オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

ソーシャルメディアを武器にするための10カ条

徳本昌大、高橋暁子 著 マイナビ新書

850円 (税別)

毎日インターネットを利用している人で、いまさら「ソーシャルメディアって何だ?」という人はいないでしょうが、「ソーシャルメディアをビジネスに活用する」という以前から繰り返し言われてきたことは、依然として空回りしているような気がします。

その証拠に、新しいソーシャルメディアが登場するたびに、「○○をビジネスで活用する方法」といったタイトルの書籍が書店店頭で幅をきかせ、「○○」はmixi、Facebook、Twitter、LINEと入れ替わってきました。

本書は前半を高橋暁子氏が、後半を徳本昌大氏が執筆しています。高橋氏は元小学校教員のITジャーナリストで、ソーシャルメディアに関する本を20冊ほど出している人物です。

徳本昌大氏は、コミュニケーションデザインのコンサルタントで、「ソーシャルおじさんズ」というソーシャルメディアに詳しいおじさんコミュニティの代表をしている人物です。広告代理店出身者で、ソーシャルメディア黎明期にすでに40歳を越えていたという年齢を逆に武器にしています。

2人の著者はともに、ソーシャルメディアによって才能を開花させ、今の立場を築いた人たちです。だからこそ、ソーシャルメディア利用のメリットを力強く訴え、自信を持って読者に勧めることができるわけです。

タイトルの「10カ条」は以下のようになっています。
第1条 専門家たれ
第2条 アウトプットで自分もまわりも巻き込む
第3条 手を挙げる準備をしておく
第4条 緩い絆のコミュニティを作る
第5条 ソーシャルで出会い、つながり、リアルで会う
第6条 即レス、即アクションを心がけよ
第7条 Give & Give 貢献こそがソーシャルメディア
第8条 仲間を見つけて協力し合う
第9条 伝える力と聞く力をソーシャルリアルで鍛えよ!
第10条 プラットフォーム(基盤)を作る

第1条の「専門家たれ」というのは、「今から腕を磨いて何かの専門家になれ」という意味ではありません。「人は誰しも何かの専門家である」というのが著者の考えで、ソーシャルメディアはそれを他人に発見してもらうためのツールだというのです。

大多数の人は、自分が持っている「専門性」に気づかずにいます。仕事をしている人は自分の属している「業界」の専門家ですし、学生は「学校」の専門家です。また、「ほかの人より少しだけ得意なこと」というのは、誰にでも1つは必ずあるものです。過去に手がけていたが、今は離れていることというのもあるかもしれません。

では、なぜ専門性が重要なのでしょうか。それは、専門性こそが自分の特徴であり、セールスポイントだからです。職場には必ず「○○なら××さん」と声をかけられる人がいますが、それはその人が自分の専門性についてブランディングできているからにほかなりません。

「でも自分には特殊な才能などないから」と尻込みする人に対して著者(高橋)はこう言います。「少しだけレアな専門性を複数持てばいいのだ。専門性を2つ合わせることで、該当者は一気に減る。2つの専門性が交わるところに行けば、あなたは希少価値のある人物になり、市場価値は一気に高まるというわけだ!」

著者は教員から出版、IT業界へと転身してきましたが、あるとき編集者からこう言われます。「高橋さんは元教員なんですよね。その経験はもっと活かせると思います。元教員でこの世界に入ってきた人なんてあまりいないですから」

それまで著者は、出版業界とIT業界で寂しい思いをしていました。まわりにいるのがすごい経歴の人ばかりだったからです。それが、この編集者の指摘でがらりと変わりました。そういうふうに、自分では気づいていなかった自分のメリットを、多くの他人と関わることで見つけてもらおうというのが第1条の趣旨です。ソーシャルメディアはそのために最適な舞台だというわけです。

第2条の「アウトプット」は、何となく意味がわかると思います。ソーシャルメディアは「発言してナンボ」の道具であり、黙って人の意見ばかりを読んでいては何も変わりないからです。

一般に、人が「向上したい。成長したい」と思うと、まずインプットに走りがちです。新しい分野に挑戦する時に、書店で参考書を求めるというような行動ですね。しかし、本当に成長したいなら、アウトプットをしなければなりません。

インプットで傷つくことはありませんが、アウトプットでは傷だらけになる可能性があります。だからみんな恐れて、アウトプットに尻込みするわけです。特にソーシャルメディアで少しでも「痛い目」を見た人は、その後のアウトプットには慎重になるものです。

でも著者(高橋)は力説します。「成功は、確実にアウトプットとつながっている。仕事も恋愛や結婚も、いくら座ってハウツー本を読んでも、行動が伴わなければ何も変わらない。それどころか、下手に満足してしまって動けなくなる分、質が悪い。本当に大切なのは思考ではなく行動だ」

著者はアウトプットのメディアとして、FacebookやTwitterよりブログがいいと言っています。友だち以外が読む可能性があるからです。そして、ブログを書いたことをソーシャルメディアで改めて告知するべきだといいます。さらにグーグルプラスを併用すると、高い効果が期待できるそうです。

第6条からは著者が交代して徳本氏になります。徳本氏の最初の主張は、「即レス、即アクション」です。理由は簡単で、現代のビジネスでは時間が最大のファクターだからです。そして氏は、「ソーシャルメディアを使えば、即レスは簡単なことだ」と言います。

氏は「チャンスの神様の前髪をつかむルール」として、次の6つを挙げています。
(1) 自分を棚卸しして気が合う仲間を見つけるべし
(2) いつでも勉強して準備をしておけ
(3) 情報を発信して、自分を見つけてもらえ
(4) 自分ではできなくとも、仲間を増やして、できる可能性を広げておけ
(5) 「はい」というポジティブな姿勢を示せ
(6) リアルタイムで反応し、即レスを心がけよ

第7条の「Give & Give」は、ソーシャルメディアを有効に役立たせるための基本ポリシーです。「情報を出してあげたんだから、代わりに何かよこせ」というのではなく、見返りを一切期待せずにどんどんばらまく。そのことで、気づかないうちに大きなメリットが得られるというのです。

たとえば、ソーシャルメディア特有の「シェア」。あれは情報発信者への応援だけでなく、自分の存在を他者に知らせることと、自分の仲間への情報リレーにもなるということで、昔の商人道でいうところの「三方良し」を実現する仕掛けなのです。「シェア」というものの意味を理解して使いこなしているかどうかで、その人のソーシャルメディア習熟度がわかるといいます。

ソーシャルメディアとの付き合い方を再発見させてくれる1冊です。


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