どんな本かは、帯のコピーを読めばわかると思います。
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人の道をはずれ、どん底まで落ちた
元ヤクザの熱血牧師が
「下」から語る愛と希望の人生論。
元気が欲しい人必読!
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もう少し詳しく、著者のプロフィールを記しましょう。
進藤龍也牧師は、1970年埼玉県蕨市生まれ。かつては札付きのワルで、高校をケンカで中退し、18歳でヤクザにスカウトされて広域指定暴力団S会系の組員となりました。28歳で同じ系列の一家に移籍し、組長代行に。しかし覚醒剤のやりすぎで破門状態に。3回目の服役の際に、ある女性から差し入れられた聖書を読み、回心(キリスト教に帰依する場合、「改心」ではなく「回心」と書きます)。出所後、正式にヤクザから足を洗い、シロアムキリスト教会で洗礼を受けました。2005年、神学校2年生のときに開拓伝道を開始。現在は「罪人の友」主イエス・キリスト教会の主任牧師として活躍し、とくに文通、面会を通して日本各地の受刑者への福音伝道に務めています。また出所しても行き場のない元受刑者たちを教会へ受け入れ、社会復帰までのサポートもしています。
生身の著者は、人なつっこい目をしたナイスガイです。しかし、よく見ると左手の小指が欠けていたり、真夏でも半袖シャツが着られなかったり(刺青をしているため)します。その姿は、明らかに元ヤクザです。それだけで、ドン引きしてしまう人も多いことでしょう。
著者は自身のプロフィールにこんな風に書いています。
私にあるもの…前科、刺青、薬物歴
私にないもの…学歴、職歴、左手の小指
組から破門された3度目の服役中、著者は差し入れられた聖書の中のある一文に目をとめました。
「わたしは悪人が死ぬのを喜ばない。むしろ、悪人がその道から立ち帰って生きることを喜ぶ」
この瞬間、著者の人生で初めて「スイッチ」が入りました。
こんな誰からも相手にされない自分にも、神様は語りかけてくれるのか。
それなら、出所したらやり直せる。
何の保証もありませんでしたが、著者はそう確信したのです。
そして塀の中で聖書を熟読し、出所後は正式にヤクザから足を洗い、洗礼を受けました。
そして母親の経営していたスナックを利用して、そこで礼拝を行うようになったのです。
少年鑑別所や刑務所に行った元ヤクザの言葉は、心の荒れた人々の胸に響きました。
「自分のスイッチは自分でしか入れることはできない。スイッチを入れたら自分が変わり、自分が変われば周りが変わる。人は変えられないが、自分は変えられる」
笑い話を交えながら熱く語る著者の周りには、いつも賛同者が群れをなしています。
著者は人生では「ビジョン」が大切であると説きます。
ビジョンとは、将来叶うことを今掲げたものであるといいます。
キリスト教的には「神とともに見る夢」であるそうです。
人はビジョンを掲げて生きなければならない。そのビジョンに人がついてくるのだと著者はいいます。
そんな著者のビジョンは、「刑務所伝道」です。
刑務所に出かけて行き、受刑者たちに語りかけ、彼らの更正を手伝うのです。
出所後、寝るところがない受刑者は教会に泊めてやり、着るものがない人には服を貸します。交通費がない人には貸してやり、社会復帰できる日までサポートを欠かしません。
なぜそうするのかという問いに、著者はこう答えます。
「刑務所の中には教育がありません。出所後も社会の引き受け手がほとんどいません。だから彼らは仕方なく、再び罪を犯して刑務所に帰っていくのです。東京の府中刑務所には3000人を超える受刑者がいますが、彼らの平均服役回数は6.5回です」
別のデータでは、初めて刑務所に入った100人のうち、10年後に65人が、20年後に75人が刑務所に舞い戻るのだそうです。そんな受刑者が日本全国で5万人以上もいますが、彼ら1人に年間かかる経費は250万円を超えています。それはすべて税金です。
著者のミッションは、日本の受刑者を少なくすることです。刑務所を出た人間が再び刑務所に戻らなくなれば、本人の更正はもちろんのこと、社会のプラスになります。そして税金が節約できます。
受刑者に寄り添う生き方は、与えるばかりの人生に見えます。それについて著者はこう言います。
「与える人生には人がついてきます。私にはいろいろな人たちが寄付をしてくれたり、協力をしてくれたりしていますが、そういう人たちに私はニュースレターを発行しています。ありがたいことに、その発行数はどんどん増えていくのです」
本書のほかに、著者は4冊の本を出しています。
『極道牧師の辻説法』学研
『未来はだれでも変えられる』学研
『人はかならずやり直せる』中経出版
『立ち上がる力』いのちのことば社
絶版になっているものもありますが、すべて電子書籍化されているので、読むことは可能です。
それでは、本書の目次を紹介しましょう。
・推薦のことば
・出所十年を迎えて
・第1章 悪人が立ち直ることを喜ぶ神
・第2章 厳しくもまっすぐな道
・第3章 四度目の結婚
・第4章 裏切られることも想定内
・第5章 生活を一新した二人
・第6章 立ち直りに必要なこと
・妻から見た伝道者・進藤龍也--あとがきに代えて
各章のはじめには、著者自身の短い言葉が添えられています。
赦してもらえない罪を
赦してもらって歩む。
それが前科者の生き方です。
返せるものは何もない。
だから生き方で
返していくしかないんです。
子ども時代は準備運動。
本気で生きてる大人から学べ!
つまらん大人になるな!
つらい経験をすれば、
いつかだれかを助けることができるようになるから!
助けられることは恥じゃない。
助けられて愛を蓄えろ。
そして力を蓄えたら助ける番になるのだ!
清く、正しく、美しくないからこそ、
クリスチャンはキリストが必要な人間なんです!
赦せない人たちのことを赦していくときに、
神様は奇跡を起こしてくださる。
赦せない人がいるのならば、その気持ちを神様に伝えるとよい。
神様はかならず答えてくださる。
赦せないからこそ神様が必要なのであり、
どうしようもない自分だからこそ、神様が必要なのである。
そこから離れては、人は何もできないのである。
キリストはぶどうの木、私は枝。
自立できても、信仰が植わらなかったら不十分。
信仰を植えることができても、自立できなかったら不十分。
信仰者であっても、神に仕えることができても、
人に仕えることができなかったら不十分。
人に仕えることができても、
神に仕えることができなかったら不十分。
負けることは、恥じゃない!
できないことも、恥じゃない!
挫折することも、恥じゃない!
立ち上がろうとしないことが恥なのだ!
一歩踏み出せ!
心が弱ったときに読めば、必ず元気になれる1冊です。