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英語の語源大全:365日、頭と心がよろこぶ100の驚き!

清水建二・著 三笠書房・刊

1,672円(キンドル版・税込)/1,760円(紙版・税込)

「英語を切り口にした話のネタ本はないか」

そんな気持ちでアマゾンを探索していたら、この本にぶつかりました。さっそく購入して読んでみると、「英語のお勉強」とはまったく無縁のおもしろさで、あっという間に読み終えてしまいました。

どんな人が著者なのか見てみると、このように書かれていました。
清水建二(しみず・けんじ)
1955年、東京都浅草生まれ。株式会社KEN'S ENGLISH INSTITUTE代表取締役。埼玉県立越谷北高校を卒業後、上智大学文学部英文学科に進む。ガイド通訳士、東進ハイスクール講師、進学の名門・県立浦和高校などで教鞭をとり、英語教材クリエイターとして活躍。高校教諭時代は、基礎から上級まで、わかりやすくユニークな教え方に定評があり、生徒たちからは「シミケン」の愛称で人気を博す。著書はベストセラー『英単語の語源図鑑』(共著・かんき出版)のほか、『語源×図解 くらべて覚える英単語』(青春出版社)、『毎日つぶやく 英会話「1秒」レッスン』(成美堂出版)、『くらべてわかる英単語』(大和書房)、『朝から夜までつぶやき英語』『英語は3語で話せ』(ともに三笠書房≪知的生きかた文庫≫)など90冊を超える。趣味は海外旅行、食べ歩き、ジョギング。朝日ウィークリーでコラムを連載中。

それでは本書の目次を見ていきましょう。
・はじめに
・PART 1「漢字1字」の意味を持つ語源
・PART 2「すごい語根per」にまつわる語源
・PART 3「接頭辞」のような語源
・PART 4「数」を表す語源
・PART 5「形容詞」のような語源
・PART 6「感覚」にまつわる語源
・PART 7「自然界の動き」にまつわる語源
・PART 8「時間、空間」にまつわる語源
・PART 9「人間の動作」を表す語源
・さくいん
・主な接頭辞

「はじめに」で著者は本書の魅力について述べています。書店で本書を手に取ったのなら、まずここを読んで買うかどうかを決めましょう。私の予想では、8割の人がレジに進むと思います。

ここで著者は「語源は地理、歴史、文化、雑学など『できる人』の教養の宝庫である」と述べています。この1ページ目に最初の例として「part」と「partner」が並べられています。「一部」を意味するpartから、「分け合う人」という意味でpartnerが生まれたということです。

著者によれば、死語も含めると世界には7200もの言語があり、そのひとつである英語は、印欧語族の一部であるゲルマン語派の西ゲルマン語群をドイツ語、オランダ語とともに形成しています。

英語がドイツ語やオランダ語の仲間であるのには理由があります。それはEnglandやEnglishという言葉に表れています。Englandはアングル人(Angle)の住む土地、Englishはアングル人が話す言葉という意味で、アングル人とは現在のドイツ周辺に住んでいた部族でした。

その後、9世紀から11世紀にかけて、イングランドは現在のデンマーク周辺に住んでいたバイキングの一派であるデーン人(Danes)に支配され、古ノルド語の影響を受けました。

さらに1066年のヘースティングスの戦いでノルマン王に征服され、その後300年にわたってイングランドではフランス語が公用語となります。フランス語を使っていたのは貴族だけでしたが、その影響は庶民の話す英語にも及びました。

たとえば、それまでcowは「牛」と「牛肉」の両方を指す言葉でしたが、フランス語をまねてbeefという言葉が生まれました。同様にしてporkが生まれ、pigと区別されるようになりました。

このような経緯があるため、ゲルマン語族である英語に多くのラテン語に由来する単語が取り込まれています。したがって、英単語の語源を解き明かしていくと、ラテン語やギリシャ語もキーワードになってきます。

著者は語源を学びながら英語に触れることを「単調になりがちな英単語学習を楽しいものに変え、立体的で高い教養を獲得できる」としています。そして著者の40年の教員体験に照らしても、語源学習法は英単語の最も効果的な学習方法であるそうです。

語源学習法とは、一つの英単語を意味のある最小の単位である語源別に分けて、それらのもつ意味をつなぎ合わせて暗記する方法です。その例として「expression」が示されています。

expression(表現)という単語は、ex(~外へ)+press(押す)+ion(名詞を表す接尾辞)に分けられます。外に(感情を)押し出すこと、すなわち表現となるわけです。

これは日本語の漢字を偏(へん)と旁(つくり)に分解して意味を類推する作業に似ています。

ミネソタ大学のジェームズ・I・ブラウン教授は、20の接頭辞と14の語根を理解するだけで、1万4000以上の単語が理解できるとしていますが、本書に収容されている接頭辞は30以上、語根は150以上ですから、組み合わせるとネイティブレベルの語彙数に近づきます。

PART 1は、「民」「家」「星」「水」「角」「山」「父」「母」「手」「足」「歯」「目」「頭」「愛」「音」といった漢字1字の意味を持つ語源を見ていきます。

たとえば「民」を表す「dem」からはdemagoguery(デマ)、democratic(民主的な)、epidemic(伝染性の)、pandemic(世界的流行の)といった単語が派生しています。

「家」や「主」を表す「dom」からは、dome(丸天井)、domain(ネット上の住所)、dominate(主人として支配する)、domestic(家庭内の)、domesticate(飼い慣らす)、condominium(コンドミニアム)などが生まれています。

「星」を意味する「star」からは、astronomer(天文学者)、constellation(星座)、astronaut(宇宙飛行士)、aster(エゾギク)、asterisk(星印)などが生まれています。災害を意味するdisasterは、「幸運の星に見放されて」という意味からの連想です。

「手」を意味する「man」からは、manual(手引き書)、manage(経営する)、manufacture(製造する)、manuscript(原稿)、manicure(マニキュア)、manner(マナー)、mannerism(マンネリ)といった派生語があります。

「足」を表す「ped」からは、pedestrian(歩行者)、pedal(ペダル)、expedition(探検)、pedicure(ペディキュア)などが生まれています。pedigree(家系図)は鶴(gree)の足の形に似ていることから、centipede(ムカデ)やmillipede(ヤスデ)は足が100(centi)や1000(mill)もあるという意味です。

PART 2では印欧祖語の語根であるperから派生した言葉を解説しています。このperは著者の知る限り最大数の派生語を生み出した語根だそうです。

まず出てくるのはfur、far、forの3つ。これらはいずれも「前に、先へ」という意味で、before(前に)、first(一番目)、forecast(予想する)、foresee(予見する)、afford(余裕のある)などの派生語が例示されています。

ここでperがfarなどに変化したpからfへの変化は「グリムの法則」と呼ばれているそうですが、そのグリムとは、あのグリム童話の作者であるグリム兄弟の兄、ヤーコブ・グリムにちなんでつけられたものです。ヤーコブは言語学者でもありました。

perはport(行く、運ぶ)にも変化しました。ここからimport(輸入する)、export(輸出する)、transport(輸送する)、porter(運搬人)、portable(携帯)、portal(玄関口の)、report(報告する)などが生まれました。sport(スポーツ)はdisport(気晴らしをする)の最初の2文字が消滅してできた言葉です。

同じようにperから生まれたpri(最初の)からは、prime(最良の)、primary(最初の)、priority(優先権)、prince(皇太子)、private(個人的な)などが誕生しています。

PART 3では接頭辞のような語源が紹介されています。最初に出てくるのは「つなぎ合わせる」という意味の「ar」です。この語根からはarms(武器)、arm(腕)、armor(甲冑)、art(芸術)、armadillo(アルマジロ)、harmony(調和)、alarm(警報)などが生まれました。

PART 4は数を表す語源です。最初はラテン語で1を意味する「uni」。ここからuniform(制服)、united(連合した)、unit(一揃い)、unique(特有の)、reunion(再会)などが派生しています。

ギリシャ語で1は「mono」です。ここからmonorail(モノレール)、monopoly(専売権)、monocle(単眼鏡)、monarch(君主)などが生まれました。

PART 6の感覚にまつわる語源では、「見る、観察する」という意味の「spec」が語根として取り上げられています。ここからspecial(特別な)、inspect(検査する)、specify(特定する)、specific(明確な)、spectator(観客)などが誕生しています。

「分ける」という意味の「part」からは、partner(配偶者)、party(政党)、depart(出発する)、department(部門)、partition(仕切り)、apartment(アパート)、particular(特別な)などが生まれました。

終わりに近いPART 9の「人間の動作を表す語源」には「打つ、叩く」という意味の「bat」が取り上げられています。ここから派生した言葉に、battle(戦闘)、combat(戦う)、battery(大砲)、battalion(軍団)、debate(ディベート)などがあります。

本書の巻末には、登場する全単語の索引と、主な接頭語がまとめられています。特に主な接頭語は、ここだけ読んでも勉強になります。

全体が参考書チックな2色印刷で、イラストが豊富に挿入されているため、最後まで飽きずに読み通すことができます。

今までにいろいろな方法を試しても英語が上達しなかった人、英語ネタで文章を膨らませたい人などにオススメの1冊です。


 

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