オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

人生!逆転図鑑
山あり谷ありの32人に学ぶ成功の法則

早見俊・著 秀和システム・刊

2,000円 (税別)

「秀和システム」というと、コンピューター書のイメージが強い出版社です。『できるWindows10』などが有名で、『○○完全入門』といったタイトルの本にお世話になった人も多いのではないでしょうか。

この会社の沿革はなかなか複雑で、もともとはパソコンの黎明期にパソコン関連の総合事業を目指してスタートした会社でした。

出版事業を開始したのは1982年。「PC8001」関連本からの出発でした。ベストセラーシリーズの「はじめての○○」が出たのは1988年です。このころは出版とソフトの両方を手掛ける会社でした。

2006年にパソコンメーカーのMCJの100%子会社となり、2015年には投資事業会社である株式会社ウエノグループの100%子会社となります。

しかし2016年、ウエノグループを逆さ合併により吸収合併、現在に至ります。

この沿革を眺めてみると、およそ出版の世界の会社とは思えません。IT関連出版の動きは、既存の出版界とは少し違います。

さて、本書ですが、秀和システムがIT関連だけでない証拠のようなビジネス書です。実際のところ、本書の著者は日本文藝家協会会員、日本推理作家協会会員、日本文芸家クラブ会員、歴史時代作家クラブ会員という肩書を持つ、バリバリの時代小説作家。著書200冊超と聞くと、「なぜこの出版社なの?」と疑問が湧いてきます。

それはともかく、本書はタイトルにある通り、32人の著名な人物がたどった逆転の人生を解説したものです。イラスト、まとめ、表組みが駆使されており、水色と黒の2色印刷で読みやすいあたりは、さすがにコンビューター入門書の出版社です。

著者は、「まえがき」で本書出版の意図をこのように語っています。
「彼らを突き動かしたもの、それは、成功という果実だけではありません。私が32人の人生を辿り、感じたのは彼らの使命感です」

そして「まえがき」の最後で、カーネル・サンダースが生涯に40以上の転職を繰り返していたことが明かされます。それほどまでしてつかみ取ったものは何か。それを著者は「仕事の楽しさ、辛さ、喜び、悲しみ、尊さ」であると書いています。

本書は5部構成。「逆転」の形により、32人が5つの型に分類されています。

第1章は「執念爆発型」。夢をあきらめずに追い続けた6人が登場します。

第2章は「才気煥発型」。時流を読んで人心を見る天才たち6人が登場します。

第3章は「国難逆転型」。不況や戦争など国の有事を救った英雄が7人登場します。

第4章は「強メンタル型」。どんな挫折にも理不尽にも折れない6人が登場します。

第5章は「大器晩成型」。老いを知らない尽きぬ野望の7人が登場します。

では目次を紹介しながら、登場する人物名も出していきましょう。

第1章 執念爆発型
ロケット開発者・フォン・ブラウン
アラビア石油創業者・山下太郎
フォード・モーター創業者・ヘンリー・フォード
国際興業グループ総帥・小佐野賢治
ダイナマイト発明者・アルフレッド・ノーベル
東急グループ総帥・五島慶太

第2章 才気煥発型
東映社長・岡田茂
ヤマト運輸会長・小倉昌男
管財人・早川種三
元活動弁士・タレント・徳川夢声
西鉄ライオンズ監督・三原脩
鈴木商店ロンドン支店長・日商創業者・高畑誠一

第3章 国難逆転型
日本銀行総裁・前川春雄
イタリア首相・アルチーデ・デ・ガスペリ
大日本帝国海軍元帥・東郷平八郎
南アフリカ大統領・ネルソン・マンデラ
シンガポール首相・リー・クアンユー
外交官・重光葵
フランス大統領・シャルル・ド・ゴール

第4章 強メンタル型
伊藤忠商事会長・瀬島龍三
ウォルト・ディズニー・カンパニー創業者・ウォルト・ディズニー
公家・岩倉具視
日本銀行総裁・大日本帝国蔵相・高橋是清
英国首相・ベンジャミン・ディズレーリ
来島どっくグループ総帥・坪内寿夫

第5章 大器晩成型
マクドナルド創業者・レイ・クロック
クリスチャン・ディオール創業者・クリスチャン・ディオール
米国大統領・ロナルド・レーガン
大日本帝国首相・鈴木貫太郎
西ドイツ首相・コンラート・アデナウアー
ニューヨーク・ヤンキース監督・ケーシー・ステンゲル
ケンタッキー・フライドチキン創業者・カーネル・サンダース

第1章のヘンリー・フォードには、こんなタイトルがついています。
「空前の成功と失敗を手にし、最後には栄光をつかんだ自動車王」

ヘンリー・フォードがガソリン自動車の開発に成功した裏には、発明王エジソンの高評価がありました。そして2度の挫折を乗り越え、T型フォードの大ヒットが生まれます。

しかし、T型フォードが売れすぎて市場が飽和したため、方針変換してA型フォードを発売、さらにはかつてのライバルを迎え入れて高級車「リンカーン」をデビューさせ、会社を回復させたのでした。

第2章の徳川夢声には、こんなタイトルがついています。
「人気弁士が『哀しき転職』を経て日本初のマルチタレントへ転身」

徳川夢声は映画が活動大写真と呼ばれていたころの人気活動弁士でした。弁士とは、サイレント映画を声で解説したり、登場人物のセリフを口演する職業です。

しかし、音声の入ったトーキー映画が登場すると、弁士の仕事はなくなります。そこで夢声は下を向くことなく、俳優、作家、朗読家というマルチタレントに転身し、77歳で亡くなるまで、第一線で活躍しました。

第3章のシャルル・ド・ゴールには、こんなタイトルがついています。
「敗北した亡命政権のくせに…米英も呆れる『図々しさ』で祖国の運命を逆転!」

そしてド・ゴールのイラストの下には、こんな言葉が。
「権は折れた。だが、私は折れた剣の端を握って、あくまで戦うつもりだ」

英国に亡命したときのド・ゴールに従ったのは、わずか7500名の水兵だけでしたが、チャーチルやルーズベルトと激しく対立しながらも、フランス代表を名乗ってノルマンディーに上陸。戦後フランスの初代大統領にまで上りつめたのでした。

第4章のウォルト・ディズニーには、こんなタイトルがついています。
「家業が傾き、会社は倒産し、仲間に裏切られても『4つのC』で夢の国をつくった男」

「4つのC」とは、好奇心、勇気、継続、自信の英単語の頭文字を取ったものです。この4つのCを実践したことで、ウォルト・ディズニーは夢を実現することができました。

一家の農場が競売にかけられ、最初の会社は倒産。育てたアニメーターたちから裏切られて絶望の淵に追い込まれますが、その苦境を救ったのが新しいキャラクターのミッキーマウスでした。

ウォルト・ディズニーは、「4つのC」の中で継続が一番大事なこと、挫折したときこそ継続の心を思い出すことを私たちに伝えています。

第5章のカーネル・サンダースには、こんなタイトルがついています。
「あらゆるトラブルが起きても挫けなかった男、65歳からの逆転!」

カーネル・サンダースの人生前半は、不幸の連続でした。転職、倒産、離婚と人生の辛酸をなめ続け、40を超える転職を経験しました。市電の車掌、鉄道のボイラー係、タイヤの営業マン、保険の外交員、軍人などです。

そして、ついにガソリンスタンドの経営者として成功しますが、世界恐慌で倒産。フライドチキンの開発に成功するも、火事で店が全焼。離婚。最後は65歳でフライドチキンのレシピを売るという賭けに出ました。これがついに当たり、74歳までに600店舗のフランチャイズネットワークを築くことができました。亡くなったのは90歳。十分な成功を実感しての逆転人生でした。

5人しか紹介できませんでしたが、読み応え十分、逆境を乗り切るヒント満載の1冊です。


 

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