オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

実例を見て学ぶ-新プレスリリース道場

井上岳久・著 宣伝会議・刊

1,250円(キンドル版)/2,090円(税込)

前回ご紹介した『メディアを動かす広報術』(松林薫著、宣伝会議)は、元日経新聞記者が指南する「プレスリリースの書き方心得」でした。

新聞記者の立場を詳しく解説することにより、「メディアに取り上げられるプレスリリースはどう書けばよいか」がわかるものです。

ただ、それだけで誰もがすぐれたプレスリリースを書けるようになるかといえば、残念ながらちょっと足りません。

実際にすぐれたプレスリリースというのはどんなものか、具体的にどこをどのように工夫すれば、「伝わる」プレスリリースが作れるのか、その角度の情報が不足していたからです。

そういう指南書があれば紹介したいなと思っていたところ、本年3月に発刊された本書を見つけました。前回と同じ出版社からリリースされたものですが、こちらの著者は「プレスリリース制作の第一人者」です。

実際に著者が選んだ優秀リリース37点が紹介されており、どこがどのようにすぐれているのかがひと目でわかります。

その魅力を伝えるため、今回は表紙の書影だけでなく、中面も何点か紹介することにしました。

本書の元になったのは、広報・PRの専門誌「広報会議」に14年にわたって長期連載中の「実践!プレスリリース道場」です。本書のタイトルには「新」とついていますが、2016年に第1弾が発刊されており、本書は内容と実例を一新した新作です。

著者はマーケティングコンサルタントとしてセミナーでプレスリリースの作り方をコーチしている人物です。現在の職業になる前は、横浜・伊勢佐木町にあったカレーミュージアムの広報担当者として、年間200~300本のプレスリリースを執筆していたそうです。

2006年に独立してからは、カレー総合研究所を設立し、「カレー大學」を設立するなど、カレー専門家としての顔も持っている人物です。

冒頭の「はじめに」を読むと、本書に掲載された「すぐれたプレスリリース」を選定し、掲載にこぎ着けるまでの苦労が書かれています。

著者の体感値として、「合格レベル」のプレスリリースは全体の20%くらいしかなく、さらに「見て勉強になるレベル」となると、その中の1~2%だといいます。しかも掲載を断られるケースが少なくないため、膨大なリリースから秀作を探し続けなければならないそうです。

そのようにしてケーススタディになるリリースを決めたら、著者は実際に広報担当者を取材して、そのリリースのすぐれたポイントを明らかにしていきます。

その14年間の作業の中で、著者は「広報先進企業の特徴」をつかみました。

(1)広報をPR会社などに丸投げせず、自力で展開している。トライ&エラーを繰り返しながらノウハウを蓄積し、自社に合った広報を確立している

(2)企業の戦略として広報を推進していくことが、会社全体でオーソライズされている

(3)広報担当者にバイタリティーがあり活動的。周りを巻き込んで強力に推進している

(4)戦略を持ち、長期継続的に一歩一歩遂行している

(5)そしてリリースが上手!!

では、本書の目次を紹介していきましょう。
Part 1 リリースの書き方の基本
Part 2 ベーシックリリース タイプ別実例集
Part 3 上級リリースにテクニックを学べ
Part 4 ストラテジックリリースに挑戦しよう
これで採用率アップ間違いなし!本書の活用法アドバイス

本書に掲載された37の優秀なプレスリリースの発信元は、有名企業から無名企業、行政まで千差万別です。すべて目次に掲載されているので、まずはそれらを眺めてみるだけでもおもしろいでしょう。

「Part 1 リリースの書き方の基本」では、そもそもプレスリリースの書き方がよくわからないという読者に向けて、「プレスリリース基本のキ」を紹介しています。

まず最初に、4つのQ&Aが並んでいます。
・リリースって何のためにつくるの?
・リリースにはどんな種類があるの?
・リリースには決まった書式があるのでしょうか?
・書く上で、どんなことに気をつければいいですか?

ここは大事な部分なので、要約してお伝えしておきましょう。

「リリースって何のためにつくるの?」という問いに対して、著者は「リリースは企業とメディアを結ぶ、最も有効なコミュニケーションツールです」と答えています。

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企業にとってPRしたい案件があるとき、いきなり放送局や出版社などのメディアを訪ねたり電話したりしてもらちが明きません。まずはPRしたい内容を紙にまとめてメディアに配信し、興味を持った記者にその媒体で紹介してもらうのがリリースの役割です。そこから取材に発展することもあり、非常にベーシックな方法でありながら効果は絶大。
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「リリースにはどんな種類があるの?」という問いに対して、著者は「この本ではPRする内容別に10種類のベーシックリリースを解説しています」と答えています。

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新製品やサービスの発売、新店オープン、商品リニューアルなどに際して出す「新商品・サービスリリース」「開業リリース」「リニューアルリリース」。商品やサービスの展開に合わせて出す「キャンペーン・イベントリリース」「高業績リリース」「達成リリース」。(中略)そして商品リリースの流れの脇を固める存在として「経営戦略リリース」「マーケティング戦略リリース」「広報企画リリース」「人事リリース」があります。(中略)さらに、通常のニュースリリースとは形態の異なる〈応用リリース〉として、「調査リリース」「共同リリース」「ニュースレター」の3つを本書では紹介しています。
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「リリースには決まった書式があるのでしょうか?」という問いに対して、著者は「A4サイズ1枚」「1リリース1テーマ」を2大原則として挙げています。また、基本的な形態として、「横書き」「目立つレターヘッド」「タイトル」「リード」「本文」「所在地・連絡先」を要素としています。

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内容には5W1Hを必ず入れましょう。「日本“初”」や「業界“ナンバーワン”」など、インパクトのある言葉を入れるといいですが、根拠を明確にすることが大切です。(中略)はっきりした統計はないけれど自社で調べたという場合は「当社調べ」と注意書きを添えます。
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「書く上で、どんなことに気をつければいいですか?」という問いに対して、著者は「タイトルとリードで目立つことが大事! 時事性を織り込むことも有効です」と答えています。

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まずは15秒で、“あっ”と言わせるものを目指しましょう。そのためにも「タイトル」と「リード」で目立つことが重要です。次にやや精神論になりますが、リリースには気持ちをこめて、一生懸命伝えたいことを書きましょう。メディアの人たちは職業上、行間を読むのが得意です。PRする案件に対する愛情が感じられなければ、取り上げる気も失せてしまうのです。
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続くページで「リリースの基本書式」について、さらにくわしく解説してあります。「タイトルはリリースの命。読み手に刺さるコピーの力と文字を大きくしてデザインとしても目立たせる」「リードはリリースで伝えたいことを2、3行で要約」「本文はポイントのみを書く。シンプルな箇条書きに写真やグラフなどのビジュアルを添えて。本文の大きさは11ポイント。1文は50字以内」「連絡先には基本情報にプラスして、担当者のメールアドレスや携帯電話番号を」といったポイントは重要です。

「Part 2 ベーシックリリースタイプ別実例集」では、基本形となるリリースの事例を10のタイプ別に紹介しています。これをお手本にして作るだけで、すぐに見栄えのいいリリースができるでしょう。

最初に登場するのは、スーツケースメーカーのエースが2017年に流したリリースです。著者はこれを「これぞ基本の王道リリース。目を引くタイトル、読み手の頭にスッと情報が入る構成に注目しよう」とコメントしています。

ちなみに、このリリースのタイトルはこうなっています。
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「プロテカ」のスーツケースが更に進化。
IoTを導入した日本初の国産スマートラゲッジ
『マックスパススマート』が登場!
2017年9月15日(金)発売開始決定。
8月7日(月)よりWEBでの予約販売受付も開始。
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「IoT」「日本初」「国産」など、ニュースバリューのあるキーワードのオンパレード。しかも2行目は赤字で目立たせてあります。

「Part 3 上級リリースにテクニックを学べ」では、これまでに10万本以上のリリースを見てきた著者が「これはスゴイ!」とうなったリリースばかりをランキング形式で紹介しています。ちなみに、グランプリは「よみうりランド・グッジョバ!!」です。

「Part 4 ストラテジックリリースに挑戦しよう!」では、「調査リリース」などのストラテジックリリースを作成するときのノウハウが紹介されています。これまでと違うアプローチでメディアの目を引く「上級編」です。

本書は「キンドル・アンリミテッド」に入っているタイトルなので、同サービスに加入している人なら、無料で読むことができます。まずはその方法で読んでみて、気に入ったら紙版を購入するというやり方もあります。


 

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