オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

消えた48か国で学ぶ世界史
世界滅亡国家史

ギデオン・デフォー・著 杉田真・訳 サンマーク出版・刊

1,488円(キンドル版・税込)/1,650円(紙版・税込)

まずはアマゾンに出版社が掲載している紹介文をお目にかけましょう。ちょっと長い引用ですが、これで本書の特徴が簡単につかめると思います。

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産経新聞書評(4月16日)で紹介!
「覇権」とは? 「国境」とは? 「国家」とは?
消えた48か国で学ぶ新視点の世界史!
とんでもなく深い歴史教養が身につく!

ウクライナ情勢、ロシア侵攻……
世界地図が変わろうとするいまこそ学ぶべき世界史

★オックスフォード大出身の稀才による超・世界史通になれる世界史講義!
★Amazon.comいきなり1位!(New Release in Geography) 世界話題の歴史書、日本上陸!
★「消えた48か国」で世界を読み解く教科書では学べない超ディープなヒストリー
★東京大学名誉教授・本村凌二氏「国家という生き物は、弱小国家であるほど覇権の内実が見える。世界史の裏面があざやかに浮かび上がってくる」

国家は思わぬ形で生まれ、滅ぶ。
本書は、滅んだ国で世界を読み解く人類史上、類をみないプロジェクト。
知られざる「まさか」な史実の連続に知的興奮続く、夢中で読める稀有な歴史書だ。

・「国境」引き間違えで誕生…コスパイア共和国
・「兵士」50人で不法建国…ソノラ共和国
・勘違いで「素人」に領土割譲…サラワク王国
・「暇」すぎて滅亡…エルバ公国
・謎の「住民投票」でロシア編入…クリミア共和国
・「モンゴル」なめすぎて滅亡…ホラズム etc.

様々な背景を抱え消えた国々の知られざる史実が織りなす狂騒曲。
1つの国家がどのように誕生し、どのように滅びるのか盛衰の様子がわかるとともに、現代の我々に続く人類の「まさか」の足跡が感じられる壮大で信じがたく、時に普遍の人間心理が垣間見える教科書に載らない歴史の数々。

永遠の繁栄は存在しない。
今こそ、国家の終焉から私たちは学ぶとき――。
読み終わった瞬間、現代世界が違って見える。

【学校では学べない「滅亡国家史」】
◎人類の発明品「国家」の始まりと終わり、根底構造がリアルにわかる!
「国が生まれる」とは?
「国がある」とは?
「国が消える」とは?

◎ストーリー調で面白い。
歴史が苦手でも一気に世界史通に!
滅亡国家史を学べる稀有な世界史本!

◎地図×ストーリーで記憶に残る! 知識が増える!
教科書外の世界史試験対策にも◎
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著者のギデオン・デフォー(Gideon Defoe)は、作家でアニメ脚本家。『ザ・パイレーツ』という自身の小説をアニメ化するにあたって、脚本も書いています。そのアニメ映画は2012年に公開され、第85回アカデミー賞長編アニメ部門にノミネートされました。

もともとオックスフォード大学で考古学と人類学を専攻した人物で、『How Animals Have Sex』『Elite Dangerous Docking is Difficult』などの著書もあります。

はじめにお断りしておきますが、本書は大学の講義の教科書のような生真面目な本ではありません。少し斜に構えた、かといってふざけすぎない程度の、娯楽本と教養書の中間に位置するような本です。著者自身は「まえがき」で次のように言っています。

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国家は滅亡する。
あるときはリーダーの殺害によって、またあるときは事故によって。そもそも存在するかどうか疑わしいものもある。戦争や革命でぱっと現れたかと思うと、いつの間にか地図から消えていたものもある。

多くの場合、滅亡の原因は「欲張りすぎた」か「ナポレオンが現れた」かのどちらかだ。
ときには、粛々と国民投票が行われ、国民の意思によってその存在が否定されることもある。

本書は、「地図から消えた国々の追悼記事集」である。
人間の追悼記事では、「功績を強調し、恥ずかしい過去はさらっと流す」のが一般的だ。

しかし、滅亡国家についての本では、その作法を忠実に守ることはできない。恥ずべき過去が多すぎて、無視できないからだ。
(中略)本書は、追悼記事としてはほんの少し不躾な内容となっている。
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本書には、消滅した48の国の物語が収録されています。巻末には付録的に「滅亡国家の国旗」と「滅亡国家の国歌」が一部だけ掲載されています。

通常ですと、ここで目次を紹介するのですが、今回は目次ではなく、収録された48の国をリストアップしてお目にかけましょう。

01 サラワク王国
02 バイエルン王国
03 リフレッシュメント諸島
04 コルシカ王国
05 マスコギー国
06 ソノラ共和国
07 アラウカニア・パタゴニア王国
08 太平天国
09 ラパ・ヌイ(イースター島)
10 トリニダード公国
11 フィウメ・エンデバー
12 セダン王国
13 コスパイア共和国
14 ニューカレドニア
15 エルバ公国
16 フランスヴィル
17 ベメラナ共和国
18 ナイッサール兵士・要塞建設労働者ソビエト共和国
19 中立モレネ
20 ペルロヤ共和国
21 パルマーレスのキロンボ
22 ボトルネック自由国
23 タンジェ国際管理地域
24 オタワ市民病院産科病棟
25 グスト共和国
26 ポヤイス
27 ラフ・アンド・レディ大共和国
28 リバタリア
29 シッキム王国
30 アクスム王国
31 ダホメー王国
32 ヴェネツィア共和国
33 新羅黄金王国
34 ホラズム
35 台湾民主国
36 西フロリダ共和国
37 満州国
38 リオグランデンセ共和国
39 アフリカ・メリーランド
40 テキサス共和国
41 コンゴ自由国
42 ルテニア(カルパト・ウクライナ)
43 タンヌ・トゥヴァ人民共和国
44 サロ共和国
45 ドイツ民主共和国(東ドイツ)
46 ボプタツワナ
47 クリミア共和国
48 ユーゴスラビア

名前を聞いたことがあるものも、初見のものもあると思います。ここでは、みなさんに馴染みのある国名からいくつか選んでご紹介しましょう。

まずバイエルン王国ですが、ここは「ノイシュヴァンシュタイン城」を抜きにしては語れません。後に「狂王」と呼ばれたルートヴィヒ2世は子供の頃から中世の騎士物語に憧れ、即位して王となるとワーグナーのパトロンになり、ノイシュヴァンシュタイン城を建設しました。

ディズニーランド・リゾートにある「眠れる森の美女の城」のモデルとなったこの城は、19世紀になって建設されたもので、基礎はコンクリートですし、建設途中の写真も残っています。ちなみに東京ディズニーランドの「シンデレラ城」は、フランスの複数の城がモデルになっています。

しかもノイシュヴァンシュタイン城は中世の城とは違い、要塞でも宮殿でもありませんでした。ただただルートヴィヒ2世のロマンチック趣味を満足するためだけに建てられたものでした。彼は自分の死後、この城を破却するように遺言していましたが、残された人々はそれを守らず、おかげでバイエルン州最大の観光スポットとして現在も多くの観光客が訪れています。

本書ではバイエルン王国滅亡の理由を「次から次へとトップに変わり者が君臨したため」としています。女好きのルートヴィヒ1世、超変人のルートヴィヒ2世によって国が傾いたためです。

ルートヴィヒ2世が「謎の死」を遂げると弟のオットー1世が王位に就きますが、この人は完全に精神を病んでいたため、叔父が摂政を務めました。しかしそれから数年で、最盛期650万人の人口を誇ったバイエルン王国は、ドイツ帝国に飲みこまれてしまいます。

太平天国は19世紀、清王朝と闘って独立した労働者国家です。役人を目指していたものの科挙に3度落ちて神経衰弱になった洪秀全が自分を「イエスの弟」であると思い込み、革命を起こしたものです。首都は南京にありました。

こうしてできた太平天国ですが、清の反撃にあって首都が包囲されてしまいました。食糧が尽きてしまった時、洪は人々に「マナを食べればよい」と言いましたが、マナが何であるかは説明しませんでした。そして、自身は腐った雑草を食べて死んでしまいました。

世界最強の海事共和国であったヴェネツィアは、5世紀にフン族などの侵攻を逃れて干潟に住みついた北イタリアの人々が作り上げた国家です。塩田が高潮の被害で水浸しになり、外国から塩を買うようになったことがきっかけで、貿易立国が進みました。

ほかの国々が宗教対立や民族対立に目を向けている間に、ヴェネツィアはむき出しの資本主義でどんどん勢力を拡大していきます。初期の銀行を設立し、ヨーロッパで最初のコーヒーを販売するなどして、地中海の覇権を握るに至ります。

そして1500隻の商船隊が国是である「中立」のもとに世界中を駆け巡りましたが、その中立が最後は仇となりました。ライバル同士であるオーストリアとナポレオンの双方と良好な関係を維持しようとしたため、ナポレオンに侵攻され、オーストリアとフランスに分割されてしまったのです。

かつてメキシコ領であったテキサス州が、一時期は独立国であったことは、日本ではあまり知られていません。メキシコから独立するときの「アラモの戦い」は有名ですが、独立してから10年間、テキサス共和国はアメリカ合衆国に加わることを望みながら、果たせませんでした。その理由は、アメリカ側が拒んでいたからです。

そもそもテキサスが独立したのは、メキシコが奴隷制を廃止したためでした。奴隷制の維持を望む人たちが独立を支援したのです。しかしアメリカは奴隷制度に反対する北部が優勢でしたから、奴隷制度を支持する勢力が新たに加わることを望まなかったわけです。

最後にはテキサス共和国が財政破綻を起こし、テキサスはアメリカ28番目の州として併合されました。とはいうものの、今でも独立を望む人たちが存続しているといわれ、テキサス州旗の一つ星は州の人たちの誇りといわれています。

まだまだいろいろなエピソードがあります。暇つぶしや雑学のネタにもなるので、変わった本が読みたいときにはぜひどうぞ。


 

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