オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

死ぬまで家族に迷惑をかけないために
今すぐ知っておきたいボケない技術

米山公啓・著 かんき出版

1,300円 (税別)

著者の米山公啓氏は、1952年生まれの現役ドクター。作家と開業医の二足のわらじを履き続けていて、これまでに上梓(じょうし)した書籍は200タイトル近くにおよびます。専門は神経内科ですが、東京都あきる野市にある米山医院で患者を診るときは、診察よりも患者の悩み相談に時間を割くことが多いそうです。

まず本書の「はじめに」には、次のような文章が掲げられています。
「国家レベルで取り組まなければならないほど深刻な社会問題になってきた認知症。それもそのはずで、団塊の世代がみな75歳以上になる2025年には65歳の5人に1人、約700万人が認知症になる。軽度認知障害も含めると、“認知症1000万人時代”も時間の問題だと言われているのです」

認知症とは、脳の神経細胞が冒され、判断力などに障害が起こり、普通の社会生活ができなくなった状態のことを言います。そのため認知症になると誰かが患者さんを常に見守る必要が出てきます。徘徊や攻撃行動などの問題も出てくるため、家族や周囲の負担はとても大きくなります。

著者は認知症になった母親を10年近く介護した経験を持っています。脳梗塞の発作を繰り返し、認知症になってしまった母親の介護は、認知症の患者を熟知している著者にとっても簡単なものではありませんでした。コミュニケーションがうまくとれないために、戸惑い、困惑することが多かったからです。

さらに、自分の母親の脳が機能を次第に失っていくという状況は、著者を打ちのめしました。「言葉に尽くせないほどの辛い体験」だったと著者は書いています。今、年間に十数万人が親や家族の介護のために離職しているといいます。その多くは40代以降であるため、介護の手が必要なくなってからの再就職が非常にむずかしくなっています。つまり、認知症は家族や周囲の人の人生までも狂わせてしまう病気だということです。

そこで、1人でも認知症になる人を減らそうと、著者は本書を構想しました。近年の研究によって、認知症について多くの事実が判明してきており、それによると認知症はふだんの生活習慣を改めることなどで発症を防ぐことができると断言できるようになりました。本書は、最新の認知症研究の成果をふんだんに取り入れ、「自分でできる、自分で行う認知症の予防と対策」としてまとめられています。2色印刷の紙面は細かく編集の工夫がなされていて、飽きずに楽しんで取り組めるように工夫されています。

一般に認知症の原因には大きく分けて次の3つがあります。
1.脳が萎縮して起こる「アルツハイマー型認知症」。認知症の6割以上がこのタイプ
2.脳出血や脳梗塞で脳内の血管に障害が起こり、その周囲の神経細胞に酸素や栄養が届かなくなって発症する「血管性認知症」。認知症の2割近くがこのタイプ
3.大脳と脳幹の神経細胞の中に異常なたんぱく・レビー小体の塊ができ、神経細胞が壊れるために起こる「レビー小体型認知症」。認知症の2割弱がこのタイプ

そのほか、脳の前頭葉と側頭葉が萎縮する「前頭側頭型認知症」など、認知症の原因は70近くにおよぶといわれていますが、認知症の8割を占める「アルツハイマー型認知症」と「血管性認知症」は、とりわけ生活習慣との関わりが大きいといわれています。

どのように生活習慣を改めれば認知症にかかりにくくなるかというと、ふだんから食事や運動、睡眠に気を配り、ストレスを溜めないようにして周囲の人とよく交わり、よく笑い、趣味などを積極的に楽しんでイキイキと暮らすことです。そういう生き方を心がけるだけで、認知症のリスクが大きく下がるそうです。とくに大切なのは運動で、運動習慣が認知症予防に大きな効果を示すことが明らかになっています。

逆に避けなければいけない生活習慣は、高血圧、糖尿病、肥満です。生活習慣病と認知症の関わりは非常に大きく、「認知症は脳のメタボだ」という考え方が浸透してきています。

最近になって注目されているのはMCIと呼ばれる軽度認知障害です。この状態の人は認知機能にやや問題があるものの、日常生活には支障がなく、いわば認知症と正常の中間に位置するグレーゾーンという状態です。

MCIの人をそのまま放置しておくと、5年のうちに約半数が認知症へと進んでしまいます。しかしこの段階で適切な治療を行い、毎日の生活習慣を改めることで、最後まで認知症の症状を発症しなくてすむ人もたくさんいます。

それと同時に大切なのは、ほかの病気と同様に「早期発見・早期治療」です。アルツハイマー型認知症を引き起こすたんぱく質の一種「アミロイドβ」が脳に溜まっているかどうかを調べることにより、認知症は健康診断でチェックできるようになりつつあります。

そして認知症の進行を遅らせる薬も開発がスピードアップしていて、健康保険で使えるものも登場しています。1滴の血液でアミロイドβが検出でき、健康診断で認知症の予備軍をチェックできるようになる日もそう遠くないといわれています。

それでは、本書の目次を紹介しましょう。
はじめに
Chapter 1 ボケる・ボケないを決めるのはここ!
(1) 認知症は防げる! 症状を改善することもできる!
(2) 認知症は遺伝する、と心配する必要はない。
(3) ウエストが太くなると、脳は萎縮する。
(4) 血糖値とボケやすさは深く関連している。
(5) 血圧コントロールで認知症を寄せつけない。
(6) コレステロール値を下げる。
Chapter 2 認知症は生活習慣病だった
(7) ボケ防止にいいニート!?
(8) インナーマッスルを鍛えると脳が活性化する。
(9) 脳の若返りに効果を発揮するデュアルタスク。
(10) 適量のアルコールは認知症にプラス。
(11) タバコで認知症リスクが2倍に。
(12) 歯を失うと認知症リスクが倍になる。
Chapter 3 認知症を防ぐ食べ物・食べ方
(13) ココナツオイルで認知症の進行が止まった!
(14) 1日4杯のコーヒーがボケを防ぐ。
(15) 週2回は魚。特に青魚を食べるといい。
(16) 肉を食べるならジンギスカン。
(17) ご飯は認知症を遠ざける。
(18) 地中海料理を献立に採り入れる。
(19) 牛乳や乳製品を積極的に摂る。
(20) ほうれん草など葉もの野菜をしっかり食べる。
(21) 納豆は認知症予防のための完全食!
(22) 甘党はボケやすい。
(23) 週1カレーでボケを撃退する。
Chapter 4 脳を鍛える暮らし方
(24) パソコンをよく使う人はボケにくい!
(25) ネット検索は中高年の脳を成長させる。
(26) マージャンで脳年齢を若返らせる。
(27) 読書は脳をシャープに保つ。
(28) 上げ膳据え膳ではなく、料理当番制でボケ予防。
(29) 定年後は、買い物は夫の仕事にする。
Chapter 5 認知症を遠ざける生き方
(30) おしゃべりは認知症予防の特効薬。
(31) バイリンガルを目指すと認知症になりにくい
(32) ひとり老後はボケにつながる。
(33) 高学歴はボケにくい!?
(34) 睡眠不足はボケを招く。
(35) 嫉妬深い人はボケやすい。
(36) ストレスは脳を萎縮させる。
(37) テレビを見るなら「笑点」がおすすめ。
(38) 太極拳・気功で認知症を遅らせる。
(39) 40歳過ぎたら、認知症ドックを受診する。
(40) 生きがいを持って明るく生きる。

本書の裏表紙側の帯には、試験問題風のキャッチコピーが掲載されています。
「糖尿病になると、アルツハイマー型認知症のリスクが□倍になる!」
「血圧が正常である人と比べて、ステージⅠの高血圧症(140~159/90~99mmHG)は□~□倍、ステージⅡ(160~179/100mmHG以上)は□~□倍、認知症のリスクが高くなる!」

「答えは「2.1」「4.5」「6」「5.6「10.1」。身近に高齢者がいる人にもいない人も手許に置いておきたい、オススメの1冊です。


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