オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

 

売れるコピーライティング単語帖
――探しているフレーズが必ず見つかる言葉のアイデア2000――

神田昌典/衣田順一・著 SBクリエイティブ・刊

1,780円 (税別)

「うーん、言いたいことは喉まで出かかっているのに、うまい言い回しを思いつかない。こんなとき、プロのコピーライターなら何と書くんだろう」
ビジネスレターを書くとき、商品の説明文を書くとき、お客さまの行動を促すメルマガのキャッチコピーを書くとき、こんな思いにとらわれたことはありませんか?

本書はそんな書き手の「もどかしい思い」を解消するために生まれた本です。何しろ整理して収録された単語数が667語、2000フレーズ。探し方さえ覚えてしまえば、机の前に常備して、さっと手を伸ばすようになるでしょう。

著者の1人は神田昌典氏。みなさんよくご存じのマーケターで、「GQ JAPAN」2007年11月号で「日本のトップマーケター」に選出されたほか、2012年の「アマゾン年間ビジネス書売上ランキング」で第1位を獲得しています。これまでの累計販売部数は400万部を超えるといいます。

もう1人の著者である衣田順一氏は、アルマクリエイションズ コンテンツ戦略室 ディレクター。住友金属工業で営業やシステム構築を経験した後、セールスライターとして独立し、現在に至ります。

それでは、本書の目次を紹介しましょう。

◆まえがき~PASONAの法則~

◆問題提起をする表現(Problem)
・問題点を指摘する+コラム「知られざるコピーライティングの歴史」
・切迫感を出す
・欲望・欲求に訴える
・質問を投げかける
・好奇心をそそる+コラム「マーケティングとは何か?」
・ギャップを生む
・比較で興味を引く+コラム「偉人たちのコピー1」
・注意を促し注目を集める

◆親近感につながる表現(Affinity)
・ストーリー性を出す+コラム「書けない原因」
・読み手に寄り添う
・誘う
・仲間意識を強める
・イメージを膨らませる
・誠実さ・親切さを出す+コラム「偉人たちのコピー2」

◆解決策を提示する表現(Solution)
・重要なポイントを示す
・方法を提示する
・簡単さを強調する+コラム「コピーライターには3種類いる」
・効率性にフォーカスする
・期待感を高める
・秘密の雰囲気を醸し出す
・学びの要素を強調する+コラム「24時間365日働くセールスパーソン」

◆提案する表現(Offer)
・提案内容を伝える+コラム「偉人たちのコピー3」
・新しさを強調する+コラム「キャッチコピーとヘッドライン」
・得する情報を伝える
・面白い情報を提供する
・独自性・優位性を強調する
・販売条件を提示する

◆相手を選ぶ表現(Narrow)
・読み手を特定し呼びかける+コラム「行動経済学とコピーライティングの関係」
・限定する+コラム「文章力だけでは売れない!?」
・特別感を出す
・レベル別にする
・女性に響く+コラム「絞り込みの誤解」

◆行動を促す表現(Action)
・具体的な行動を促す+コラム「流し読みへの対策」
・流行りを演出する
・信頼感を得る+コラム「『ティーザー』というライティング・テクニック」
・権威を借りる
・安心感を出す+コラム「専門用語は使うべきか? 避けるべきか?」
・勢いを盛り上げる

◆あとがき

普通の本だと「第1章、第2章」とあるべきところが、本書では章番号がありません。その代わりに、「PASONA」というキーワードの頭文字に相当する言葉の順に章が並んでいます。

「PASONA」と言っても、人材派遣会社のことではありません。
P=Problem(問題):買い手が抱えている「痛み」を明確化する
A=Affinity(親近):売り手が買い手の「痛み」を理解し、解決する術を持っていることを感じてもらう
S=Solution(解決):問題の根本原因を明らかにし、「解決」へのアプローチ法を紹介する
O=Offer(提案):解決策を容易に取り入れられるように、具体的な商品・サービスの「提案」を行う
N=Narrow(絞込):解決策が功を奏して購入後、満足いただける買い手の条件を絞り込む
A=Action(行動):「痛み」を解決するために必要な具体的「行動」を呼びかける

「この順序で構成すれば、人を動かす文章が作れる」魔法のキーワード、それがPASONAであると著者たちは主張しています。その例として、本書のキャッチフレーズが2例挙げられています。ひとつが商品情報をきれいに飾り立てただけの文章、もうひとつがPASONAの法則を使って顧客視点の文章に改めたものです。

【Before】
希代のマーケティング・コピーライターが、結果を求められる全てのビジネスパーソンに贈る、厳選、売れる言葉2000。

【After】
人生100年時代を豊かに生き抜くバイブル――2000語×実証された構成パターンで、売るのが苦手な人でも、売れる達人に。

さて、最初の章は「Problem(問題)」です。著者たちはここで、次のように述べています。
「売ることは、とても誇り高い行為だ。なぜなら、その本質は…、自分の「才能」を役立てながら、他人の「問題」を解決することだからだ」

そして、稼げるコピーライターは、問題発見の達人であると言い切っています。なぜなら、ビジネスのための文章は、買い手の「問題=痛み」を発見することから始まるからです。

ここでもいくつかの例文が挙げられています。
×「少子高齢化が本格化し、人材採用難が予想される昨今…」
○「えっ? 応募ゼロ? ほんとに採用広告は出ているのか!?」

×「第4次産業革命についていけない社長の特徴とは?」
○「若手ITエンジニアの“典型的な”会社の悪口をご存じですか?」

×「働き方改革が進んでいない会社の致命的な間違い…」
○「管理職の“働かせ方改革”は、進んでいますか?」

「他人の痛みを掘り下げて考え、自分の痛みとして感じられるようになると、ぐっと身近で、顧客が共感する言葉を使えるようになる」と、著者たちは言います。

そして、それぞれの章はいくつかの中項目に分かれています。最初の章では、「問題点を指摘する」「切迫感を出す」「欲望・欲求に訴える」「質問を投げかける」「好奇心をそそる」「ギャップを生む」「比較で興味を引く」「注意を促し注目を集める」という中項目が立てられています。

「問題点を指摘する」という中項目には、「問題」「間違い」「よくある間違い」「間違いだらけの」「AだけがBではない」「壁」「幻想」「ウソ」「悪い習慣」「うまくいかない人」「残念な」「よくあるトラブル」「NG」「年々難しくなっています」「恥ずかしい思い」「**にもほどがある」という16語が挙げられています。これが本書の「単語帖」です。

それぞれの「単語」には、3例ずつの用例と複数の「別表現」があります。「恥ずかしい思い」のところには、「赤っ恥」「顔が真っ赤になる」「思い出したくない」という別表現と、「授業参観で恥ずかしい思いをしたことはありませんか?」「プレゼンで恥ずかしい思いをしたことがある方へ」「あなたは部下の前でこんな恥ずかしい思いをしたことはありませんか?」という用例が掲載されています。

このような単語が章全体で667語。それぞれ3つの用例があるので2000フレーズ。それが本書のボリュームです。

読み物として楽しめるのは、各章の冒頭にある数ページの解説と、適宜設けられているコラムです。ここだけ拾い読みしても非常に興味深く、役に立つ知識が蓄えられます。

たとえば「知られざるコピーライティングの歴史」というコラムでは、コピーライティングが100年以上も前にアメリカで発達したこと、その理由は国土が広く、手紙によるセールスが盛んだったことが述べられています。一方で日本は国土が狭く、対面販売が主体だったために、コピーライティングはあまり発達してきませんでした。今でも学校で体系立てて教えることはなく、一部の人にしか知られていないと記されています。

それぞれの単語に付されている解説も読みでがあります。たとえば「終焉」という単語の解説は、次のように書かれています。
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「終わり」と同じ意味だが、語感的には「終焉」のほうが重厚感と深刻さが強くなる。「もう終わり」という表現は、すでに次の新しいものが登場しているという希望のニュアンスを含むことが多いが、「終焉」の場合は、「先が見えない」「破綻した」という悲観的な響きがある。
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そして「終焉」の別表現として「最後」「最期」「~にさようなら」「~よさらば」があり、フレーズとして「『太陽光バブル』の終焉」「中国爆買いの終焉」「悲しみか? 安堵か? 結婚生活の終焉」の3つがあります。

本書はB5判変形という、あまりなじみのないサイズの本です。260ページあるので厚さは3cm近く。全ページが2色刷りですが、年間200冊を手掛けるという超人気ブックデザイナーの井上新八氏による凝ったデザインが楽しめます。

辞書として使ってもよく、アイデアのヒントとしても使えて、コピーライティングの参考書にもなる、1冊でマルチな楽しみ方ができる本です。やや高めの価格ですが、損にはなりません。


 

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