オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

 

朝30分早く起きるだけで 仕事も人生もうまく回りだす

菊原智明・著 青春出版社・刊

1400円 (税別)

白い本が多い最近のビジネス書ですが、本書は黄色ベタのバックにメインの文字は黒、アクセントに金赤(黄色100%×マゼンタ100%)の出版業界では「鉄板」の目立つデザインとなっています。絵柄の要素はお日さまマークのみ。

版元は青春出版社。1955年創業の中堅出版社です。1980年代には男性誌『BIG tomorrow』、女性誌『SAY』が大ヒットして雑誌社のイメージがありましたが、両誌ともに20世紀に入って休刊。元の実用書中心の出版社に戻りました。編集部門を独立させて別会社としているところがユニークです。

社名よりもヒット作のほうが有名で、ざっと並べてみると『誰のために愛するか』曾野綾子、『試験にでる英単語』森一郎、『算命占星学入門』『天中殺入門』和泉宗章、『頭のいい税金の本』野末陳平、『こんなにヤセていいかしら』川津祐介などがあります。

本書の概要は、カバー袖に表記された著者紹介を見るとだいたいわかります。
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営業コンサルタント・関東学園大学経済学部講師。95年に大学卒業後、トヨタホームに入社。7年間、クビ寸前の売れない営業マン時代を過ごすも、お客様へのアプローチを変え、夜型体質を1日1分ずつの早起きで朝型に変えた結果、4年連続トップ営業マンに躍進。2004年には全国No.1営業マンの座も獲得する。
06年に独立し、営業サポート・コンサルティング株式会社を設立。現在では朝4時起き生活を1年365日続けながら、営業マンに向けての研修、コンサルティング活動等を行い、これまでに3000人を超える営業マンの育成に携わってきている。10年からは、日本で初めて大学生に向けた実践的な“営業の授業”も担当。
(中略)
主な著書に『超一流の営業マンが見えないところで続けている50の習慣』『仕事で差がつく根回し力』(青春出版社)、『訪問しなくても売れる「営業レター」の教科書』(日本経済新聞出版社)、『「稼げる営業マン」と「ダメ営業マン」の習慣』『トップ営業マンが使っている買わせる営業心理術』(明日香出版社)、『営業1年目の教科書』(大和書房)などベストセラー、海外での翻訳版多数。
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反対側のカバー袖にはこんなコピーが書かれています。
いまこそ
“忙しいだけの自分”から
抜けだそう!!
ただ早く起きるだけじゃない。
効率が昼&夜の5倍になり、8割の仕事が午前で片づく、
人生が一変する「朝のワクワク時間術」を初公開!

ではいつもと趣向を変えて、目次の紹介から始めましょう。
・はじめに――忙しい! 結果が出ない! 自分の時間がない!…は“朝30分”でスッキリ解決する!!
・第1章 朝30分の使い方で、すべてが手に入る!
・第2章 まず「1日1分ずつ」早く起きることから始めよう
・第3章 朝を有効に使いきるコツは、この体のメカニズムを知ること
・第4章 朝の黄金時間がより効率的に使える、便利ツール利用法
・第5章 結果を出し続けている人は「前の夜」の使い方がうまい!
・第6章 仕事も人生も120%の満足! ひとつ上の「朝の使い方」
・おわりに

「はじめに」で著者は本書の内容を3行にまとめています。
・朝を有効に活用する(朝活)と、どんな成果が得られるのか
・具体的にどうやったら無理なく早起きできるようになるのか
・どんな素晴らしい可能性が広がるのか

最近、睡眠の専門家などが「無理に朝型に変えようとすること」に対する警鐘を鳴らしています。人間には体内時計があるので、これに逆らった生活をすると肉体のリズムが崩れ、かえってデメリットとなるというものです。確かに、海外旅行などで経験する「時差ぼけ」は精神と肉体に不調をもたらします。体内時計のリズムに逆らった生活は逆効果というわけです。

その点、本書が提唱している「1日1分ずつの早起き」は、非常に理にかなっています。ゆっくりと体内時計を朝型にシフトしていくことで、体に無理をかけずに朝型生活が送れるようになるのですから。

現在「働き方改革」で夜型の仕事がしづらくなっています。夜遅くまでの残業が厳しく制限され、まだやらなければならない仕事が残っているのに、会社から追い出されてしまうサラリーマンが増加しているのです。だからといって家で仕事の続きをやろうとすると家族から嫌がられ、仕方がないのでファミレスでノートパソコンを開くことに。気づくと周りに同じような境遇の人がちらほら…。

「働き方改革」でかえって仕事がやりづらくなるのでは本末転倒です。「改革」なのだから、自分自身の仕事のやり方も改革しなければならない。それが著者のいう朝型へのシフトだというわけです。

著者は30歳まで典型的な「夜型のダメ社員」でした。中学生時代にハマったゲームのおかげで夜型人間になり、大学時代の深夜バイトでさらに拍車をかけ、社会人になってからも夜2時前に寝ることがありませんでした。

そのおかげで午前中はぼーっとして過ごし、仕事はどんどん先送り。当然、夜遅くまで残業しても片づかず、ミスが多くなります。営業成績もぱっとせず、入社してから7年間、社内でビリの営業マンでした。

そんな著者は30歳を機に、仕事のやり方を変えました。訪問営業をやめ、手紙営業に切り替えたのです。その結果、営業成績は右肩上がりになりましたが、思わぬ副作用がありました。それは、営業成績の上昇に伴って増えてしまう事務作業です。「ノルマを達成して定時に帰る」ことを夢みていた著者は、現実が甘くないことを悟りました。

そこで「朝活」に挑戦し始めたのですが、最初はうまくいきませんでした。いきなり早起きしようとしても眠くて体がいうことをききません。ただ早く起きただけで、ぼーっとして何もせずに時間を過ごすだけでした。

短期に変化を求めてもだめだと知った著者は、長期戦を覚悟しました。目覚まし時計を1日に1分ずつ早めていくことにしたのです。これならつらくありません。そして、1カ月後には無理のない30分の早起きができるようになりました。

その30分を著者は次のことにあてました。
・仕事の予定を立てる
・ブログを書く
・本を読む

たいした改革ではありませんでしたが、実際には大きな効果がありました。「朝ちょっと早く起きて何かをする」ということの気持ち良さは、ドタバタと慌ただしく出勤していた過去の自分とは気持ちの余裕が違います。

それで気分良く出社すると、午前中から仕事がはかどるようになります。仕事を前倒しできるようになり、帰宅時間が早まります。こうして朝30分の早起きを始めて半年後、著者は「定時に帰るトップ営業マン」になることができました。成績はかつての4倍となり、歩合給制度があったので、この時点で著者の年収は3倍になりました。

4年間トップ営業マンを続けた著者は、会社から独立して営業コンサルタントになりました。1年前に生まれた娘が起きる前に仕事をしようと、さらに朝活を拡大し、毎日午前4時に起きることに。朝活の良さが身に染みていたので、並外れた早起きも苦になりませんでした。

朝4時は冬場だと真っ暗です。でも、世間の早起きが6時だとすると、人より2時間多い自由時間があることになります。その時間にせっせと書いたブログが出版社の目に留まり、本を出すことになりました。その本が契機となっていろいろな企業から研修の依頼が来るようになりました。さらに大学講師の話もやってきました。

夜型の人は、朝活のことを「単に起きている時間をシフトさせているだけ」と思うかもしれませんが、それは違います。「まだ時間がある」とだらだら仕事を続ける夜の残業に対して、早起きして取り組む仕事は桁違いに効率が良くなります。著者は自分の感覚として「日中や夜の4、5倍」と明言しています。

実際に著者はいろいろな時間帯に原稿を書いてみて、かかった時間と原稿の質を比べてみました。理系の出身で材料工学を専攻していたという著者ならではの科学的アプローチです。

その結果、夜の時間帯だと2000字書くのに2時間以上かかり、内容もいまいちだったのに対して、朝だと30分程度で書き上がり、書き直しがほとんどありませんでした。クリエイティブワークは朝にやると大きな差がつくのです。それまではなんとなく「原稿は夜書くもの」と思い込んでいた著者ですが、その結果を見てからは夜の原稿書きをやめました。

第1章には、朝活で人生が激変した2人の話も載っています。
ひとりは大手自動車会社に勤務している40代の女性。子どもが生まれてから朝活を始めたという彼女は、毎朝4時に起きて家事を始め、6時に家を出ます。誰よりも早く会社に着くと、他の社員が出そろうまでの1、2時間の間に重要な仕事を優先的に片付けます。そして時短勤務で午後4時半には退社。余った時間でセミナーに参加したり、教材で勉強したりと自分に対する投資もしているそうです。

もうひとりは大手ハウスメーカー勤務の若い営業マン。最近めきめきと成績を伸ばしてトップセールスを記録した彼に上司がその理由をたずねると、「家を出る時間を30分早くしたから」との答え。リラックスして仕事をスタートすることができるため、職場の人間関係やお客様との商談にいい影響が出たのだといいます。朝の30分が、契約数2倍、契約金額2.5倍の結果をもたらしたのです。

著者は「朝活でしてほしいことベスト5」をプライベートと仕事に分けて紹介しています。まずはプライベート編。
・自分磨き
・ボディメイク
・健康促進と体のケア
・情報発信
・起業準備

続いて仕事編。
・コミュニケーション
・会議資料に目を通しておく
・企画書作成
・アイデア出し
・タスク整理とイメージトレーニング

朝はアウトプットに適した時間帯のため、情報発信や企画書作成のようなクリエイティブなアウトプットが特に適しています。

なんだか最近、限界を感じるなあと思ったら、まずはご一読いただきたい良書です。


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