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シリコンバレー式超ライフハック

デイヴ・アスプリー・著 栗原百代・訳 ダイヤモンド社・刊

1,604円(キンドル版・税込)/1,980円(紙版・税込)

タイトルにある「ライフハック」とは、2004年にアメリカのテクニカルライターであるダニー・オブライエンが考案した言葉で、「仕事術」「生活術」といった意味です。

ライフは生活、ハックは「ハッカー」という言葉のほうが有名ですが、もともとは「たたき切る」「耕す」「切り拓く」「間に合わせる」といった意味の言葉でした。コンピューター用語としては「コンピューターをいじくり回す」「間に合わせのプログラムを書く」などの意味に使われています。

本書の原題は「GAME CHANGERS」。ゲームチェンジャーはスポーツ用語で、試合の途中で交代し、試合の流れを一気に変えてしまう選手のことを指します。転じて、これまで当たり前だった状況を一変させてしまうような人や企業、出来事などを指すようになりました。

つまり本書は、読む人の人生を一変させるような生活術が詰まった本だということです。このメルマガのタイトルに「人生をアップグレードする方法、ご存じですか?」と掲げたのは、本書のことを指してのことです。

著者のデイヴ・アスプリーは、シリコンバレーのテクノロジー起業家であり、バイオハッカーでもあります。ブレットプルーフ360の創業者兼CEOで、主宰するポッドキャスト「ブレットプルーフ・ラジオ」は、ウェブ界の最高権威であるウェビー賞を受賞しています。

著者が有名になったのは、シリコンバレーで成功したものの肥満と体調不良に陥った自分の体を、ITスキルを駆使してバイオハックし、IQを上げるとともに50キロの減量に成功したアプローチを発表したためです。

彼のバイオハックは常人のダイエットとはスケールがまったく違いました。世界トップクラスの脳科学者、生化学者、栄養士などの膨大な研究を総合し、自己実験に100万ドルを投じたのです。そのためニューヨーク・タイムズ、フォーブス、CNN、LAタイムズなどのメディアで話題になりました。

本書の前には『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』(栗原百代訳・ダイヤモンド社)を刊行していますが、これは世界的ベストセラーになっています。本書はそれに続く人生のアップデート法です。

それでは、本書の内容を概観するために、目次を紹介します。
・はじめに――「人類史上最強の技」を全部伝授する
・PART1 SMARTER もっと賢く
第1章 自己――「新しい自分」を脳にしみこませる
第2章 脳――習慣とトレーニングで強化する
第3章 恐怖――邪魔な原始的本能をリセットする
第4章 休息――自分を「アップグレード」する時間をつくる
・PART2 FASTER もっと速く
第5章 快楽――意識の変容に至る究極の秘宝
第6章 睡眠――努力しなくてもできるライフハック
第7章 運動――「間違いだらけの運動」をいますぐやめよ
第8章 食事――身体が変わる「おばあちゃんの最強の教え」
第9章 テクノロジー――とうに「未来」は到来していた!
・PART3 HAPPIER もっと幸せに
第10章 幸福――お金で買えないなら、何で買える?
第11章 人間関係――「だれとつながるか」で人生の多くが決まる
第12章 瞑想――非常識思考の街の「新しい常識」
第13章 自然――大人も「泥遊び」をすべき科学的理由
第14章 感謝――この章だけ読んでも効くほど強力なハック
・おわりに
・参考文献
・原注

本書の価値は、「はじめに」を読めば想像がつきます。著者はここで「『人類最強の技』を全部伝授する」と大見得を切っています。「人類最強の技」と言い切れる理由は、著者が「あらゆる手段で自分をアップグレードしたい」という個人的な願いをかなえるために、19年の歳月と数百万ドルの費用を投入してきたことにあります。

著者は老化防止クリニックから神経科学者の研究室へ、チベットの人里離れた修道院からシリコンバレーへと、世界中を駆け巡り、心身の状態をより良くするために使えるシンプルで効果的な方法を探し続けました。

助言を求めた相手は、型破りな科学者、ワールドクラスのアスリート、生化学者、革新的な医師、シャーマン(呪術師)、オリンピックチームの栄養士、瞑想の達人、アメリカ海軍特殊部隊(ネイビーシールズ)、自己啓発の指導者など多岐に渡ります。

それら専門家の知見から学び取ったことを、著者はみずからの研究と自分の体を張った徹底的な実験で実証していきました。そしてその結果、何十年も悩まされていた心身の不調から解放されました。

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余分な体重を50キロ落とすことができた。たちこめていた頭の中の霧が晴れ、IQも上がった。40歳の坂を越えたというのに、人生ではじめて腹筋が割れた。集中力が高まった。自分を萎縮させて安全な場所に縛りつけていた、恐れや恥や怒りを捨て去ることもできた。若返ることもできた。ゼロから立ち上げた会社を数百万ドル規模にまで成長させ、そのかたわらニューヨークタイムズのベストセラーリストに入る本を2冊書き、愛情深くやさしい夫、そして2児の父親にもなった。しかもこれらすべてを、太っていたときより少ない運動、短い睡眠時間、たっぷりバターを使った食事で実現したのだ。
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著者はポッドキャスト「ブレットプルーフ・ラジオ」で、社会に影響を与えた500人近い人にインタビューし、彼らが成し遂げた大事業を可能にした秘訣を尋ねました。そして得た回答を統計的に分析した結果、彼らのアドバイスは次の3種類のどれかに当てはまりました。

●もっと賢くなる方法
●もっと速くなる方法
●もっと幸せになる方法

つまり、500名近い成功者たちの成功の秘訣は、自分の能力を向上させることに取り組んだことにあったわけです。そして「成功のために大事なもの」として「お金」「権力」「身体的な魅力」を挙げた人は1人もいませんでした。

本書は上記の3つの方法を「PART」として分け、その下に「章」を置いています。そして各章にいくつかの「HACK」を見出しとして並べています。本書には合計42のハックがあります。

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ゲームチェンジャーたちのアドバイスを使いやすいものにするために、本書では、彼らのテクニックやツールの基礎にある重要な考えを抽出して42の「ハック」として紹介する。そしてその各々に「やるべきこと」として、身につけたい習慣や実行するとよいプラクティスを挙げた。
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PART1の「もっと賢く」では、脳のパワーを最大化させて最大限のパフォーマンスを得る方法を紹介しています。脳が最高のパフォーマンスに達することができれば、ほかのすべてが簡単にできるようになるからです。

PART2の「もっと速く」では、身体活動の効率を向上させ、やるべきことを実行するための精神的・身体的エネルギーを獲得するコツが紹介されます。身体的アウトプットを最大化することで、思いもよらないことができるようになるためです。

PART3の「もっと幸せに」では、意識を目覚めさせ、集中力を高め、高いレベルの幸福感を得る方法を紹介しています。そのための方法として、瞑想や呼吸法が挙げられています。

それでは、いくつかのハックを見ていきましょう。

最初のハックは、「『脳エネルギー』を本質に集中させる」です。私たちは毎日脳を使ってたくさんの精神活動をしていますが、当然のことながら1日は24時間と有限で、脳が持つエネルギーにも限界があります。

著者はここで読者に問いかけます。
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1日は24時間だ。この時間を「心の底から気にかけている大切なこと」に使うのか、「どうでもいい取るに足りないこと」に使うのか、あるいは「苦手なことを克服して自分の価値を証明する」ために使うのか、どれでも選ぶことができる。
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そして有限な時間と脳のエネルギーを、自分にとって最も大事なことに使うための技術をマスターしようと呼びかけています。

著者が自己改善の研究を始めたきっかけは、ペンシルバニア大学時代の恩師、スチュワート・フリードマン教授から「きみのエネルギーの使い方は、どれも間違っている」と指摘されたことでした。

フリードマン教授は成功者の生活を調査して、「成功するためには『自分にとって何が重要かを自覚し、それに誠実に向き合う』ことが大切だ」というエッセンスを抽出しました。

そして自分の価値観を明確にするために、「今から20年後」について考えることを勧めています。つまり、現在の私たちであれば、「2041年の自分」を考えるわけです。

2041年の自分は誰と一緒にいて、何をしていて、どんな影響力を持っているか。それをすべて書き出してみると、達成可能な未来像がイメージできます。それが明確であればあるほど、間違って無関係なことに時間とエネルギーを割いてしまうことが避けられます。

それを受けて、著者は「意思決定に使える脳エネルギーには限界がある」と言います。朝食に何を食べるか、散歩にどこに行くか、友人の投稿に「いいね!」をつけるべきか、ニュースを読むかメールを見るか、お風呂が先か食事が先か、どの色のシャツを着るべきか、そんな意思決定が、大切なことの判断に使うエネルギーをむしばんでいると言うのです。

その弊害から逃れるために、著者はコーチ・ミーという会社のCEOであるトニー・スタッブルバインに教えを請いました。トニーは「意思決定を予算管理するべきだ」と言いました。

どういうことかというと、毎日一定数の意思決定しか行わないと決めて、その「予算」の枠内で1日を過ごすのです。仕事で重要なポジションにいる人ほど、意思決定のためのエネルギーは大事にしなければなりません。だから、朝のうちに「やることリスト」を書き出し、優先順位をつける習慣が必要になります。

大切な判断を優先するようになると、どうでもいいことにはエネルギーを使わなくなります。イエスでもノーでも大差ないことに対しては、自動的に「ノー」と答える習慣をつけると便利です。

ハックの6番目には「言葉ではなく『イメージ』で記憶する」という項目が紹介されています。言葉でものごとを記憶しようとすると、脳の動きが鈍り、エネルギーを浪費してしまうというのです。

ただし、イメージで記憶するようになるためには、訓練が必要です。たとえば新聞を読むとき、記事の内容を映画のように視覚化する練習が効果的だといいます。

著者はチベットでこの方法を教わりました。「蓮華座に着いたブッダを思い浮かべなさい。蓮華座には階段が3段ある。各段に花びらが6枚の花が3つ描かれている」といったように、イメージを丹念に作り込む視覚化の訓練をしたのです。

この視覚化が身につくと、言葉の限界を超えた思考ができるようになります。それにより、自分の可能性が無限に拡がっていくわけです。

42のハックのうち、2つしか紹介できませんでしたが、あとは実際に本書を読んで体感してください。


 

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