オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

空のふしぎがすべてわかる!すごすぎる天気の図鑑

荒木健太郎・著 KADOKAWA・刊

681円(キンドル版・税込)/1,375円(紙版・税込)

キンドル版は紙版の約半額。これほど差があると、どちらにしようか迷う人は電子のほうを選ぶかもしれませんね。

でも、本書の購入者の中には「両方買う」という人もいるようです。というのは、本書は幼稚園児から高齢者まで、幅広い人が読んで楽しめるように作られているからです。実際、アマゾンのレビューには何冊も購入した人のコメントが載っています。

本書はタイトルの通り、気象にまつわるさまざまな知識をやさしく紹介したものです。雲、雨、雪、虹、台風、竜巻などについて、知識人を自認するような大人でも、必ず「へえー」とうなるような内容が記載されています。

著者は気象庁気象研究所研究官の学術博士。雲研究者という肩書もありますが、あの大ヒット映画『天気の子』の気象監修を務めた人といえば、好奇心がくすぐられるのではないでしょうか。そのほかにもNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』に気象資料を提供しています。

著書には『世界でいちばん素敵な雲の教室』『雲を愛する技術』『雲の中では何が起こっているのか』『天気を知って備える防災雲図鑑』『超図解 最強に面白い!!天気』『気象のきほん』『BLUE MOMENT』などがあります。

本書は「雲」「空」「気象」「天気」の4つの章で構成されています。そして全体で78のトピックが立てられています。小さな子でも読めるように、すべての漢字に振り仮名がふられている、いわゆる「総ルビ」本です。

ではCHAPTER1「すごすぎる雲のはなし」から、トピックを拾っていきましょう。ここには21のトピックが集められています。

トピック01は「『雲が動物に見える現象』にはちゃんと名前がある」というものです。どんな名前かというと「パレイドリア現象」。パレイドリアとはギリシャ語で「間違って見えるもの」という意味です。

ここには「跳ねているウサギ」「虹色の鳥」「顔のような雲」「龍の眼」のように見える雲の写真が掲載されています。ちなみに、雲が人の顔のように見える現象は「シミュラクラ現象(類像現象)」と呼ばれ、いわゆる心霊写真の多くはこれで説明が付くそうです。

トピック06は「雲ができるのは空気が汚れているから!?」です。もしも空気にまったく不純物がなければ、湿度400%にならないと水の粒が発生せず、雲ができません。空気に海から出た塩や動植物、工場の煙などに由来するチリが含まれ、それが芯になって雲の元になる水の粒が生まれるそうです。

トピック07と08は、味噌汁を見ると空の様子がわかるという話です。熱い味噌汁の入った椀を眺めると、味噌が雲のようにふわふわと動いている様子が見えます。これは熱対流という現象で、わた雲と呼ばれる積雲でも同じ現象が起きています。

そして熱い味噌汁の湯気は、雲そのものです。味噌汁の表面付近で湯気が発生し、上昇して消えていく様子は、空で雲が生まれるしくみとまったく同じだと著者は言っています。ここで味噌汁の表面に火の着いた線香を近づけると、面白いことが起きます。

線香の煙で、雲の芯となるチリが増えるため、そこに急激に湯気が立つそうです。同様のことは味噌汁でなくてもコーヒーやお茶でも実験できるそうなので、ちょっとやってみたくなります。

トピックの09から12までは、夏の風物詩である積乱雲(入道雲)の話です。積乱雲の高さが15km以上になることや、積乱雲の中には25mプール1万杯くらいの水が含まれているという話を読むと、自然のスケールの大きさが再確認できると思います。

トピック17は飛行機雲です。飛行機雲の本数は飛行機のエンジンの数で決まるということは何となく知っている人も多いと思いますが、飛行機雲がはっきりできるのは西から天気が下り坂で、高い空が湿っている場合が多いというのは、知らない人もいるのではないでしょうか。

「雲に乗りたい」というのは、子供なら一度は思ったことでしょうが、地上にいながら雲に触ることは可能です。霧が出た時に外を歩き回ればいいのです。というのは、霧は雲とまったく同じもので、霧とは地表面にくっついた雲のことだからです。

「地震雲」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、著者に言わせれば、「地震雲などはない」ということです。現在の科学では地下の状態が雲に何らかの影響を及ぼすかどうかはわかっていません。仮にあったとしても、それを区別して地震予知に使うことは不可能だそうです。

CHAPTER2の「すごすぎる空のはなし」では、空のいろいろなしくみを解説し、感動的な風景をより深く味わえるようにしてくれます。

トピック22は、「虹は半円ではなく本当は丸い」というお話です。虹は雨の粒の中で光が屈折して発生しますが、本当は円形になるものが地平線で切り取られるために円弧として見えるわけです。普通に見える虹は主虹と呼び、光が強い時に主虹の外側にもうひとつ発生する虹は副虹と呼びます。

トピック25は、7色ではない虹の話です。そのひとつは「赤虹」で、日の出直後や日の入り直前に見られる赤一色の虹をそう呼びます。もうひとつは「白虹」で、雨粒よりも小さな雲や霧の粒で虹ができる時、太陽の光が回折して白く見えます。白虹は飛行機が雲に入る時などによく見られます。

トピック30は花粉が作る虹の話です。これは「花粉光環」と呼ばれ、雨上がりで晴れた風が強い日などに見られるそうです。スギ花粉が雲の粒と同じくらいの大きさと形をしているためにできるといいますが、これが見えたら花粉症の人は要注意です。

トピック32は、空の色が青い理由を説明しています。それは紫や青などの波長の短い光ほど、いろいろな方向に大きく散らばりやすい性質「レイリー散乱」があるためです。

高い空ほど青が濃く、低い空は白っぽくなる理由は、高空は水蒸気やチリが少ししかなく、青以外の光があまり散乱されないからです。低い空は水蒸気やチリがすべての光を散乱させるので、白っぽく見えます。

では、朝焼けや夕焼けの空が赤くなる理由はというと、太陽からの光が斜めに大気の層を通過するため、一番散乱されにくい赤い光だけが地上に届くからです。ちなみに、信号機の「止まれ」に赤が使われている理由は、赤色光が一番散乱されにくいからです。

トピック35は「マジックアワー」の解説です。日の手前と日の入り後のマジックアワーは、トワイライト、ゴールデンアワーとも呼ばれます。この時、太陽と反対側の空にはビーナスベルトや地球影が現れ、空全体が魔法のような風景になります。

マジックアワーの前後に世界が青一色になる瞬間は「ブルーモーメント」あるいは「ブルーアワー」と呼ばれます。空も地上も群青に包まれるこの瞬間は、高い空で散乱した青い光が、夜の暗い色と混ざることで生じます。

トピック39は、「天使の梯子」と呼ばれる情景について解説しています。「天使の梯子」とは、雲のすきまから地上に向かって光の筋が差すもので、まるで天使が降りてきそうな雰囲気から、そう呼ばれます。別名は「薄明光線」あるいは「ヤコブの梯子」「レンブラント光線」です。

トピック42は、空ではなく地上の現象である「逃げ水」を解説しています。逃げ水は蜃気楼の一種で、道路の上の景色が下向きに反転している像が、水たまりのように見えているわけです。

CHAPTER3は「すごすぎる気象のはなし」です。ここでは大気の現象や地球の温暖化についてのトピックが集められています。

トピック43は、「雨のつぶの頭はとがっていない」です。雨滴のイラストはたいてい上部がとがって描かれていますが、実際は空気抵抗によってつぶれた饅頭のような形になっているということです。

トピック44は、空から降ってくる雨や氷の種類についてです。じつに121種類もあり、それぞれの形や名前を見ているだけでも楽しめます。中谷宇吉郎博士が言った「雪は天から送られた手紙である」という言葉の意味が、ここに示されています。

トピック48は、最近よく耳にする「線状降水帯」について。これは積乱雲が動く方向の後ろ側で新たな積乱雲が次々と発生することで生まれます。線状降水帯ができるしくみを「積乱雲のバックビルディング」と呼びますが、この予測はまだむずかしいそうです。

トピック62では「地球温暖化」を論じています。「地球は温暖化などしていない」と主張する意見をときどき見かけますが、著者はそれをばっさり切り捨てています。「観測事実から地球温暖化は着実に進んでいる」のだそうです。

CHAPTER4は「すごすぎる天気のはなし」です。天気予報で使われる言葉、暮らしの中で見聞きする天気ワードを取り上げています。

トピック65では「晴れ」の定義について解説しています。雲の量が空全体の8割以下なら「晴れ」で、1割以下を「快晴」と呼びます。

本書の左ページ欄外には「豆知識」があり、そのページのトピックを別な角度から補完しています。こちらもあわせて読むと、さらに気象に対する興味が深まるでしょう。

知っていると思っていたら、まだまだ知らないことが多かった。そんな気分にさせてくれる楽しい本です。


 

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