オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

「つまらない」がなくなる本

鶴田豊和・著 フォレスト出版

1,400円 (税別)

まったくの余談なのですが、私(山崎)が都心に事務所を構えていたころ、よく間違い電話がかかってきました。「書店ですが、注文お願いします」という内容です。当時の私の会社は、本や雑誌は作っていましたが、出版社の下請けとして制作していたため、書店から直接注文を受けることはありません。

そこで、「どちらにおかけですか?」と尋ねると、「え、フォレスト出版さんではありませんか?」と言われます。そのころ、フォレスト出版はかずかずの自己啓発本をヒットさせていたので、1日に何度もそういうやりとりがありました。

調べてみたところ、私の会社の電話番号が5226-5750であるのに対して、フォレスト出版は5229-5750。プッシュホンでは6と9は縦に並んでいますから、お客さんに頼まれて急いで番号を押していて間違えるのでしょう。

そのうちこちらも慣れてしまい、「私どもは番号がよく似た出版制作会社です。フォレスト出版さんは5229-5750ですよ」とすらすらとご案内するようになりました。おもしろいのは間違い電話の数に波があることで、毎日何度もかかってくるときは、「今は何がヒットしているのだろう」と大手書店のランキングデータを見るクセがつきました。

そんな馴染みの出版社が出した中くらいのヒット本が本書です。著者は気鋭の行動心理コンサルタントとして知られる鶴田豊和氏。マイクロソフトの人事担当者だったころは数千名の面接経験を持ち、社内トップ3%の成績を上げて表彰も受けています。独立後はコンサルタント兼スピーカーとして活躍するほか、世界一の情熱発見ツールといわれる「パッションテスト」を日本で最初に導入。これまでに1万人以上の人をサポートして天職や夢の実現に導いています。
http://www.tsurutatoyokazu.com

本書を書店で手に取った第一印象は、「あれ? 帯がない」でした。写真でも、帯がないように見えますよね。でも、帯はちゃんとあるのです。カバーと同じ色、紙質で。ではなぜそんなことをしたのか。答えは帯を外すとわかります。帯のないカバーは、表紙デザインの左下4分の1にあるリード文やキャプション、「15万人が大絶賛!」というキャッチがありません。つまり、もっと売れたらその部分を変えた帯に掛け替えるつもりなのです。

それでは、本書の内容に入っていきましょう。
ノンブル(出版用語でページ番号のこと)1がふられている「はじめに」に、太字で3つの箇条書きが示されています。なぜいきなりまとめがあるのかについて、著者はこう書いています。

「多くの人は、本を手にとっても最初の1ページしか読まないそうです。せっかくのご縁ですから、そのような人でも、なんらかの気づきが得られるように、この本の最重要ポイント3つを最初にお伝えします」

その3つとは、
(1)「自分は忙しくて退屈とは無縁だ」と思っている人ほど、「つまらない」人生を送っている
(2)「つまらない」は大切なことを教えてくれる、ありがたいものである
(3)「人生がつまらない」ときに、人生の意味を探そうとすると、逆効果である
です。

そして著者はこう続けます。
「この3つを十分に理解している人は、ここから先を読む必要はありません」

著者が自信たっぷりに「読者のほとんどが『つまらない』を理解していない」と判断している根拠は、私たちが家庭や学校や職場できちんと「つまらない」との付き合い方を教わってこなかったことにあります。そのために多くの人が見当外れの退屈解消法を行うことになり、その結果、かえって人生をつまらなくしているというわけです。

著者は「世界中の多くの人が『つまらない』という悩みを抱えている」と断言します。なぜそう言えるのかというと、今儲かっているビジネスの多くが退屈解消ビジネスだからです。スマホ、アプリ、映画、テレビ、ゲーム、雑誌などのエンターテイメント全般を含め、人の欲望をかき立てる刺激すべてが、退屈を解消するために存在します。

では、目次に沿って本書の内容を見ていきましょう。
第1章「つまらない」の正体
私たちがごく簡単に口にする「つまらない」とはいったい何なのか。「つまらない」にはどんな種類や特徴があるかを解説する章です。私たちはどんなときに「つまらない」と思うのか。私たちは「つまらない」から逃れるために、何を失っているのか。そして、間違いだらけであった、これまでの「つまらない」解消法についても言及します。

第2章 なぜ「つまらない」と思ってしまうのか?
ここでは「つまらない」と思ってしまう原因やメカニズムを分析し、「つまらない」に対する誤解を明らかにします。そして、「つまらない」があなたに伝えたがっているメッセージを読み解きます。「つまらない」に対する誤った対処法が生む悪循環や「活動中毒」、あまり知られていなかった「何もしないこと」のメリットなども紹介します。

第3章 「つまらない」にうまく対応するために
ここではワークを交えながら、「つまらない」とうまくつき合うために知っておくべきポイントを列挙します。そのためには、「一時的な退屈」と「慢性的な退屈」の2種類の「つまらない」を分けて考えなければなりません。ここで導入されるワークは、「意味を見出す」と「楽しむ工夫を見つける」の2つです。

第4章 「つまらない」がなくなる生き方
具体的な10のポイントを挙げながら、本来の自分を生きて「つまらない」と感じなくなる方法を探ります。10のポイントは以下です。
(1)理由なく自分を満たしている
(2)他者に対して無条件の愛と感謝を感じている
(3)自分にとって大切なことを大事にしている
(4)心身ともに健康でエネルギーに満ちている
(5)自然体でリラックスして、軽やかに生きている
(6)過去や未来にとらわれず、今この瞬間を味わい、楽しんでいる
(7)好きなもの、愛する人に囲まれて生活している
(8)才能を十分に生かしている
(9)波に乗って、次々とやりたいことを実現している
(10)無難よりも、チャレンジを選択する

第5章 「毎日がつまらない」を手放す12の秘訣
ここでは5つのワークを交えて、本来の自分を生きるための手がかりをつかみ取ります。
・「無我夢中」体験を思い出す
・子どものころを思い出す
・人を好きになったことを思い出す
・「興味はあるけど、怖いこと」を洗い出す
・「つまらない」に向き合う

第6章 ケース別「つまらない」Q&A集
5つのケースを示し、「つまらない」の具体的な解消法を提示します。
・仕事がつまらない
・結婚生活がつまらない
・勉強がつまらない
・自分の話がつまらない
・自分がつまらない人間である

「おわりに」で著者はなぜこの本を書こうと思ったのかについて自分の過去を明らかにしています。著者は独立後、努力の末にほとんど働かなくても高収入が得られる仕組みを作ることに成功しました。しかし、誰もがうらやむ境遇を得たのに、毎日が苦しくて苦しくて仕方がなかったそうです。確実に儲かる週4時間の仕事が、苦痛だったということです。

そのころ著者は「お金と自由を手に入れれば、人生の成功者になれる」と信じていました。でもそれは不幸への特急券でしかありませんでした。なぜなら、他人が描いた成功の方程式にむりやり自分を当てはめていたからです。自分は不幸であるということを素直に認めた著者は、やがて「本来の自分を生きる」という生き方を会得します。

その結果、暇な時間は少なくなりましたが、好きな仕事をしながら家族と穏やかで楽しい日々を過ごせるようになりました。その成果を手にすることができたのは、自分の「つまらない」と正直に向き合ったからでした。それが本書を執筆しようと決意した動機だそうです。

実際に「つまらない」を抱えている人はもちろん、「幸せって何だろう」と思っている人にもおすすめできる、入門的な自己啓発書です。


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