オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

デザインのひきだし25

グラフィック社編集部・編 グラフィック社

2,000円 (税別)

タイトルからわかる通り、本書は「デザインのひきだし」というシリーズの25番目の書籍です。最初の本が出たのは2007年1月で、そのときの特集は「金銀ピカピカな印刷/紙加工テクニック」でした。

それ以降の特集ラインナップは、こんな感じです。
「オリジナルグッズを作ろう クラフト紙のA to Z」
「コストに優しいおもしろ印刷・アイデア加工」
「折り/抜き/紙の加工でこんなことできる!」
「凸凹な印刷・紙・加工テクニック」
「箔押し加工のA to Z」
「製本加工はここまでできる!」
「シール・ラベルはこんなことまでできるんだ!!」
「紙の魅力をもっと知る」
「凸版・活版印刷でいくのだ!」
「インキの魔術師」
「抜いたり貼ったり折ったり、紙の加工をもっと知る」
「少部数から使える、刷りも価格もステキな印刷」
「表面加工A to Z」
「自分で印刷・加工を発注しよう!」
「スクリーン印刷ですごい印刷」
「今まで見逃してた!印刷加工に使える、あんな紙こんな素材」
「圧倒的に目立つ印刷・紙・加工 蛍光・最高!」
「ピカピカきらきらする印刷・紙・加工テクニック」
「印刷ハック! 表紙が伝票!?」
「基本のきから応用のうまでオフセット印刷をきちんと知って、100%使いこなす!」
「今だからこそ知っておきたい『紙』」
「紙を綴じる=製本加工をもっと知る!」
「印刷大図鑑」
「紙の選び方、紙の使い方」
「現代・印刷美術大全」

本書がターゲットにしている読者層は、「印刷に関係するプロ」、とくにデザイナーの人たちであろうと思われます。本のサブタイトルにも「プロなら知っておきたいデザイン・印刷・紙・加工の実践情報誌」とあります。

しかしながら、門外漢が手に取っても充分おもしろい! それは、本書が「現物見本のオンパレード」だからです。ふつうの本は、「そこに書かれていること、印刷されているもの」に価値があるわけですが、本書はそれに加えて「本そのもの、紙それ自体」が価値を持っています。

たとえば表紙。今回は通常の表紙画像のほかに、私が事務所の床で撮ったへたくそな写真も掲載していますが、その理由はベタな表紙画像ではこの表紙のすごさがつたわらないから。表紙に消しゴムをはさんで浮かせた写真を撮りましたが、それでこの表紙が切り抜きだらけであることがわかると思います。

この表紙は大阪のTAISEI株式会社の協力で、限界に挑戦したレーザーカット加工がてんこ盛りになっています。現在の技術で紙に一番細かい加工ができるのがレーザーカット加工ですが、その最先端に挑んだだけでなく、抜いた紙を機械製本して本の流通に載せ、書店店頭に出したところがすごいと思います。

ちなみに、この表紙は初版限定。つまり、再版分からは普通の印刷の表紙になるということです。そして、本書にはいろいろな付録がついていますが、それらも初版限定です。どんな付録かを以下に列記してみます。
・特集連動加工サンプル 9枚
・ブラックライト印刷
・各種素材混抄紙「クラッシュ」
・新しい紙「エアラス」
・パウダーレスインキ「キレイナ」
・トレーディングカードゲーム「WIXOSS」のスペシャルカード

その昔、「冒険王」「ぼくら」といった月刊少年誌がありました。のちに発刊された「少年マガジン」「少年サンデー」などの週刊漫画誌に押されて消滅してしまいましたが、それらの雑誌には毎号たくさんの紙の付録がついていました。本書の付録はその記憶をかなり強烈に揺さぶってくれます。

本書の付録や記載内容を見て感じるのは、「へえ、今はこんな印刷ができるのか」「手作業でなくてこんな細かい加工ができるとは!」「この質感を生かした製品が作れないだろうか」といったことです。少なくとも、デザイナーや印刷関係者に独占させておくにはもったいない本といえます。

余談ですが、本書は雑誌ではありません。本書の随所に「本誌」という記載があるので、出版社では雑誌として売りたいのでしょうが、記載されているISBNコードは本書が書籍であることを示しています。もし雑誌なら雑誌コードが印刷されているはずですが、それもありません。

本当なら、この手の本は「ムックコード」で売りたいところです。ムックなら雑誌ルートで流せますから初版部数が大きくできますし、大手を振って「本誌」と名乗ることができます。しかしながら取次店が新規のムックコードの発行を渋っているため、本書の版元ではムックコードが取得できないのでしょう。

本書のサンプルや情報を印刷や紙の見本市で集めようとすると、1日は完全につぶれるでしょう。もしかすると1日では足りないかもしれません。それが2000円+税で手に入るのですから、超お買い得。さらに、すみからすみまで熟読することによって、ご自分のビジネスに役立つヒントも得られるはずです。

それでは、最後に目次を紹介しておきます。
第一特集 折る、抜く、削る、貼る、凸凹させる 保存版・紙の加工大全
インタビュー
紙の加工を使った“すごい作品”たち
切る加工 断裁、紙以外の断裁、ノコ刃カッター、平判への断裁加工
抜く加工 平打抜き機、「紙工技術×デザイン」の力でヒット商品を生み出し続ける「かみの工作所」の軌跡、ブッシュ抜き、ポンス抜き、レーザーカット、表紙はこうして作られた
削る加工 Vカット、ギザ削り、ノメリを出す、コバ付け/裏押し
折る加工 基本的な折り、機械でできる特殊折りの数々、くじゃく折り
貼る加工 合紙加工、粘着加工
その他の加工 エンボス加工、凸和紙/黒凸、ボーダード加工、ロウ引き加工、紙象嵌、点字、製袋加工、紙で作る3Dプリント

特別記事
トレーディングカードゲーム「WIXOSS」のすごい制作現場徹底紹介

連載・記事
もじ部
デザインを考えない
祖父江慎の実験だもの「RGBブラックライト印刷に挑戦!」
タイヨコナナメデザイン談義
編集部注目PICK UP「エアラス」
本作りの匠たち[箔押し加工/斉藤商会]
名工の肖像[和田和二(平河工業社)]
海外の現場から[イタリア・FAVINI社]
もじのひと
素材調査室[パウダーレスインキ・キレイナ]
アノニマスデザイン史
OPL
ひきだし通信
俺にagree

目次の最後には、こんな囲みの記載がありました。
本文用紙にもこだわっています!
P.001~096 OKピクシード 四六判T目 94.5kg
P.097~112/127~158 OKブライトラフ 四六判T目 100.5kg
P.113~126 エアラス 菊判Y目 55.5kg
用紙協力:王子製紙株式会社/特種東海製紙株式会社

さらに表4の最後には次の記載が。
●本文の印刷と製本に関する取り合わせ
図書印刷
東京都北区東十条3-10-36
TEL.03-5843-9700
http://www.tosho.co.jp/

いわゆる活字だけの本とはまったく趣が異なりますが、見て、さわって、読んで楽しめる、脳への刺激満点な本です。


Copyright (C) 2004-2006 OCHANOKO-NET All Rights Reserved.