まんがでわかる
7つの習慣
フランクリン・コヴィー・ジャパン 監修 宝島社 刊
1,000円 (税別)
自己啓発書に興味のある人なら、世界的ベストセラーである『7つの習慣』についてはご存じと思いますが、そうでない人のために少し解説しておきます。『7つの習慣(The 7 Habits of Highly Effective People)』はアメリカの経営コンサルタントであったスティーブン・R・コヴィーが1989年に出版した本で、英語のほか44カ国語に翻訳されて全世界で2000万部、日本だけでも130万部を売り上げたベストセラーです。
この本の中で紹介される7つの習慣とは、人生の扉を開き、私的に、公的に人生を成功させるための方法のことで、列挙すると次のようになります。
(1)主体性を発揮する
(2)目的を持って始める
(3)重要事項を優先する
(4)Win-Winを考える
(5)理解してから理解される
(6)相乗効果を発揮する
(7)再新再生
これまで『7つの習慣』には数多くの限定版や解説書、関連書籍が発刊されていますが、本書はその中でももっともわかりやすく『7つの習慣』のエッセンスがまとめられているという評価があります。
実用書のまんが化(コミカライズ)は、多くの場合、原本のことばを単に絵に置き換えただけのものが多いのですが、本書はコミックという表現手段の特徴をとてもよく理解し、ともすれば難解、または説教臭くなりがちな自己啓発書の内容を、初心者にもよく理解し、先が読みたくなるような構成にしています。まんがの描き手は小山鹿梨子さんという、第一線の少女まんが家さんです。
表紙の美しい女性が主人公で、フリーターの中田歩(なかた・あゆみ)。23歳のフリーターです。彼女の夢は、亡くなった父が地方の自宅でやっていたバーを再興すること。今は母が人を雇ってカフェとして営業しているのですが、それでは不満なのです。
それから上京して、昼間アルバイトしながらバーテンダーの修業をさせてくれるお店を探す生活が始まりました。しかし2年経ってもなかなか「これは!」と思うようなお店に出会えません。いい感じの店でも「うちは女性はいらないよ」と言われてしまったり。そんなある日、正木零司(まさき・れいじ)の経営するバー「セブン」に偶然入ることになりました。
「いらっしゃいませ」と歩を迎えた正装のマスターは、カウンターにコンソメスープのカップを出します。「あ、お父さんのお店と同じだ」と思った歩はサイドカーを注文しますが、その作り方も味も、懐かしいお父さんのサイドカーとまったく同じでした。
「マスター、私をこの店で雇ってください! お給料はいりません。掃除でも皿洗いでも何でもします。私、どうしてもバーテンダーになりたいんです!」とマスターに詰め寄る歩。びっくりしたマスターに「マスター、考えてみたら? この子、何か思うところがありそうだ」助け船を出したのは、カウンターにいた常連客の八神貴臣(やがみ・たかおみ)。近所でイタリアン・レストランを経営している青年実業家です。
こうして歩が見習いバーテンダーの修業を始めてから2週間たったころ、お店に無愛想な中年サラリーマンの客がやってきます。会社員の一条悟(いちじょう・さとし)です。この客は注文を横柄にするだけで、話しかけようとする歩の存在を認めようとしません。「ムカつく。嫌な客」と一条が帰った後で思わずつぶやいた歩でしたが、マスターは「そういうことは二度と僕の前では口にしないでくれ」と厳しくたしなめます。
マスターはこう言いました。「嫌な客なんて世の中にいない。だからもし君がそう思うのなら、君に問題がある」。叱られて戸惑う歩に、話を聞いていた八神が解説してくれます。「多くの人は自分の都合のいいように物事を見て、『いいこと』と『悪いこと』を判断している。そういう人はいつでも『できなかった理由』を人のせい、環境のせいにする。先ほどの君のようにね」
「うまく会話できなかったことは、自分のコミュニケーション力が低いせいなのに、そこには目をつむって、君は相手を責めたんだ。物の見方を変えて自分が変わらなければ、周囲の物も変わらない。こういう考え方を『インサイド・アウト』なんて言うそうだけどな。問題はいつも自分の中にあるんだよ」
「俺もイタリアンの店持っているからわかるよ。マナーの悪い客、態度の悪い客もたまにくる。だけどそこでスマートな対応ができれば、お店の格も、お客の評価も高くなるんだよね。君は本物になりたいんだろう? もっと自分が変わる覚悟を強く持つ必要があるかもしれないな」
「自分が変わる、か…」と深く考え込む歩でしたが数日後、またあの横柄な客が現れました。今度はワンパターンで話しかけたりせず、じっくりとお客さんの様子を観察してみます。見ていると、一条は席についても仕事のノートを出してチェックしたりしていて、なかなかリラックスした様子になりません。歩はこの前の接客が間違っていたことを痛感します。
やがて一条の仕事が一段落したらしく、ほっとした様子になりました。そこで初めて歩が話しかけます。「こんばんは。お忙しそうですね」「…ああ、仕事でうまくいかないことがあってね…」「もうひと段落したんですか?」「うーん、まあ、また明日早く会社に行かないといけないけど…」
そこで歩はとっておきの笑顔を向けて、こう言います。「ここではゆっくりしていってくださいね」。それに応えて一条は「この間は悪かったね。ちょっと仕事でイライラしていたものだから…」と謝罪の言葉を口にします。「いえ、それに気づけなかった私が未熟だったんです。でも、ありがとうございます」と返す歩。二人の間に暖かい空気が流れます。
彼女は心の中でこうつぶやきました。「そうか、自分が変われば人は変わるんだ。何を得るのかすべては自分次第なんだ。お父さん、私、素敵なバーテンダーになれるようにがんばります。見守ってね」
以上が巻頭の「プロローグ」の内容です。本書ではこのあと、「7つの習慣」に関することを1つずつ学んでいきます。まんがだけでなく、解説文やコラムもじっくり読むと必ず役に立つでしょう。「まんがだから」と侮ると損をする、気づきが満載の自己啓発書です。 |