本書の目的と効能を知るには、まずイントロダクションを読むといいでしょう。
***
書くのって、しんどくないですか?
書きたい気持ちはあるんだけど、書くことがない!
書き始めても、途中で混乱してしまう!
ていねいに書いているつもりなのに「わかりにくい」と言われる!
時間をかけて書いたのに、あんまり読んでもらえない!
「こんなの、おもしろいのかな?」といつも不安になる!
(中略)
文章を書くというのは、なかなかしんどいものですよね?
でも、もう大丈夫!
その「しんどさ」の原因を突き止め、ひとつずつ対処法をご用意しました。
本書で紹介するのは、編集者である筆者が10年以上かけて編み出した
「誰でも書けるようになる」スキルとノウハウです。
読み終えるころには「しんどい……」から「楽しい!」に変わっているはず。
あなたも今日から「書ける人」になって、人生を変えてください。
***
著者は書籍編集者。中経出版で編集者としてのキャリアをスタートし、星海社、ダイヤモンド社を経て、株式会社WORDS代表取締役に就任、現在に至ります。これまでに手掛けた本は累計100万部以上とのことです。
では先に目次から紹介しておきましょう。
CHAPTER 1 書くことがなくてしんどい
――書く以前の「取材」と「思考法」
CHAPTER 2 伝わらなくてしんどい
――「わかりやすい文章」の基本
CHAPTER 3 読まれなくてしんどい
――文章を「たくさんの人に届ける」方法
CHAPTER 4 つまらなくてしんどい
――商品になる「おもしろい文章」はこうつくる
CHAPTER 5 続かなくてしんどい
――書くことを「習慣」にする方法
CHAPTER 6 書けば人生は変わる
――「しんどい」の先にある新たな自分
「はじめに」で著者は、文章を書くのがしんどい理由を「メンタルだ!」と断言しています。
LINEなら書ける、ツイートならできる、仕事のメールには返信できる。ではなぜ改まってまとまった文章を書こうとするとしんどくなるのでしょうか。多くの人はその原因を「自分にはスキルが不足しているから」と考えますが、それは違います。
多くの人が文章を生み出そうとするとき、自分の中から文章の種を見つけようとします。しかし著者は「実は自分の中には何もないのです」と言い切っています。
書こうと思ってすらすらと書けるのは一部の文才のある人だけで、普通の人は目を閉じて文章を生み出すことはできません。
著者は「そもそも『書く』という言葉がよくない」と言います。では「書く」ではなくて何が適当か。それは「伝える」という言葉です。
LINEやツイートが簡単に書けるのは、誰かに何かを伝えようとしているからです。「よし、LINEを書くぞ!」と考えて書き始める人はいません。「電車が止まっているので遅れます」ということを伝えたいから書けるのだということです。
そして著者からのアドバイスは、「ゼロから書こうとしないこと」。自分を著者と編集者の2人に分けて、まず著者として殴り書きをつくり、次に編集者としてそれを手直しする。そうすればある程度の質の文章がつくれるのだといいます。
「はじめに」で著者が言っている、「書こうとするのではなく伝えようとすること」「ゼロから文章を生み出すのではなく、下書きを書いてから仕上げる」という2つを守るだけで、文章に対する苦手意識が少なくなるはずです。
「CHAPTER 1」には次の大見出しがあります。
・「自分のこと」を書こうとしなくてもいい
・「書く」の前には「取材」がある
・ダムに水を溜めるようにメモをとろう
・「ライティング」の前に「ヒアリング」の技術を磨け
・最初から「完ぺき」を目指さない
・ネタを寝かせて熟成させてみる
・書けない原因は「自意識」が9割?
ここで大切なのは、「取材」「メモ」「ヒアリング」かと思います。これらは「書く」というアウトプットの前に十分なインプットが必要であることを教えてくれています。
どこかの会に招かれて「50分、好きなことを話してください」と講演を依頼されたとき、みなさんは徒手空拳で演台に向かうでしょうか? おそらく台本やメモを用意して、リハーサルのようなこともするのではないでしょうか。
「書く」という行為があまりにも日常的であるため、つい準備を疎かにしがちですが、不特定多数の人の目に触れる文章をつくり、広めたいと思うなら、講演と同じくらいの準備は必要です。
十分なインプットと準備がないままにキーボードに向かっても、出てくるのは雑談をつなぎ合わせた空疎な文章でしかないでしょう。まずはそれを認識することです。
CHAPTER 2の大見出しは、次のようなものが並んでいます。
・「わかりやすい文章」のたったひとつの条件
・一文は短ければ短いほうがいい
・エスプレッソのような文章を書いてはいけない
・削ることができるものは、なるべく削る
・「文章のデザイン」を考える
・「論理的」とは、つまり「わかる」ということ
・読み手に「前提知識」がどれくらいあるか
・「結論」は先に言う
・「重心」のある文章になっているか
最初の見出しが気になりますね。核心の部分を引用してサービスしちゃいましょう。
「読む速度と理解する速度が一致する文章」
と著者は言っています。いかにも編集者らしいアドバイスです。
例として、この本では国会の答弁書を引用しています。いかにも役人的な文章で、正確ではあるのでしょうが、一読してただちに理解できるものではありません。
著者はそれをリライトし、読みやすい文章の例として掲出しています。前の例とは雲泥の差です。そしてこの項目の最後に大事なことが書かれています。
「前提として大切なのは、書き手が内容をきちんと理解しているということです。
(中略)
書き手が理解していないものを読み手が理解できるはずがないのです」
CHAPTER 3の大見出しは、こんな感じです。
・文章は基本的に「読まれない」
・「書きたいこと」と「読みたいこと」はズレている
・ターゲットどうするか問題
・「無邪気な書き手」と「イジワルな編集者」
・「自分ごと」になるようなテーマを選ぶ
・読者にその文章を読む「動機」はあるか
・人が集まる「文脈」にコンテンツを置く
・いい文章は、読者への「ラブレター」
最初の項目と最後の項目を見てみましょう。
いきなり著者は、読者に厳しい言葉を投げつけます。
「みんな『読んでもらえる』と思いすぎです」
「文章は基本的には読まれない」と著者が言う理由は、現代の世の中に情報が氾濫しているからです。身のまわりに無数のおもしろい情報があるのに、なぜ今この文章を読む必要があるのか。ネットの進化とともに情報発信のハードルが低くなる一方で、読んでもらうためのハードルはどんどん厳しくなっているということです。
同じことを今号のEC仙人・太田さんが「ダメ出し!道場」で言っていますから、ぜひそちらもご参照ください。
最後の「ラブレター」は気になりますね。引用してみましょう。
「読まれる文章を書くためには、相手を喜ばせることをつねに考える。ものすごくあたりまえのことですが、これしかありません」
もちろん、ラブレターにもいいラブレターとダメなラブレターがあります。
いきなり冒頭から「本当に好きです! 付き合ってください!」と書かれたラブレターは、「キモい」とゴミ箱にポイ捨てされるでしょう。
「いいラブレターは、相手のことがきちんと考えられている文章です。相手の興味がありそうな話題から入る。もしくは『いきなり手紙が届いて驚いたかもしれません』と共感を誘う。次に自分を知ってもらい、思いを伝えるはずです」
そしてただ一方的に「付き合いたい」とだけ書くのではなく、自分と付き合うことのメリットもさりげなく示します。
「ぼくと付き合うと、毎日が楽しくなります!」
「困ったときに助けてあげられます」
などと、いやらしくなく伝えるわけです。
CHAPTER 4の大見出しは、次のようになっています。
・「情報」だけでは価値がない
・おもしろい文章は「共感8割、発見2割」
・その文章に「サビ」はあるか?
・「固有名詞」で魅力は倍増する
・「冒頭」で先制パンチを浴びせる
・文章をワンランクアップさせるいくつかの工夫
・「たとえ」の達人になる
・「順番を変える」だけで印象は変わる
・タイトルは0.2秒の戦い
さあ、どの項目が気になりましたか?
「固有名詞」「冒頭」「たとえ」は、みなさんも今すぐ使えるワザです。
誰もが知っている有名人のエピソードが書いてあれば、その文章に急に親近感を持ってもらえるでしょう。誰も知らない人のことでも、リアルな存在として書かれていると、興味を持ってもらいやすいものです。
「冒頭」はお笑いでよく言われる「つかみ」です。
大作家でも「書き出し」には膨大なエネルギーを費やすといいます。それは最後の「タイトルは0.2秒」につながる要素だからです。
冒頭の文章が凡庸だと、せっかく「読んでみよう」と思った読者の期待値を急落させてしまい、その後の部分が読んでもらえない可能性が高まります。
逆に、冒頭がおもしろいと、つい勢いで全文を読んでしまうものです。
だからタイトルも大事です。その文章を読もうか飛ばそうか、読者が意思決定をする最初の要素だからです。
「たとえ」は退屈な文章にひねりが加わります。一読しただけでは理解がむずかしい内容でも、たとえが秀逸であれば一発でわかります。わかった瞬間に読者は書き手への好意を高め、「もっと読みたい」と思ってくれます。
CHAPTER 5の大見出しは、次のようなものです。
・スキーの教則本を読んでも滑れるようにはならない
・フォロワーは最強の「編集者」である
・ツイッターで得られるさまざまなメリット
・「ビジョン」を描いて、発信しよう
・「おもしろい雑誌」みたいなアカウントを目指そう
・信頼されるプロフィールをつくろう
ツイッターで得られるメリットは10個あると著者は言います。
(1)発信する勇気が手に入る
(2)自意識をコントロールできるようになる
(3)マーケティング力が身につく
(4)共感力が身につく
(5)構成力が身につく
(6)コピー力が身につく
(7)文章のリズム感を鍛えられる
(8)思考力・考察力が身につく
(9)調べる力が身につく
(10)行動力が身につく
最後のCHAPTER 6の大見出しです。
・いまは「書ける人」が有利な時代
・多様化の時代に「存在を示す」ことの重要性
・自分のことを知ってもらえると「仕事」がやってくる
・副業・複業もまずは書くことから
なぜ「書ける人が有利」なのかといえば、現代は人との出会いがいきなりリアルではないからです。特にビジネスでは、初めての出会いはテキストである場合がほとんどでしょう。そこで「この人に会いたい」と思ってもらうためには、テキストが魅力的である必要があります。
最後の「おわりに」には「言葉で世界を動かそう」という見出しが躍っています。著者はこう言います。
「誰でも、いますぐに、人生を変えられる方法。それが「書く」ということです」