オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

言いたいことを、人を動かす“ことば”に変える すごい言い換え700語

話題の達人倶楽部・著 青春出版社・刊

871円(キンドル版・税込)/1,071円(紙版・税込)

「言葉選びの上手な人」がいます。そういう人の言い回しを聞いていると、「なるほどなあ」「うまいなあ」と感心してしまいますが、真似しようと思っても、どこからコツをつかんだらいいかがわかりません。

そもそも、その場に合った適切な言い回しをするためには、日ごろから語彙力を高め、たくさんの言葉を頭の引き出しに蓄えておく必要があります。しかし、それには多種多様の本を読み、さまざまな教養を身につけなければなりません。忙しい現代人に、そんな暇はなさそうですね。

そういうニーズを狙って出版されたのが本書です。著者名の「話題の達人倶楽部」というのは正体不明ですが、こういう名前は大学の先生とかではなく、ライター集団だったりすることが多いものです。

本書の「著者紹介」を見ても、「カジュアルな話題から高尚なジャンルまで、あらゆる分野の情報を網羅し、常に話題の中心を追いかける柔軟思考型プロ集団。彼らの提供する話題のクオリティの高さは、業界内外で注目のマトである」と書かれていて、こちらの想像が当たっていそうです。

本書の「はじめに」には、こうあります。
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ほぼすべての人が一度は失敗するのが、「おわかりでしょうか」というフレーズ。この質問は一見、敬語の“顔”をしながらも、相手の知能の程度を問うようなニュアンスを含んでいます。そのため、目上に対して使うと、ムっとされがちなのです。では、どう言い換えればいいのか? たとえば、相手がお客なら、「ご不明な点はございますか」に言い換えると、失礼のない敬語になります。
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そもそも、この世の中、うまく暮らしていけるかどうかは、「モノの言い方」がかなりの部分、カギを握っています。人から好かれ、信頼され、話しやすいといわれるのも、モノの言い方次第なら、人から冷たい、苦手、話しにくいといわれるのも、おおむねはモノの言い方が原因です。
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そこで、本書には、日常生活と仕事で使える大人の言い換え例を多数集めました。本書で大人の日本語に言い換える技術を身につければ、人間関係はよくなり、仕事は円滑に進み、ひいてはあなたの人生を大きく変えていくことでしょう。
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それでは、本書の目次を紹介しましょう。
・特集1 他人をさりげなく誘導するには“ナッジ”が効く
相手の利益になるように話すのがコツ
「損しては大変」と思えば、人は動く
こんな「お願い」「提案」なら、相手は前向きに受け止める
質問にすることで、さりげなく誘導できる

・1 言いにくいことを言うには“技術”がいる
いつでもダメ出しは難しい
「文句」をいうのは気が引けるけど…
語彙力こそが“言い換え力”のカギ〈ダメ出し・抗議・文句編〉

・2 大人なら、関係を壊さずに「断る」ことができる
人間関係は、上手に断れるかどうかがカギを握る
語彙力こそが“言い換え力”のカギ〈断る編〉

・3 いつもの言い方を、大人っぽい言い方に一発変換しよう
相手を“くすぐる”言い回しができますか
語彙力こそが“言い換え力”のカギ〈大人の日本語編〉

・特集2 言葉のプロに学ぶうまい言い換え
商品のよさが、相手の記憶に映像として残る伝え方
手アカのついた日本語は、思い切って言い換えよう
マイナスをプラスに変換する
説得力は、「数字」に宿る
見せ方ひとつで、数字は大きくも小さくもなる
「お買い得」であることを、お客さんに伝えるには?
「売れ筋」であることを、お客さんに伝えるには?

・4 どういう言葉で励ますと、相手の心に届くのか
相手の背中をそっと押してみる
語彙力こそが“言い換え力”のカギ〈励ます・ねぎらう編〉

・5 うわついた言葉を、とっておきのほめ言葉に言い換える
こういわれたら、誰でもうれしくなる
語彙力こそが“言い換え力”のカギ〈ほめる編〉

・6 謝る、感謝する、クレーム対応……これができたら一人前
正しい謝り方を知っていますか
正しい感謝の伝え方を知っていますか
正しいクレーム対応のコツを知っていますか
語彙力こそが“言い換え力”のカギ〈お詫び・感謝・クレーム対応編〉

・特集3 すべての会話は「前置き」からはじまる
「交渉する」なら、まずはこの前置き
「謙遜する」ための定番の前置き
雑談から「本題に切り替える」ための前置き
「弁解する」ときの上手な前置き
好感度を下げずに「お願いする」ときの前置き
「質問する」ときには、この前置き
スマートに「NO!という」ための前置き
うまく「断る」ための前置き

・7 大事なときは、パワーフレーズでお願いする
一流社会人は、「お願い」の仕方にあらわれる
語彙力こそが“言い換え力”のカギ〈依頼・催促編〉

・8 毎日の日本語を、気持ちの良い言葉に変える
大人ならこういう日本語を使ってみたい
おもてなしの日本語を持っていますか
語彙力こそが“言い換え力”のカギ〈あいさつ・雑談・飲み会編〉

・9 本当の「社交辞令」を知っていますか
絶対に忘れてはいけない「社交辞令」のキホン
語彙力こそが“言い換え力”のカギ〈社交辞令編〉

・10 仕事の人間関係で欠かせない言葉のひと工夫とは?
仕事ができる人は、その時、こう言い換える
いまどき、社内で使ってはいけない日本語
語彙力こそが“言い換え力”のカギ〈仕事の人間関係編〉

それでは順を追って本書を見ていくことにしましょう。まず「特集1」の「他人をさりげなく誘導するには“ナッジ”が効く」ですが、ここに出てくる「ナッジ」とは何でしょうか。

ナッジとは行動経済学上の概念で、ちょっとした工夫で人の行動を促す手法のことをいいます。もともとは「肘でちょんと押す」という意味の言葉です。

オランダの空港で、男子用トイレの小便器に「ハエ」の絵を描いたところ、清掃費が80%も減ったという話があります。利用者が半ば無意識にハエに狙いを定めて用を足したため、トイレの床が汚れなくなったためです。この「ハエ」がナッジです。

ナッジの効いた言い方は、次の例で明らかです。
「奥へお詰めください」
「奥のほうがすいていますので、奥へお進みください」
後者がナッジの効いた言い方です。

ナッジを効かせるには、相手の利益になるように話すのがコツです。
「こちらの道を通ってください」
「こちらの道のほうが早く着きますので通ってください」
後者は相手の利益を匂わせて誘導しています。

「5分ほど、お待ちいただけますか?」
ではなく、
「茹でたてをご用意しますので、5分ほど、お待ちいただけますか」
とするわけです。これは実際にある立ち食いそばチェーンで使われている言い回しだそうです。

その他、いくつかの例が掲載されています。
×「お墓参りに行きなさい」
○「ご先祖のお墓は、いちばんのパワースポットですよ」
×「もうすこし値下げしてくれませんか?」
○「長いおつきあいになると思うので、もうすこし値下げしてくれませんか?」

別の方法として、相手に「損しては大変」と思わせる言い方もあります。
×「ここにクルマを停めないでください」
○「このあたり、いたずらが多いんですよ。大丈夫でしたか?」
×「芝生に入らないでください」
○「芝生に入ると、農薬が服につくかもしれません」
×「私有地ですので、入らないでください」
○「近くでクマが目撃されているので、入らないでください」

「1」のダメ出しでは、こんな例が載っています。
×「出来が悪いですね」
○「もったいない!」
×「使えませんね」
○「悪くはないのですが」
×「ここがダメですね」
○「ここさえ直せば、よくなると思います」
×「いまいち」
○「欲をいえば」
×「ここを直してください」
○「この点さえ直せば、あとは完璧です」
×「まだまだですね」
○「まだ考える余地があると思うのですが」

続けて「納得できない」ときの言い回し例があります。
×「納得できませんね」
○「首を傾げざるをえません」
×「納得がいきませんね」
○「理解いたしかねます」
×「論外ですね」
○「お話としては伺っておきます」
×「現実は、そう甘くはないと思います」
○「大筋はそうかもしれませんが」
×「これはナシですね」
○「けっこうなお話ではありますが」

本書にいくつも出てくる「語彙力こそが“言い換え力”のカギ」というコーナーでは、便利に使える言い回しがテーマに沿って並んでいます。〈ダメ出し・抗議・文句編〉はこんな感じです。
「どうやら、そういう話ではないみたいですよ」
「これは、まいりましたね」
「いろいろおっしゃる方もいるので」
「あまりにも急なお話で」
「私が聞き間違えたのかな」
「私も間違いそうになったのですが」
「当方も、いろいろとご迷惑をおかけしていると思いますが」

「2」の断るテクニックでは、こんな例があります。
×「お断りします」
○「少々、考えさせてください」
×「無理ですね」
○「今回は見送らせていただきます」
×「できません」
○「ご勘弁いただけないでしょうか」
×「いま、忙しいので」
○「いま、取り込んでいますので」
×「これは無理ですね」
○「今回は申し訳ありませんが」
×「その日は飲み会が入っていまして」
○「あいにく、その日は都合がつかないもので」

「3」の大人度の高い言い方には、こんな例があります。
×「聞いていません」
○「初耳です」
×「ご紹介いただき」
○「ご縁をいただき」
×「なるほど」
○「ためになります」
×「前にも聞きました」
○「何度聞いても、いいお話ですね」
×「参考になりました」
○「ぜひ、そうさせていただきます」
×「今日は時間がないので」
○「今度また、ゆっくり聞かせてください」
×「1週間かかります」
○「最短で、1週間でご用意できます」
×「まだ結論が出ていません」
○「ただいま、詰めております」

「特集2」の「言葉のプロに学ぶうまい言い換え」には、こんな例があります。
×「おいしい」
○「誰も残さない」
×「健康にいい」
○「有機、減農薬、無添加」
×「丹念な手作業」
○「1枚1枚手仕上げ」
×「親切な指導」
○「わかるまで何度でも質問OK」
×「高級」
○「特選、極上」
×「卓越した技術」
○「超絶技巧」
×「大きい」
○「業務用、徳用」
×「新鮮」
○「朝採れ」
×「迅速に対応」
○「30分以内に回答」
×「種類が豊富」
○「○○種類の品ぞろえ」

「4」では「相手の背中を押す言い換え」が示してあります。
×「がんばってね」
○「一緒にがんばりましょう」
×「早くやってください」
○「とりあえず一つやってみましょう」
×「痛いですね」
○「痛いですね、でも傷は浅いですよ」
×「残念でしたね」
○「失敗したから、またうまくなれますね」
×「そんなに悲観的にならないで」
○「あとは上がるだけですよ」

「5」のほめ言葉の例は、こんな感じです。
×「いつも忙しそうで、大変ですね」
○「仕事はできる人に回ってくるものですね」
×「何でもよくご存じですね」
○「何でもご存じなので、かないません」
×「運がいいですね」
○「強運ですね」

以下、まだまだ内容が続きますが、興味のある人はぜひ本書を手許に置いて、時間のあるときにパラパラ眺めるといいでしょう。そうすると、そのうちに相手の気持ちを引き立てる言い回しのコツが見えてきます。

「もっといろいろな言い方を知りたい」という人にうってつけの1冊です。




 

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