オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

巣ごもり消費マーケティング
「家から出ない人」に買ってもらう100の販促ワザ

竹内謙礼・著 技術評論社・刊

1680円 (税別)

著者はネットショップ界では有名な方なので、直接のお知り合いになっている方も多いことでしょう。私も何回かインタビューしたことがあります。同じ著者の『ホームページの値段が「130万円」と言われたんですが、これって相場でしょうか?』という本を取り上げようと用意していたのですが、こちらの本が出たので順序を入れ替えて先に紹介することにしました。

著者は経営コンサルタントで有限会社いろは代表取締役。大学卒業後、雑誌編集者を経て、観光施設の企画広報に携わり、通信販売や実店舗の運営、企画立案などを行いました。楽天市場に出店したネットショップがオープン3年で年商1億円を達成したり、2年連続で楽天市場のショップ・オブ・ザ・イヤー「ベスト店長賞」を受賞するなどの実績があります。現在は大企業、中小企業を問わず、販促戦略立案、新規事業、起業アドバイスを行う経営コンサルタントとして活躍中です。著書には前出のほか、『楽天にもAmazonにも頼らない!自力でドカンと売上が伸びるネットショップの鉄則』『一瞬でお客さんの心をつかむ!1秒POP』『200社に足を運んでわかったお客さんがホイホイ集まる法則』などがあります。

本書のことを簡単に紹介するには、カバー、帯まわりのコピーをお見せするのが早いでしょう。
ネットの知識がなくてもできる非対面営業
巣ごもり消費対応販促物のつくりかた
エンタメ、観光、飲食etc業種別攻略法

逆風の中で希望をつかめ!
外に出られない、「密集」「密接」「密閉」では商品を提供できない…
180度変わった商売の条件をクリアする方法とは
人気経営コンサルタントがフルスロットルで徹底解説!

巣ごもり消費が終わるのは5~10年先か
“触れあう”という習慣が消滅することは絶対にない
サービス業のほうがホワイトカラーの給与を抜く?
勢いが増すIT化
加速するネット関連サービス、縮むシニア市場
「インスタ映え」の販促効果が鈍くなる
余暇はオンラインでスキルアップ、屋外レジャーにも注目
恋愛ビジネスが新しい形で発展する
これからの消費トレンドを大胆予測!

巣ごもりしてても売れるモノ、売れるサービスとは?
・衛生商品
・オンラインサービスの設置
・消費期限の長い食品
・宅配、出張事業
・農業、畜産業、日曜菜園
・DIY
・加湿器、空気清浄機
・不動産事業
・自転車、電動バイク
・ランニング用品、ウォーキング用品
・室内運動器具、ダイエットアプリ
・高級寝具
・家庭用オフィス家具
・国産品
・異業種のアパレル品販売
・病院関連ビジネス
・中古品販売、個人売買
・修理事業
・レンタル、シェアビジネス
・車の修理、軽自動車の出張販売、中古車販売
・一人趣味(サーフィン、カヌー、釣り、乗馬、陶芸、ソロキャンプ)
・バーベキュー、ビアガーデン
・求人系の広告代理店
・中古住宅、リフォーム会社
・オンラインの自宅学習系の副業
・情報商材

そして本書を開くと、巻頭にある折り込み2色刷りの「巣ごもり消費に効く100の販促ワザ」が飛び出します。いくつか選んでみます。
・いつでも通常営業できるように準備を整えておく。
・消費が動き出した時に「少し早いんじゃないか」ぐらいのタイミングで販促を仕掛ける。
・3密を回避した売り方のプロになり、感染予防策の「付加価値」を高める。
・買い取り、下取りのサービスで集客力を上げる。
・過去に来店したお客様、問い合わせのあった見込み客に営業をかける。
・悩みごと解決型の商品やサービスを考える。
・「今買わなくてはいけない」と思わせるために、販売期日や個数を限定にする。
・地方のテレビCM、ラジオCMが中小企業でも購入できるぐらいに安価になっていないかチェックする。
・プレスリリースを配信し、メディアの力を借りて情報を拡散する。
・なじみのないオンラインサービスは、利用者の声を掲載してイメージを湧かせる。

最初に「はじめに」と「おわりに」を読むと、著者が置かれている6月現在の状況がわかります。3月からセミナーや講演会の仕事がすべてキャンセルとなり、売上が7割ダウン。対面の仕事が激減したために、事務所のミーティングスペースを動画撮影スタジオに改装。オンラインセミナーやZoomミーティングにシフトした仕事に転換していきます。そして定額制コンサルティングサービスやメルマガのお客さんが増えました。そういう著者自身の環境と仕事の大転換を背景に、本書は書かれています。

著者の言う「巣ごもり消費」とは、財布の紐をきつく縛り、3密を避けて家に閉じこもる消費者の消費行動をいいます。かつてない逆境を前にしては、これまでのマーケティングノウハウはまったく通用しません。しかし、商売で生きている人間は、どうにかして商品を買ってもらわなければ生存を続けることができませんから、コロナ禍が長期化することを見据えて新しいビジネスを構築する必要があるわけです。

著者は「突破口は必ずある」と言います。消費者は巣ごもり状態になってはいても、不満やストレス、悩みごとを抱えています。そこに売上を回復させるチャンスがあるはずなのです。あきらめず、しぶとく商売を続けなければなりません。

今回の新型コロナウイルスによる経済事情を複雑にしているのは、ウイルスの収束時期がわからないことと、政府の今後の施策が見えにくいことが理由です。そして売り手側には投資するお金の余裕がありません。それが「打つ手がない」と思わせる原因になっています。

そこで著者は、「短期」「中期」「長期」の3つのフェーズで考えることにより、巣ごもり消費に対応したビジネスを構築することを勧めています。「短期」は緊急事態宣言解除後のゆるやかな自粛期間、つまり今の状況に対応したものです。

次の「中期」は、感染者数や医療体制が安定して、消費者が自主的に外出するようになる期間。つまりこのまま二次感染が急激に拡大しない場合の近未来です。そして「長期」はコロナ禍収束後の社会に順応した売り方の期間です。ちなみに著者は、コロナウイルスが収束しても、社会には感染に対する警戒が残り続けると見ています。

まず「短期」ですが、ここでは感染に最大限配慮しながら目の前のキャッシュを取りに行く作戦が求められます。狙うべき顧客は常連客、優良顧客、見込み客といった売り手側とコミュニケーションの取れている相手です。この人たちは来店や購入のハードルが低いので、ダイレクトメールやSNSを活用すれば、販促費を抑えた集客が可能だからです。

「短期」の間は、新規顧客の開拓や新規事業の展開は抑えます。費用がかかり、結果が出るのに時間が必要だというのがその理由です。

そして短期戦略の販促企画としては、セール系に絞ります。特別価格での販売、訳あり商品の販売などが売上を作る早道です。常連客ですらお金を使うのに腰が引けている状況なので、とりあえず最低限の利益を確保しながら売上を作っていきます。

この時期の集客方法は、常連客に対しては封書によるダイレクトメール、ハガキ、Facebook、InstagramなどのSNSが有効ですが、エリアを限定できるのであれば、ポスティングという手もあります。お客様が遠方への外出を控えているからです。

そして常連客に対しては、「がんばっています!」という明るいメッセージを届けます。スタッフが一生懸命に働いている動画や写真、仕事に対する思いやお客様に対するメッセージを書くと、お客様に「応援しよう」という気持ちが生まれます。

「中期」では、事業をゆっくりと回し始めます。この時期の戦略がコロナ禍収束までの売り方の基本になっていくので、1、2年はこの時期が続くのではないかと著者は見ています。

ここで本書では「コロナ禍における客層マトリクス」を図にしています。「感染が怖い・怖くない」「良識がある・ない」で客層を4つに分けたものです。

(1)は「感染が怖くて、良識がある人」。完全非対面の接客を好み、なじみの店でしか買い物をしません。この客層を新規で取り込むことは難しいので、中期戦略ではこの層を狙わないほうがいいと著者は言っています。

(2)は「感染が怖くて、良識がない人」。神経質になりすぎて感情的な行動を取る人です。店頭で怒鳴ったり、言いがかりのようなクレームをつけてくるので、神経がすり減らされます。中期戦略では狙いたくない客層です。

(3)は、「感染が怖くなくて、良識がある人」です。感染に対して一定の距離感があり、万一の可能性を恐れて心のブレーキをかけています。このようなお客様を新規顧客として迎え入れるべきだと著者は言います。

最後の(4)は「感染が怖くなくて、良識がない人」です。最も警戒しなくてはならない客層であり、中期戦略でもできるだけ接触を回避したい客層です。

それでは、どうしたら(3)の客層を獲得することができるのでしょうか。著者は「お店の考え方への共鳴」という選別方法でこの人たちを選び出し、誘引することを勧めています。自粛ムードの中でスタッフが頑張っている話や、お店の復活に向けて力を合わせて働いている話などをチラシやホームページでアピールすることが効果的といいます。

その次に獲得を狙うのは、(1)の客層です。情報発信をマメに行うことで(1)の人たちを(3)に変えていきます。また、(2)の客層はクレームや問い合わせをきっかけに(3)に変えることができます。これらの客層に対しては、ゆっくり焦らず見守るというスタンスが必要です。

中期戦略での売り方は、短期戦略のときとほとんど同じですが、提供する商品やサービスを変えていきます。短期戦略では既存の商品を素早く売ることを優先しましたが、中期戦略では既存の商品に変化を加えて新しい客層の獲得に動く必要があるからです。

そこで有効なのが「悩みごと」を解決するタイプの商品やサービスです。たとえば「寝心地がいい」という寝具は「睡眠不足は免疫力の低下につながります」「不安で眠れないときは寝具を変えるのが一番」というコピーで「悩みごと解決商品」に生まれ変わります。

巣ごもり消費では、買い手側に「今、買わなくてはいけない」と強く思わせる必要があります。そのために悩みごとを解決させる販促が有効と著者は言います。

新型コロナウイルスの巣ごもり消費では、今まで経験したことのない“悩み”が存在しています。生活様式も大きく変わるので、掘り起こし方次第では誰も気づいていなかった付加価値の高いヒット商品が生まれる可能性もあるでしょう。

中期戦略での集客方法は、基本的には短期戦略と変わりませんが、大手企業が撤退した穴場の広告枠を狙う手もあります。地方紙の大枠が格安で出ていたり、リスティング広告のメジャーキーワードが安くなっていたりします。チェックしてみるべきです。

また、「中期」の時期に感染が拡大する可能性も無視できません。政府や地方自治体の自粛要請が出ることもあるかもしれません。その場合は、「中期」を「短期」に戻し、時期を見てまた「中期」にするといった対応が必要です。

ワクチンができて集団免疫が獲得されると、ようやく「ウィズコロナ」から「アフターコロナ」の世の中にシフトします。そこで「長期」の戦略に移るわけですが、新しいウイルスが拡散したりすれば、また「短期」や「中期」に戻らざるを得なくなります。その繰り返しになる可能性は覚悟しておくべきです。

長期戦略で真っ先に取り組むべきなのは、顧客の囲い込みです。それまでのような「ゆるやかなつながり」ではなく、お客様との間に絆を作り、強い購買意欲を持ってもらうようにします。

それでは、本書の目次を紹介します。
・はじめに 巣ごもりの客を叩き起こせ!
・第1章 冷静になって検証すると見えてくる「巣ごもり消費」の攻略法
・第2章 戦略は「短期」「中期」「長期」で考える
・第3章 初心者でもすぐできる巣ごもり消費のネット活用法
・第4章 巣ごもり消費で「売れるもの」「売れるサービス」
・第5章 新型コロナの巣ごもりで販促が難しい業種の攻略法
・第6章 巣ごもり消費対策「売れる販促物」のつくりかた
・おわりに

著者は「この本は役に立たなかった」と言ってほしいそうです。その声が聞けるということは、コロナ禍が収束して平穏な日々の中で商売ができるようになっているはずだからです。

しかしその半面「役に立ったと言ってもらい、3密になるくらいのぎゅうぎゅうのセミナー会場で巣ごもり対策の話を熱く語りたいという思いがある」とも言っています。コロナ禍は私たちにさまざまな思いを抱かせます。


 

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