みなさんはもう「スターウォーズ エピソード7」をご覧になりましたか? 私は人混みが苦手なので、混雑が一段落するのを待っております。たぶん3月くらいまでは上映しているだろうと予想して。
「スターウォーズ」シリーズは、ジョージ・ルーカスが大ヒット映画「アメリカン・グラフィティ」の次に企画したSF大作映画です。彼は次回作として、古いアメリカ人なら誰でも知っているスペースオペラ「フラッシュ・ゴードン」のリメイクを計画しますが版権料が高すぎて断念。同じく敬愛する黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」のリメイクも頓挫し、両者のイメージを混ぜ込んだオリジナルストーリーを考えました。それが「スターウォーズ」シリーズです。
ジョージ・ルーカスはこの映画を9部作(後に6部作と訂正しますが、ディズニースタジオがルーカス・フィルムを買収して9部作構想に戻します)としましたが、公開されたのはエピソード4からで、以降5、6、1、2、3と続きました。これはエピソード4が最も活劇的要素が強く、シリーズの最初に大当たりを取って以降の製作を確実なものにしたいという興行的な考えと、エピソード1、2、3のストーリーは70年代から80年代の特撮、CG技術では荷が重いという考えからでした。
それらのアイデアがすべて功を奏し、またジョン・ウィリアムスの音楽が物語に花を添えて、「スターウォーズ」シリーズは大ヒット作品となりました。コアなファンも多数出現し、ダース・ベイダーや帝国軍兵士のコスプレは、SFイベントの定番となっています。
そんな大ヒット映画の世界から、私たちの実生活に役立つ考え方を学ぼうというのが本書です。カバーの袖にはこんなことが書いてあります。
『スターウォーズは悟りの教科書』を読むとこうなる! 7大メリット
(1)ジェダイの騎士になれる!
(2)フォースが使えるようになる!
(3)自分を裁かず楽で楽しい人生になる!
(4)家族の愛を知ることができる!
(5)恐怖や不安(暗黒面)に打ち勝てる!
(6)「スターウォーズ」を100倍楽しく観れる!
(7)今、あなたが英雄(ヒーロー)になる!
思わず「ホンマかいな?」とつぶやいてしまいそうな効能書きですが、著者は冒頭でそれぞれのメリットを簡単に説明しています。そして本文で詳しく解説するという流れです。なお、本文中の随所に、映画での名セリフが引用されています。映画を記憶している人なら、いっそう楽しく読むことができるでしょう。また、これから映画を観る人は、より深く作品世界に浸ることができそうです。
(1)ジェダイの騎士になれる!
「ジェダイの騎士」とは、シリーズ全体を通して登場する正義の味方です。「フォース(理力)」という目に見えない力を操り、暴力で迫る相手は光る剣である「ライトセイバー」で倒します。しかしジェダイの騎士の優れた特質は、それらの能力だけではありません。物事の奥底に潜む問題を見抜き、卓越したリーダーシップで正しい解決に導くことができる。だからこそ、銀河の調停者としての地位が約束されているわけです。著者は、本書を読むと次のような点で「ジェダイの騎士になれる」と言っています。
・人間関係の根本原理が理解できるため、すべてを冷静に観ることができるようになる
・自分が何者なのかを理解できるので、常に冷静かつ大胆な決断を選択できるようになる
・ありのままの自分を認め、とらわれがなくなり、自由に生きることができる
(2)フォースが使えるようになる!
「この世にある万物を司る力」と説明されている「フォース」ですが、これはペルー生まれのアメリカ人作家カルロス・カスタネダの影響を受けて考案されたものといわれています。UCLAに学び、インディアンの呪術師の下で修行したといわれるカルロスは、非西欧的な知恵を紹介し、スピリチュアル、ニューエイジといったカウンターカルチャーに影響を与えました。古くからのSFファンにとっては、ストーリーを面白くするための道具立てとしてすんなり受容できますが、70年代、80年代の精神世界ブームにうまく適合したものといえます。著者は本書を読むと次のような点で「フォースが使える」と言っています。
・「今ここ」に意識を集中することができるようになり、フォースが活性化する
・ものの見方を自分の意思で調整でき、フォースを見つけることができる
・自分の周波数を調整でき、周りにフォースを発することができる
(3)自分を裁かず楽で楽しい人生になる!
メンタル面での悩みを抱えている人の多くに、「自己否定」や「他者との比較」といった自分を裁いてしまう精神活動が見られます。「だから私はダメなんだ」「なんでいつもこうなんだろう」といったつぶやきも、自分を裁く行動のひとつです。しかし、それはこの世にたったひとつの自分を成長させることにつながりません。自分を裁くクセは、問題から目をそむけて逃げてしまうもとになります。著者は次のような点で「自分を裁かず楽で楽しい人生になる」と言っています。
・自分の中にあるメンタルブロックを発見でき、手放すことで自己否定がなくなる
・自分が完全な存在であると気づけるので、比較に囚われることがなくなる
・世界を観る力が高まり、家族、友人、社会の中の愛を見つけることができる
(4)家族の愛を知ることができる
「スターウォーズ」シリーズは、3代にわたる家族の物語でもあります。1人の少年がジェダイの騎士になってから暗黒面に落ちてダース・ベイダーとなり、その息子と娘が成長して対決する。そしてさらに次の世代の若者が暗黒の銀河に平和をもたらす。そういうストーリーです。著者は次のように言っています。
・思い込みの色眼鏡を外し、真実を冷静に見ることができるようになる
・心配と期待の共依存から抜け出し、信頼し合う相互依存の世界へ
・不器用な思いやりが空回りすることを、なくせる
(5)恐怖や不安(暗黒面)に打ち勝てる
「フォースには暗黒面がある」というのが、それまでのSF作品に登場する超能力と「スターウォーズ」シリーズの世界観が異なるところです。フォースを上手に操ることができるようになっても、修行が足りなければ暗黒面に落ちてしまい、幸せにはなれません。著者は次のように言っています。
・自分の中の嫌な部分と和解することができ、恐れる必要がなくなる
・自分の運命を受け入れる準備が整うので、内なる平安が訪れる
・自分の中のどこから、恐怖や不安がやってくるのか理解でき、対処できる
(6)「スターウォーズ」を100倍楽しく観られる
本書の自己啓発的な部分が好きになれないとしても、このメリットだけで充分に本書を読む価値があります。著者は次のように紹介しています。
・「スターウォーズ」に秘められた深遠なるテーマが手に取るようにわかり、眼力が養われる
・「スターウォーズ」のキャラクターの役割がわかるので、見方が変わる
・「スターウォーズ」のキャラクターに親近感が湧き、自分の人間関係に重ねることができる
(7)今、あなたが英雄(ヒーロー)になる
英雄(ヒーロー)とは、誰もが心の内に持っている「こんなふうになれたらいいな」という姿の具現化したものです。したがって、人間的成長とはヒーロー像に近づくことにほかなりません。著者はこんなふうに言っています。
・愛と心理を理解し、自分に秘められた可能性を知ることができる
・自分が完全であることに気づき、自分のための人生を生きることができる
・自分の運命を見つける方法がわかるので、迷いがなくなる
本書はジャンルとしては「自己啓発書」に属する本であると思われます。書店の棚を覗いたり、アマゾンなどのページを眺めたりしたことのある人はわかるでしょうが、日本の出版界において自己啓発書は常にホットな分野です。心に悩みを抱え、その解決を模索している人がそれだけ多いということの証明でしょう。本書の著者も、そんなひとりであったそうです。
巻末の著者紹介を読むと、トラブルで転職すること11回、心理学、自己啓発セミナー、成功哲学、引き寄せの法則など精神修養にかけた費用2千万円とあります。出版社のある編集者が「自己啓発書は儲かるんだよ。何度でも買ってくれるんだから」と言っていましたが、まさにその典型的なパターンが著者だったわけです。
その後、工務店経営が軌道に乗り、著者は黒字無借金経営とビジネス面での成功を収めます。しかし人間関係では相変わらず苦労が続き、躁と鬱がジェットコースターのように繰り返す人生でした。そんなとき、学生時代から大好きだった「スターウォーズ」シリーズに人生の真理が描かれていることに気づきます。
そして人生のバイブルとして映画を何度も観返し、その教えを実生活に活用することで、悟りの境地に至ります。その悟りとは「自分が求め続けた幸せは、社会的、金銭的成功の中にはない」という気づきでした。
その悟りを得て以来、嘘のようにさまざまな苦難が乗り越えられました。そこで著者は「スターウォーズ」で悟った教えを伝え、過去の自分と同じ苦しみにあえいでいる人々を解放することをライフワークとするようになりました。そのブログは下記です。
http://ted-m.jp
それでは最後に、本書の目次を紹介しておきましょう。
プロローグ スターウォーズは悟りの教科書
第1章 スターウォーズは家族の愛の物語
第2章 スターウォーズは悟りの視点の物語
第3章 スターウォーズが導く「本当の自分」への物語
エピローグ
鳴り物入りで公開されたエピソード7「スターウォーズ/フォースの覚醒」はレイトショー興行収入と公開初日興行収入の両方で「ハリー・ポッターと死の秘宝PART2」の記録を破り、最高記録を樹立しました。おそらくこれから、他の記録も次々と塗り替えられるでしょう。また、エピソード8は2017年、エピソード9は2019年の公開予定ですが、その前にスピンオフ作品(外伝)である「ローグ・ワン:ア・スター・ウォーズ・ストーリー」が今年末に公開される予定で、2018年にも別のスピンオフ作品が予定されています。
当分続きそうなスターウォーズ騒動、ブームを多角的に眺めるためにも、手にしておきたい1冊です。