オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

100年無敵の勉強法
何のために学ぶのか?

鎌田浩毅・著 筑摩書房・刊

1,100円(キンドル版・税込)/1,210円(紙版・税込)

「ちくまQブックス」は「10代のノンフィクション読書を応援します!」というシリーズコンセプトで刊行をスタートさせた新シリーズです。本書を含めた10タイトルが第1期として発売され、第2期の10点が本年6月から刊行開始となる予定です。

Qブックスの「Q」とは、読者の「なぜ」=Questionに答え、読むことで「探求する」=Questの大切さを伝えるという目的から名づけられました。

若い読者に小説でない本にもチャレンジしてもらうために、読みやすさに工夫を凝らして作られているのが特徴です。
・本文2色刷り
・イラスト多数
・96~128ページ
という造本は、短いから読み通すことが容易で、図版・イラストが多数入っていることが理解が深まり、教育漢字外はすべてルビ(ふりがな)つきになっています。

そして本書ですが、「京大人気No.1教授」の声が高い著者による、「一度知ったらもう戻れない、ワクワクする勉強の秘伝を大公開!」というものです。

著者は1955年東京生まれ。東大理学部地学科を卒業後、通産省、京都大学大学院教授を経て、現在は京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・同名誉教授です。専門は火山学、地球科学、科学教育で、『新版 一生モノの勉強法』『座右の古典』(いずれもちくま文庫)などの著書があります。

表紙カバーの帯部分には「誰にもじゃまされない人生をつかむために」というキャッチコピーが付けられています。この意味について、著者は「はじめに」でこう語っています。

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勉強の本当の目的は、「誰にもじゃまされない人生」を自分の中に創り出すことです。そして自分には「誰にもじゃまされない人生」を生きる権利があると深く悟ることです。
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著者は「勉強には『活きた勉強』と『死んだ勉強』がある」と言います。「活きた勉強」は楽しくて、やっているうちに生きることが明るくなります。それに対して「死んだ勉強」はつまらないし、勉強することがキライになっていきます。

勉強について辛く苦しい記憶しかない人は、今まで「死んだ勉強」しかしてこなかった人だということです。「活きた勉強」をした経験がある人は、勉強しているとワクワクして勉強がおもしろくなったことがあるはずだというのです。

「活きた勉強」をしている人は、周りの人たちからは勉強しているようには見えません。まるで楽しいことに熱中しているようだからです。いくらやっても飽きないし、他人の目も気になりません。

そして著者は読者にこう語りかけます。
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とにかく、今までしてきた勉強には「活きた勉強」と「死んだ勉強」があるらしい、ということだけ先に知ってください。あとはこの本を気楽に読み飛ばしてみてください。
でも、どこかに「ハッ!」となって気づくことがあるかもしれません。
その時こそ、自分にとって「活きた勉強」が始まるのです。
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著者は勉強することのメリットを「今まで見えなかったことが見えてくる」とひと言でまとめています。別に見えないままでも人生は送れますが、勉強して人生の見晴らしが良くなった人は、勉強しない人よりも遠くの景色を見ることができます。その結果、選択の幅が広がります。

著者は京大生を教える立場になってから、彼らの多くが楽しく勉強をしていないと知って愕然としました。彼らは「死んだ勉強」を我慢して続けて京大にやっと入ったので、「活きた勉強」を知らなかったのです。

そこで著者は京大生に対して「勉強のカウンセリング」を始めました。講義の中の質疑応答で次のようなことを伝えました。
・勉強って本当はおもしろい
・世界を知ることはけっこう楽しい
・勉強は何をやっても良い
・勉強はいつ始めても遅すぎることはない

こうしたことを大学教員の24年間で続けた結果、著者とつきあった京大生はみるみる変わっていきました。彼らの中から「勉強コンプレックス」が取り去られ、「活きた勉強」のおもしろさを知ったからです。

著者は自分の講義で出席をいっさい取りませんでした。出席を取ると講義を無理強いすることになり、それは「死んだ勉強」だからです。

出席を取らなければ、どうしても講義を聞きたい人しか出てきません。その結果、著者の講義には年配のオジサンやオバサンなど、明らかに京大生ではない聴講者がたくさんいました。

ある聴講者は、他大学の学生でしたが、片道2時間半かけて毎週欠かさず出席していました。最終レポートは文句なく100点満点の出来でしたが、京大生ではなかったために成績も単位もあげられませんでした。

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でもその若者は、きっと充実して学んでくれたのだと思います。だから、単位がもらえなくても満足してはるばる通ってきたのです。(中略)彼にとって毎週の講義は「活きた勉強」だったのです。そして、この本でもこうした勉強をみなさんに目指してほしいのです。
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本書のタイトルにある「100年無敵」について、著者はこう言っています。
「人生百年時代と言われる今こそ、『百年無敵』の勉強法を身につけてほしいと思います」

それでは、本書の目次を紹介しましょう。
・はじめに 私たちは、なぜ勉強をするのか?
・第1章 つらくて苦しい受験が、なぜあるのか?
・第2章 「活きた勉強」とはどういうものか?
・第3章 秘伝公開!カマタ式勉強法の「戦略」と「戦術」
・第4章 受験を突破した「後」の勉強法
・おわりに 地震も火山も多い危険な日本に、なぜ住んでいるのか?
・次に読んでほしい本
・さくいん

第1章では、「死んだ勉強」の代表格に思える受験勉強について、その効用を述べています。冒頭でいきなり著者はこう言います。
「以外にも受験は人生の役に立つ」と。なぜなら、「受験勉強は一生にわたって役立つ大切な能力を身につけられる」からだそうです。

著者は大学受験で獲得できる能力を次の2つに分類しています。「コンテンツ学力」と「ノウハウ学力」です。

コンテンツ(内容)学力とは、素英単語や歴史年代や物理法則など、覚えた知識がそのまま使える学力のことです。ノウハウ(方法)学力とは、新しい知識を獲得するなど、限られた時間で成果を挙げる能力です。この2つの能力を身につけるには、受験は絶好の機会であると著者は言います。

そして受験勉強で詰め込んだ知識を出発地点として、自分の世界が広がっていきます。大人になってさまざまなものをおもしろがれる能力=好奇心は、幅広い知識から生まれるからです。

さらに、大学受験は「自分探し」に役立つと著者は指摘しています。複数の教科を勉強することで、思いもしなかったことに興味が湧いてくるのはよくあることだからです。

ただし、受験勉強をわけもわからずにするのと、勉強の意味をきちんと理解して取り組むのでは、結果に雲泥の差が出るといいます。つまり、受験勉強においても「活きた勉強」として取り組む必要があるということです。

そして受験勉強を楽しくラクにする、自分に合った勉強法が必ずあると著者は断言しています。時間の使い方にこだわり、自分が一番効率よく勉強できる時間帯や時間の長さ、目標までの時間の使い方などを、試行錯誤しながら探っていきます。

第2章では「活きた勉強」について、より詳しく解説しています。ここで著者はひとつの重要な示唆をしています。それは、迷った時は「好きなことより、できること」を選べということです。

そして次に「勉強すべきでないことをハッキリさせる」と明言しています。自分が得意でない領域に不必要な目標を立て、無駄な努力を延々とするのは時間のムダだというのです。

「活きた勉強」の考え方で、著者は「本は最後まで読む必要はない」と言っています。読むことそのものは目的ではないからです。本を読むのは学びを得るためで、本を読み切ることに縛られるのは手段と目的の混同だということです。

第3章では、著者みずからの勉強についての「戦略」と「戦術」が語られます。

たとえば「棚上げ法」は何かを調べていてわからないことに出会ったとき、そこで時間をかけずに一時的に棚上げして先に進む方法です。たとえて言えば、未知の数を変数xとして方程式を立てる代数は、棚上げ法そのものの考え方です。

英文読解では、意味がわからない単語を調べずに、飛ばして読むのが棚上げ法です。いちいち辞書を引かなくても自然に意味がわかる場合もあるので、時間と手間を大幅に省くことができます。

もうひとつ、「不完全法」というものがあります。これは「完璧を目指さないで期限を優先する」というやり方です。完璧を求めると不安の底なし沼にはまる危険がありますが、不完全法をマスターすれば、完璧を求めない勇気が手に入ります。

さらに著者は「1時間法」を提唱しています。人間の脳が1日に創造的に働くことができるのは、せいぜい1時間程度だということから、その大切な1時間を何にあてるのかという優先順位をつけるものです。

著者は目の前の仕事を次のように分類しています。
・ただちにしなければならない仕事
・後でしてもよいが重要な仕事
・暇なときにゆっくり楽しんですればよい仕事
この分類が自然にできれば、クリエイティブな1時間を有効に使えるということです。

以下、本書には若い人はもちろんのこと、大人でも十分に活用できる「脳の使い方」がたっぷりと紹介されています。Qブックスならではの読みやすさもあって、まったく肩の凝らない本ですので、ぜひ手に取ってみてください。


 

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