公の「二ノ宮こと葉」は適齢期のOL。思いを寄せていた幼なじみの「厚志」の結婚式で主賓の退屈で長いスピーチについ居眠りをしてしまい、スープ皿に顔を突っ込むという大失態を演じてしまいます。そこで出会ったのが伝説のスピーチライター「久遠久美」。彼女の衝撃的なスピーチに涙を流した主人公は、弟子入りを決意します。

と、ご紹介しても、「でもしょせんは『お話』なんでしょう?」と本書の効能を疑う人には、アマゾンのレビューを読んでみることをオススメします。ちょっとご紹介しましょう。

「実は雑誌で連載している頃、最初の1章だけを読んだ時に、本当に涙が出てきて、単行本が出たら買うことを決めていました」

「これぞ言葉の力であり、物語の力。最初から泣かされっぱなしで、電車の中でポロポロと涙が止まらなくなって恥ずかしい思いも」

「最初の1章を読んで、泣いている自分にびっくりしました」

「後半には涙、涙で、電車で読んでなくて本当によかったです。最後はあ~~こんな終わり方か、意外と普通に終わるのね、と思っていたらまた泣かせる。最後まで、いや、解説までよかった!」

「感動した。電車の中で読んだら、涙が出そうになってヤバかった。言葉がいかに人を動かす力を持っているか、改めて痛感した」

「今年読んだ中で最も人に薦めたい本です。原田マハさんの安定感のある、軽妙な文章と、心から語りかけるスピーチの数々。いつの間にか涙が溢れてきました」

「『言葉』にも『温かさ』という温度がある事が本当に良く分かる。今までで一番多く泣いた本になっちゃったなぁ」

ちなみに、アマゾンでの評価は星4.5。辛口の評価が多いアマゾンにしては、非常な高得点です。

本書にケチをつけるとしたら、エピソードと現実との絡みです。主人公は政権交代を狙う政党のスピーチライターになるのですが、いかに素晴らしいスピーチを主人公が編み出しても、現実世界のヘタレ政党の顛末とダブってしまい、感動が損なわれてしまいます。これは作者の責任ではまったくないのですが、現実世界が小説に影響を与えるという珍しい例を見せてくれます。

最後に、本書の巻頭に掲げられている「スピーチの極意 十箇条」と、文中の言葉をひとつ紹介しておきます。
1.スピーチの目指すところを明確にすること
2.エピソード、具体例を盛り込んだ原稿を作り、全文暗記すること
3.力を抜き、心静かに平常心で臨むこと
4.タイムキーパーを立てること
5.トップバッターとして登場するのは極力避けること
6.聴衆が静かになるのを待って始めること
7.しっかりと前を向き、右左を向いて、会場全体を見渡しながら語りかけること
8.言葉はゆっくり、声は腹から出すこと
9.導入部は静かに、徐々に盛り上げ、感動的にしめくくること
10.最後まで、決して泣かないこと

「もうだめだと思ったとき、想像してみるといい。3時間後の君、涙がとまっている。24時間後の君、涙は乾いている。3日後の君、歩きだしている」

物語を楽しみながら、実務に役立つ知識が得られる良書です。


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