オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

図解 眠れなくなるほど面白い 睡眠の話

西野精治・著/日本文芸社・刊

648円(キンドル版・税込)/935円(紙版・税込)

キンドル版は648円ですが、キンドル・アンリミテッドに加入している人は、無料で読めます。

ちなみに、キンドル・アンリミテッドとは、アマゾンが提供する電子書籍の読み放題サブスクサービスで、アマゾンが対象に指定した200万冊以上の書籍、マンガ、雑誌が読み放題になるものです。サブスク料金は月980円ですが、現在は3か月199円のキャンペーンが実施されています(3月6日まで)。

対象の書籍、雑誌は毎月1日に変わるので、興味のある本が対象になっている時は、早めに読んでしまうのがお得です。ただし、同時に保持できるのは20冊までのため、欲張ってたくさん抱え込むことはできません。

さて、本書ですが、著者は1955年生まれ、大阪府出身、大阪医科大学卒業の医師、医学博士、日本睡眠学会専門医です。スタンフォード大学医学部精神科教授で、同生体リズム研究所(SCNラボ)所長。株式会社プレインスリープ最高経営責任者(CEO)兼最高医療責任者(CMO)の肩書もあります。

昨今では「睡眠」が健康のカギであることが常識化しつつあります。昔は「ナポレオンの睡眠時間は4時間」などと言われ、睡眠時間を削って仕事や遊びに熱中することが人生を謳歌することであるかのように思われてきました。

しかし、現在では適正な睡眠時間を取らず、睡眠の質が悪い生活習慣の人は、早死にへの道をまっしぐらであることがわかっています。良質で十分な睡眠を取らない人は、免疫力が低く、メタボや生活習慣病になりやすいことも知られるようになってきました。

たかが睡眠、されど睡眠であって、しかも今晩からすぐ実践できるところが、睡眠のおもしろいところです。本書カバーには「睡眠の常識が変わる!今晩からできる睡眠革命」と謳われています。

「はじめに」で著書はこう言っています。
***
十分で良質な睡眠は、免疫機能を向上させます。感染の最初の関門として、菌やウイルスの除去に働く自然免疫を増強するのです。それでも不幸にして感染した場合も、抗体産生などの獲得免疫を正しく機能させ、感染からの回復過程を促進することが明らかになっています。また、睡眠中にも、脳は休まず、起きているときにはできない体の重要なメインテナンスを行なっています。
***

***
正常な睡眠パターンの場合、入眠直後の深いノンレム睡眠で眠気や疲れを除去し、自律神経・ホルモンバランスを整え、免疫の増強や老廃物の除去など、睡眠の重要な機能のほとんどを果たします。明け方になると、深いノンレム睡眠は出現せず、レム睡眠が長くなり、脳と体で起きる準備を整えます。正常な睡眠では、自然に目覚め、身も心もリフレッシュされ、日中の活動性を高めるのです。
***

それでは本書の内容をつかむため、目次を見ていくことにしましょう。

・はじめに
・第1章 つい話したくなる睡眠の新常識
・第2章 ここまでわかった!睡眠の科学的メカニズム
・第3章 今夜からぐっすり「黄金の90分」の質を高める極意
・第4章 スタンフォードに学ぶお悩み別睡眠アドバイス

第1章は本書のイントロです。これまでに積み上げられた睡眠に関する知見を概説していきます。前述したように「睡眠が感染症予防の基本である」ことが最初に語られ、続いて「睡眠不足は肥満の元」であることが述べられています。

なぜ睡眠不足が肥満を招くのかというと、ホルモンバランスが狂い、食欲が抑えられなくなるためです。サンディエゴ大学の調査では、睡眠時間が3時間未満の人のBMIが最も高く、睡眠時間が10時間以上の人のBMIも標準以上であることが判明し、適正な睡眠時間の必要性が立証されています。

続いて、「日本は世界一眠らない国」というショッキングな事実が書かれています。世界中の多くの国で平均睡眠時間が8時間を超える中、日本人は平均6時間40分の睡眠時間しかなく、その中で睡眠時間が6時間を切っている人が40%も含まれているというのです。

その結果、日本の睡眠不足による経済損失は、米国・ランド研究所による試算では年間15兆円にも及びます(GDP比2.92%の損失)。パフォーマンスの低下や産業事故の発生などによる損失を計算した結果です。

睡眠不足がさまざまな弊害を招くのであれば、たっぷり寝ておけばいいかというと、そうでもありません。肥満のところで触れたように、寝すぎもまた健康リスクを高めます。

サンディエゴ大学の調査では、アメリカ人で病気で亡くなる人が最も少なかったのは、睡眠時間が平均7.5時間の人のグループでした。9~10時間の人の死亡率は、その人達に比べて1.3倍であったといいます。

ナポレオンは我慢して睡眠を短くしていたのではなく、遺伝的に短時間睡眠で健康を保つことができる「ショートスリーパー」という体質であったといわれています。これは訓練で獲得できるものではないため、普通の人は7.5時間睡眠を励行することが必要です。

よく「平日の睡眠不足は週末の寝だめで解消するから大丈夫」と言う人がいますが、本書によればそれは無理です。毎日の睡眠不足が蓄積された状態を「睡眠負債」と呼びますが、その解消には3週間の寝だめが必要だからです。

「居眠り運転」は重大な交通事故の要因ですが、本人が意識していない「瞬間的な居眠り(マイクロスリープ)」という現象もあります。これは1秒以下から10秒くらいの短い睡眠で、睡眠時間の不足から脳が限界を警告しているものです。

クマなどの「冬眠」は、眠るという漢字が使われていることから「長い睡眠」と思われがちですが、冬眠と睡眠はまったく違うメカニズムであることが近年わかってきました。冬眠から覚めたクマが長く眠ることから明らかになったものです。そして、人類も太古の昔は冬眠していたのではないかといわれています。

第2章では、最新の睡眠に関する知見が紹介されています。まず睡眠の健康に関する役目として、現在では次の5つが知られています。
(1)脳をしっかり休ませ、体をメンテナンスする
(2)自律神経やホルモンバランスを整える
(3)記憶を整理して定着させる
(4)免疫力を上げて抵抗力を高める
(5)脳の老廃物を除去する

そして近年では、最初のノンレム睡眠時に多量の成長ホルモンが分泌されることがわかってきました。成長ホルモンは高齢になっても分泌され、コレステロールを減らし、骨を丈夫にし、筋肉量を保ち、体力を維持し、肌を若々しく保つ作用があります。つまり、良質な睡眠は老化を防ぐわけです。

睡眠の大きな役割に「記憶の整理・定着」があります。つまり、徹夜の詰め込み勉強よりも、勉強してからしっかり眠ることのほうが、勉強には有効だということです。

体の細胞で発生する老廃物はリンパ組織などを通じて排出されますが、脳にはリンパ組織がありません。その代わりに脳細胞の老廃物を排出するのが脳脊髄液です。しかし睡眠不足が続くと、この活動が十分に行われなくなるため、アミロイドβなどの老廃物が脳内に溜まってしまいます。よく知られているように、アミロイドβはアルツハイマー型認知症の原因です。

現在の睡眠学では、「睡眠時間を延ばすより睡眠の質を上げるほうがよい」というのが定説になっています。特に入眠後最初に現れるおよそ90分間のノンレム睡眠が、睡眠全体の質を左右するといわれています。ここで成長ホルモンの70~80%が分泌されるのです。

よく話題になる「睡眠時無呼吸症候群」は、眠っている間に何回も呼吸が止まってしまう病気です。この病気になると睡眠の質と量が悪化するため、治療しないと8年間で4割の人が死亡するといわれています。現在ではさまざまな方法により、治療の成果が出ています。

昔から「年寄りは早起き」といわれてきましたが、その原因が体内時計の前倒しによるものであることが判明しています。体温やホルモン分泌などの生体機能のリズムが早いほうにずれるため、睡眠が浅く、短くなりがちです。こうなると認知症を発症しやすくなるので、昼寝などの対策が必要です。

第3章では、入眠後最初に訪れる90分のノンレム睡眠を「黄金の90分」と呼び、これを高める方法について伝授します。そのためには、「夜寝て朝起きる」というリズムを徹底することが必要です。「眠くなったら寝て、目が覚めたら起きる」という体の信号に従った生活リズムがベストです。

「睡眠時間を十分に取りたいのに、なかなか寝つけない」と悩んでいる人は少なくありません。本書では「深部体温」のコントロールをすることや脳を退屈させて眠くさせる方法などが提案されています。

脳を退屈させるためには、刺激を与えないことが一番です。そのため眠りにつく前にはパソコンやスマホを見てはいけません。決まった時間にいつも通りの環境で眠りにつくことが、スムーズな入眠をうながします。

睡眠に関する悩みについては、第4章で個別に対応しています。たとえば、「なかなか寝つけない」という悩みに対しては「芳香浴」をおすすめしています。また、寝る直前にアルコール度数の高いお酒をほんの少量飲むという方法もあるそうです。ただし飲みすぎは逆に睡眠の大敵となるため、あくまでも「少量」を守ることが必要です。

よく話題になる寝室の照明ですが、筆者は「暖色系の明かり」をすすめています。ブルーライトが減ると脳が「夜だ」と判断し、メラトニンの分泌が活発になるからです。この場合、天井の照明は直接眼に入って刺激になるため、間接照明によって床を照らすとよいそうです。

寝具については、著者は「通気性のよい寝具」を推薦しています。低反発のウレタンマットレスなどは熱が逃げにくいため、深部体温が下がりにくくなり、うまく入眠できません。同様に、枕も熱のこもらないものが好ましいようです。

「なかなか目覚まし時計で起きられない」という人には、「2段階アラーム」がいいようです。1度目のアラームは小さな音で短く鳴らし、20分後に普通の音で鳴るアラームをセットします。1度目で目覚めたらそのまま起きればいいし、そこをスルーしても2度目のアラームで起きられるという仕掛けです。20分の間隔は、睡眠のリズムから割り出された時間です。

そのほかにもたくさんの睡眠に関するヒントが載っているので、興味のある人はぜひ読んでみてください。


 

Copyright (C) 2004-2006 OCHANOKO-NET All Rights Reserved.