オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

賢人たちに学ぶ 自分を超える言葉

本田季伸 著 かんき出版 刊

1365円 (税込)

本を「購入するときは安くて扱いやすいペーパーバックがいいが、本棚に収めるときは装幀の美しいハードカバーがいい」
これは多くの読書家の偽らざる本心でしょう。現在の標準的な本の価格は、四六判(ビジネス書、実用書、文芸書などで最も普及しているサイズ。縦188mm×横127mm)のソフトカバーで1,200~1,500円、ハードカバーで1,600~2,400円くらいですから、片端からハードカバーで揃えるというのは、なかなか経済的に厳しいことになります。そもそも、ハードカバーとソフトカバーの両方の装幀で発売されている本は、人気作家の文芸書などを除くとほとんどありません。

ハードカバーというのは、まだ本が高価だったころ、貴重な本が傷まないように丈夫な表紙を付け、場合によっては箱に収めて保護したころの名残りです。昔は貴族が個人的に装幀家に注文をして製作していました。モロッコ革の表紙に金箔押しのタイトル、小口に「天金」と呼ばれる金箔貼りの加工がされた本は、ほとんど芸術品の域です。

こんな前置きでスタートしたのは、本書がハードカバーでは珍しい1,365円(税込)という低価格で売られているからです。ページ数は304もあり、しかもオール2色印刷。さらに本の小口は辞書のような「小口染め」で仕上げられ、驚いたことに本文の角は手作業による角丸仕上げがなされています。ここまで凝りまくった造本でこの価格を実現したことには、出版社の意欲を感じざるを得ません。

本書の内容は、古今東西の有名人が残した130の言葉を取り上げ、それぞれに簡潔な解説をつけたものです。よくある「名言集」の仲間といえますが、前述したような凝った造本と買いやすい価格、見開き単位で読みやすいレイアウトデザインが、類書と一線を画しています。

本書は「賢人たちに学ぶ」シリーズの3冊目にあたり、1冊目は『道をひらく言葉』、2冊目は『自分を磨く言葉』です。もともとこのコンテンツは著者がfacebookで発表していたもので、それが大好評となり、テーマ別に書籍化されました。コストを度外視したような凝った造本が書店員の目を惹き、あちこちの書店で目立つ場所に並べられています。

著者はIT起業家で起業家のコーチングやインターネットマーケティングのコンサルタントなどをしている人物です。子どものころから起業家になる夢を持ち、25歳で独立。携帯電話の画面上にクーポンやチケットを表示するアイデアで特許を取りました。2002年には業界で初めて携帯チケットの販売システムを実用化し、KDDIと共同で矢井田瞳のコンサートのチケットレス化を実現したりしています。

そんな著者ですが、決して右肩上がりの人生をスムーズに歩んできたわけではありません。会社の解散など逆境に立たされたこともありました。そんな人生の壁にぶつかったときに著者が取った行動は、とにかくたくさんの本を読むことでした。読んだ本の中で心に響く言葉があると、そのつど書き出します。そして、それを実践します。そうすることで壁を突破でき、ピンチをチャンスに変えることができました。その内容を、広くビジネスマンや起業を志している人の役に立てたいと考えてfacebookの投稿が生まれ、本書に続いていくわけです。

本書には130の偉人、賢人たちの言葉が収録されていますが、大きく10章に分類して整理されています。その章立ては次のようになっています。
第1章 不屈
第2章 突破
第3章 実行
第4章 向上
第5章 追求
第6章 貢献
第7章 使命
第8章 真理
第9章 発見
第10章 熱意

章立てとは別に、それぞれの名言には掲載順に通し番号が打たれています。1番はヘンリー・フォードで、130は松下幸之助です。ちなみに、フォードの言葉は「障害が恐ろしいものに見えるのは目標から目を離すからだ。一直線に目標だけを見なさい」で、松下幸之助の言葉は「何としても2階に上がりたい。どうしても2階に上がろう。この熱意がハシゴを思いつかせ、階段をつくり上げる。上がっても上がらなくてもと考えている人の頭からは、決してハシゴは生まれない」です。

それだけを取り上げると、どこかで読んだ有名人の言葉が繰り返されているのではないかと思うかもしれませんが、本書には数多くの有名人の言葉に混ざって、必ずしも一般に知られているとはいえない人の言葉や、だれの発した言葉か不明なものまでが取り上げられています。以下、ランダムに紹介します。

No.2 「限界なんて最初から存在しないのよ。あると思い込んでいるだけ」
歌手/レディー・ガガ

No.5 「失敗とは、再始動したり、新しいことを試したりするために与えられたチャンスだ。私はそう信じている」
ケンタッキーフライドチキン創業者/カーネル・サンダース

No.8 「上り坂、勢いに乗っているときはいい。窮地に立ったとき、人間の本当の価値が決まる」
第48代横綱/大鵬幸喜

No.41 「アイデアの良い人は世の中にたくさんいるが、良いと思ったアイデアを実行する勇気のある人は少ない」
ソニー共同創業者/盛田昭夫

No.120 「ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく穴である」
経歴不明/レオ・マックギブナ

手元に置いておいて損のない好著です。


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