オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

お金が貯まるのはどっち!?

菅井敏之 著 アスコム

1300円 (税別)

アスコムは一度潰れた出版社です。アスキー系列の書籍出版部門が独立したのですが、その時に入れたファンドが一方的に資金を回収したために資金ショートを起こし、経営者が逃げてしまったのだと噂されました。その後、新たな出資者を見つけ、かつての幹部を中心に復活を遂げています。

一度痛い目を見ているだけに、アスコムの本作りは非常に特徴的です。全体的に粗製濫造の気味がある出版界にあって、発行点数を絞り、じっくりと作り込んで出してくる感じがします。また、他社にはないプロモーション部門を社内に抱えていて、専従の社員がテレビやラジオ、新聞への露出を働きかけています。

編集面では、とにかく読者にわかりやすいような本作りを優先していて、レイアウトに凝ったり、イラストを多用したり、本文にゴシック体の強調を入れたりしています。どちらかというと雑誌や参考書のような作りの実用書が多い印象です。

その結果、2013年に近藤誠著の『医者に殺されない47の心得』が100万部を突破し、2014年には槙孝子著、鬼木豊監修の『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』が同じく100万部を突破しました。2年続けてミリオンセラーを出すというのは、大手出版社でも珍しいことです。

本書も、すでに30万部を突破しているベストセラーです。写真の帯には「17万部突破!」とありますが、これは10月に購入した版だからで、最新の帯には「30万部突破」と書かれています。
http://www.ascom-inc.jp/books/detail/978-4-7762-0822-8.html

本書は、元銀行支店長が教える「お金を増やすノウハウ」です。これまでにもその手の本はありましたが、本書の特徴は25の質問に答えていくことで、読者のお金に対する感覚が次第に研ぎ澄まされていくような構成にあります。

「銀行の支店長だからって、お金儲けがうまいとは限らないじゃないか」という声が出そうですが、本書の著者はお金持ちです。48歳のときに銀行を退職し、起業してアパート経営に力を入れた結果、今では6棟75室のオーナーとして、年間7000万円の不動産収入があります。そして2012年には東京の田園調布に「SUGER COFFEE」をオープンし、人気のカフェに育て上げました。

著者の特徴は、銀行の支店長時代(三井住友銀行の金沢八景支店および中野支店)に培ったお金を貸す側のノウハウと、不動産投資家になってから身につけたお金を借りる側の経験を併せ持っているところにあります。なかなかこの両方を持つことはむずかしいのです。

そのために、「資産形成のための銀行の活用法」とか「お金の貯まる住宅、保険の選択方法」といった講演やセミナーが人気で、人気講師になりました。その実績を引っさげて初めての著書に挑んだのが本書というわけです。

では目次を見てみましょう。
Part1 お金が増える「銀行&保険」の活用法は、どっち?
【質問1】クレジットカードを持つなら2枚と4枚、どっち?
【質問2】天引きで貯金する人、余ったお金で貯金する人、貯まるのはどっち?
【質問3】メガバンクと信用金庫、口座を開くならどっち?
【質問4】普通預金と定期預金、どっちでお金を貯める?
【質問5】定期保険と終身保険、入るならどっち?
【質問6】保険は、若いうちに入るか、結婚してから入るか、どっち?
【質問7】保険会社とファイナンシャルプランナー、ライフプランを相談するならどっち?
【質問8】銀行系列のカードローン、キャッシュカードのリボ払い、得するのはどっち?

Part2 お金が貯まる「生活習慣」は、どっち?
【質問9】長財布と折たたみ財布、お金が貯まるのは、どっち?
【質問10】コンビニと銀行、お金を下ろすならどっち?
【質問11】コンビニで払うなら現金とクレジットカード、どっち?
【質問12】お金の話をする人、しない人、貯まるのはどっち?
【質問13】Suicaをチャージするなら1000円と1万円、どっち?
【質問14】タクシーに乗る人と乗らない人、お金が貯まるのはどっち?
【質問15】机がきれいな人と汚い人、お金持ちになるのは、どっち?
【質問16】セールで買う人、買わない人、得するのはどっち?
【質問17】2000万円の借金と500万円の借金、破綻しやすいのはどっち?
【質問18】ねばり強い人とすぐあきらめる人、破綻しやすいのはどっち?

Part3 お金が増える「住宅の選び方」は、どっち?
【質問19】自分のお金と他人のお金、どっちで資産を築く?
【質問20】持ち家派、賃貸派、得するのはどっち?
【質問21】家は、結婚前に買うか、結婚してから買うか、どっち?
【質問22】お客様は神様か、神様ではないか、さて、どっち?
【質問23】住宅ローンはボーナス払いと一律平均払い、得するのはどっち?
【質問24】「繰り上げ返済」をするか、「手持ちの現金」を貯めておくか、得するのはどっち?
【質問25】銀行に相談する人、自力で解決する人、資産が増えるのは、どっち?

これらの質問に「なんとなく」という理由で答えた人は、お金が貯まらない人だと著者は断言しています。著者の知る成功者は、すべてに明確な意思と理由付けを持って答えられるそうです。

たとえば【質問1】のクレジットカードですが、「多いほうがいいんじゃない?」と考えた人は、お金が貯まらない人だと著者は言います。クレジットカードのキャッシング枠はカードの合計で決まりますから、与信枠が100万円の人の場合、2枚持っていても4枚持っていても、キャッシング限度額の合計は同じ100万円になります。

「同じなら、多いほうがいいじゃないか」と思うかもしれませんが、カード会社から見ればカードをたくさん持っている人は与信枠が少なく、それだけ信用の低い人になります。信用が低ければ、いざお金を借りるときに断られたり、金額を削られたりしかねません。

たとえば住宅ローンを借りるとき、銀行は返済額を収入の35%に押さえようとするそうです。しかしその35%には、クレジットカードの分割払い、リボ払いなどの残債も含まれます。したがって、カードを何枚も持ってあちこちでリボ払いや分割払いをしている人は、住宅ローンの金額が抑えられてしまう可能性があるわけです。

【質問3】のメガバンクと信用金庫では、多くの人が「メガバンクのほうがカッコいい」と思うのではないでしょうか。しかし、著者の答えは「信用金庫」です。著者は「銀行はお金を借りるところであって、お金をおろすところではない」と何度も言っています。そして「メガバンクは大企業や公務員のための銀行」と断言しています。

その決定的な証拠が、著者自身が起業したときの体験です。著者は三井住友銀行の支店長だったわけですが、その彼ですら起業するときに古巣に口座を開こうとして、大変な苦労をさせられたそうです。ましてや、お金を借りるなどはとてもできない相談だったろうと。

庶民やスモールカンパニーの経営者が頼るべきは信用金庫で、そのために口座を開いて信用を積み重ねておくべきだと著者は結論づけています。寄らば大樹の陰でメガバンクに口座を作っても、何のメリットもないのだそうです。

お金が貯まる体質に自分を変えたければ、ぜひとも熟読すべき1冊です。


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