オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

仕事に使える!棒人間図解大全

MICANO・著 自由国民社・刊

1,650円(税込)

出版社名を見て「現代用語の基礎知識」を連想した人は、かなりの出版通といえるでしょう。その通り、自由国民社は1948年に創刊された「現代用語の基礎知識」の版元です。「創刊」という用語を使いましたが、書店流通では雑誌扱いの本です。つまり、年に1回だけ刊行される定期刊行物というわけです。

そのほか還暦以上の人には馴染みがあると思われるフォークソングのバイブル「新譜ジャーナル」もここから出ていました。こちらは1968年の創刊で、1990年に休刊となっています。

創業は1928年ですから社歴は90年を超えます。老舗出版社と呼んでいいでしょう。2003年にユーキャンと「現代用語の基礎知識」に関するパートナーシップを締結し、同誌から出た「新語・流行語大賞」にも同社の名前が冠としてついています。

本書の著者は、本職のイラストレーター。海外旅行に出かけたとき、意思疎通に苦労したので、○と|だけの「棒人間」を描いて「してほしいこと」や「お礼のメッセージ」を伝えたところ、相手から喜ばれたことが「棒人間イラスト」を世に広めるきっかけとなりました。

「自分は絵が苦手だ、絵は描けない」と思っている人でも、コツさえつかめば棒人間は描くことができます。あとはその棒人間に演技をさせ、感情を表現させるだけです。

本書には、描き方のコツ解説だけでなく、そのまま写して使える「お手本棒人間」がたくさん掲載されています。文字だけだと味気なくなる葉書でも、気の利いた棒人間のイラストを添えれば、伝えたい気持ちが何倍にもなって相手に伝わります。

本書の担当編集者はこう言っています。
「本書で、あなたの人生を変えるかもしれない、愛らしい『棒人間』たちとの出会いを経験していただければうれしいです。『自分には絵心がないから…』と思い込んでいるような人にこそ、ぜひともご一読をおすすめします」(産経新聞2021年7月24日)

その気持ちが読者に通じたのか、本書は発売1週間で重版。この手の本としては異例の売上を記録しています。

それでは、本書の構成をつかんでいただくために、目次を紹介します。非常にシンプルです。
・1章 準備
・2章 基本
・3章 言葉
・4章 動作
・5章 感情
・6章 進化
・7章 区別
・8章 遠近
・9章 漫画
・10章 展開
・図典 素材

通常の本の「まえがき」や「イントロダクション」に相当するのが第1章の「準備」です。

ここでは最初に「棒人間を描くのに必要なもの」が紹介されます。
・A4サイズ500枚入りコピー用紙
・機能優先の消しゴム
・シャープペンシル+2Bの芯

コピー用紙が推薦されているのは、「安価で描きやすいから」。2Bの芯は「低い筆圧で書けるから」と理由が付されていますが、次のページには「描きやすいペンと紙ならばどんなものでも構いません」と書いてあります。

一般に絵心のない人は自分自身に「絵が描けない」という呪縛がかかっているものです。本書にはこんなコピーがあります。
「あなたに描けないという魔法をかけたのはいったい誰?」
「その呪いから解放されてもいいんじゃない?」

そして次のページにはこうあります。
「解放への道」
「途中で休憩してもゆっくり登っても、やめない限り一方通行」
「1日1人描くだけでも、1年後には描く筋肉がついています」
「さあ始めよう!」

そして最初のレッスンは「白い紙に線を引くこと」。
「優しくエレガントな線」と「素朴で力強い線」の2種類の線を引いてみます。
著者はここで、「ペンを持って読んでください」と読者にお願いしています。

続いて「風が吹き抜けるような線」「力を抜いて線を引く」「夏の太陽のような線」「力を入れて引き下ろすように」「白い紙の上で線と踊ろう」といった簡単なレッスンが出てきます。

次は「線から丸へ」。いろいろな丸を描く練習をして、手を動かします。「動かした分だけ確実に効果がでてきます」と著者は言います。

第2章は「基本」です。まず、ゆっくり丁寧に棒人間の頭である「○」を描きます。このとき、確実に線が閉じていることが重要です。線が閉じていない○が他人に与える印象は、良いものではないからです。

そして最初は「棒人間」ではなく「棒魚」を描きます。そのほうが「背骨」を表現しやすいからです。それから「魚」に手足をつけて「棒人間」にします。

このとき重要なのは、「首」です。頭のすぐ下に腕を付けると、息苦しい感じを与えるため、バランスが重要です。

描きづらさを解消するためには、「○」と崩した漢字の「大」をたくさん組み合わせて描く練習がいいそうです。

頭部の「○」がきちんと描けていれば、曲線の背骨と手足がさまざまな表現をしてくれます。それが何をしているのか相手に伝われば、棒人間は完成です。

著者はこう言います。
「あなたが描いたものは、『何かをしている』ように見えているはずです。ヨガ、スライディング、転ぶなど。向きを変えてみると、また違ったものに見えてきます」

第3章の「言葉」は、棒人間をコミュニケーションツールとして使えるようになるレッスンです。目的を果たす動作「走る」「持ち上げる」「眠る」や感情を表す動作「嬉しい」「悲しい」「感謝」を絵で表現していきます。

そしてここに小道具「漫画符号=漫符」が登場します。横になった棒人間の上に「Z」があれば寝ていることを表しますし、うつむいた棒人間が吐息を吐いていれば、ため息なのだと伝わります。

吐息のマークは頭の上にくれば「怒気」、お尻にくれば「屁」となります。ほかにもハートマークや音符も使えます。

物体の軌跡を表す線があれば、棒人間に動きがつけられます。マンガなどを参考にするといいでしょう。

第4章は「動作」です。重要なのは「膝」と「バランス」で、著者自身によるたくさんの作例がついています。

第5章は「感情」です。他人から見てその状況がわかる感情表現には、身体の決まったパターンの動作があるそうです。それを押さえれば感情表現が伝わります。

たとえば「下がる気持ち」は次のようなポイントで表現できます。
「背中は丸く」
「歩幅は狭く」
「膝は曲がっている」

逆に「上がる気持ち」は次のようなポイントです。
「腹を見せる」
「背中を反らす」
「腕を大きく広げる」

同様に「怒り」「かわいい」「セクシー」「勤勉」にも、それぞれのポイントがあります。

第6章は「進化」です。棒人間に棒や丸、四角などの小道具を加えて表現の幅を広げます。落語家が扇子をいろいろな物に見立てて演技するのと同じです。

第7章の「区別」では、年齢、性別、職種などを棒人間で描き分ける方法をレクチャーします。

第8章は「遠近」です。距離の違い、心理的な隔たり、立体的な状況を棒人間で表現します。

第9章は「漫画」。棒人間で物語を表現していきます。小道具で状況を表し、4コママンガにすればストーリーになります。

第10章は「展開」。目の前で棒人間イラストを描いてあげることで、相手にサプライズを届けられます。メモに棒人間を加えれば人間関係の清涼剤になります。お手製のピクトグラムを描けば、言葉の伝わらない相手にも意思を伝えられます。

最後の「図典」は素材集です。さまざまな棒人間のポーズがあるので、まずはここを見てパクることから始めてもいいでしょう。


 

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