オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

「後回し」にしない技術
「すぐやる人」になる20の方法

イ・ミンギュ・著/吉川南・訳/文響社・刊

1,505円(キンドル版・税込)/1,520円(紙版・税込)

もう年配の人しか記憶していないと思いますが、「わかっちゃいるけどやめられない」というフレーズが一世を風靡した時代がありました。良くないことは知っているのに、ついやってしまう。そんな人間の性をみごとに言い表した言葉です。

本書のタイトルである「後回し」も、やってはいけないと思っているのに、ついやってしまうことのひとつでしょう。なぜ人は、今やったほうがいいことを後回しにしてしまうのでしょうか。

早速、ChatGPTに質問してみました。
【質問】なぜ人は今やらなければならないことを後回しにしてしまうのか?

【回答】人が今やらなければならないことを後回しにする理由はいくつかあります。以下によく見られる要因をいくつか挙げます。
1 モチベーションの欠如: 人々は時に、やる気や情熱が十分にわかないためにタスクを後回しにすることがあります。特に興味のない仕事や難しい課題に対しては、先延ばしにする傾向が強くなります。
2 要件の不明確さ: タスクが曖昧であったり、具体的な目標や手順が定まっていない場合、人々は取り組むことを後回しにしやすくなります。明確な指示や目標がないと、取り掛かりにくくなる傾向があります。
3 時間管理の困難さ: 時間管理のスキルが不足している場合、人々は優先順位の高いタスクに集中できず、後回しにすることがあります。時間の使い方を計画し、適切に割り当てることができないと、取り組むべき仕事が後回しになることがあります。
4 刺激への誘惑: 現代のテクノロジーの発展により、人々はスマートフォンやソーシャルメディアなどの刺激に引き寄せられやすくなりました。そのため、本来やるべきことを後回しにし、時間を浪費してしまうことがあります。
5 恐れや不安: 一部の人々は、失敗や批判を恐れてタスクを後回しにすることがあります。挑戦的な仕事に取り組むことや新しいスキルを習得することへの不安から、積極的に行動しない場合があります。
これらは一般的な理由の一部であり、人々がタスクを後回しにする要因は個人によって異なります。自己認識や時間管理スキルの向上、モチベーションの維持など、取り組むことを後回しにする傾向を軽減するための対策を取ることが重要です。

はい、よくできました。要するに、後回しにしないためには、人によって異なる後回しにしてしまう要因を排除するような対策が有効であるということですね。でも、どうすれば?

それに応えているのが本書です。本書はお隣の韓国でベストセラーを連発している心理学の専門家が出版した本の日本語訳です。本書も韓国では22万部を記録しています。

その著者について、最初にご紹介しておきます。
著者のイ・ミンギュさんは、心理学博士で臨床心理専門家です。槽國大学校特殊教育学科を卒業し、ソウル大学校大学院心理学科で臨床心理学の修士・博士の学位を取得しました。

ソウル大学校学生生活研究所にカウンセラーとして勤めた後、朝鮮大学校医科大学精神科教授を経て、現在は亜洲大学校心理学科教授として研究を続けています。

2001年には第1回亜洲大学校講義優秀教授賞を受賞しました。「幸せな人生を手に入れるためには1%だけ変えればいい」という哲学を主張して数多くの人に影響を与え、「1%行動心理学者」と呼ばれています。

著書には、韓国で100万部売れたベストセラー『好かれる人は1%が違う』(東洋経済新報社)をはじめ、『1%だけ変えても人生が変わる』『肯定の心理学』(ともに未邦訳)などがあります。

出版社による本書の紹介文はこのようになっています。
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憧れの「すぐやる人」になるにはどうしたらいいのか? 韓国で22万部のベストセラーに学ぶ「後回し」にしない技術!
◆掃除をしたければ、家に友達を呼ぼう
◆スケジュールは逆から立てなさい
◆「ひそかな誓い」はかなわない
◆大事な仕事の前に雑用をやりたくなる理由
◆最初の1%の行動に全力を注げ…etc
嫌なことを先延ばしにせず、「やらなければいけないことを、今すぐやる」ために必要なのは「意志」ではなく「技術」だった。「たった1%の変化を加えるだけで、人生は大きく変わる」という哲学を主張し、韓国で100万人以上の人々に影響を与えてきた心理学者が、「実行力」を身につける秘訣を伝える。実行力を発揮するプロセスを「決心」「実行」「継続」の3つのフェーズに分け、心理学に基づくノウハウや考え方を解説する。
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どうでしょうか。「ちょっと読みたくなってきたな」と思ったのではありませんか? それでは本書の目次を紹介します。

・prologue すぐに行動に移す人 先延ばしにする人

・第1章 決心する Decision Making
01 「成功のイメージ」に逃げ込んではならない
02 かゆくない方の足をかいていないか
03 スケジュールは逆から立てなさい
04 「プランB」があなたを救う
05 「ひそかな誓い」はかなわない
06 変われないのは望んでいないからだ

・第2章 実行する Taking Action
07 ベストタイミングは常に「いま」だ
08 最初の1%の行動に全力を注げ
09 「ふたつの締め切り」をつくりなさい
10 人生は「実験」の連続だ
11 頼んだ人だけが助けてもらえる
12 見られていないと人は動かない
13 大事な仕事の前に雑用をやりたくなる理由

・第3章 維持する Maintaining Habit
14 人はセルフイメージ通りの人間になる
15 人の頼みを断れないのはなぜか
16 掃除をしたければ、家に友達を呼ぼう
17 「効率」と「効果」の違いを知る
18 いかなるときも目標から目をそらさない
19 雨が降るまで雨ごいをしよう
20 教えることは学ぶこと

まえがきに相当する「プロローグ」では、いきなりこういう言葉が太字で出てきます。
成果は「力量×実行力」で決まる
「力量」は才能や経験によって異なりますが、「実行力」は実行しない限りゼロです。つまり頭でいくら素晴らしいことを考えていても、実行に移さない限り成果は得られないということです。

そして著者はこう言っています。
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実行力は資質ではなく技術だ
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三日坊主に終わってしまったり、いつまでたっても行動に移せなかったりするのは、意志の問題ではなく、まだ効果的な方法を学んでいないからだというのが著者の主張です。

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実行力は「決心―実行―維持」という3段階からなる。(中略)本書は決心、実行、維持の3つの章からなっており、各段階別に実行力を高める方法を紹介している。(中略)実行力こそが真の競争力なのだ。
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そして著者は、読者に積極的な姿勢で本書を読んでほしいと「お願い」しています。それは、次のような質問を自分に投げかけながら本書を読んでほしいというものです。
「わたしはなぜこの本を読まねばならないのか?」
「この本を通じて得ようとしているものは何か?」
「それを人間関係やビジネスにどう活用するのか?」

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実行は自己の才能に対する自信を育ててくれるもっとも効果的な方法であり、望むものを手に入れる唯一の手段だ。読者のみなさんが本書を通じて「いまいる場所」から「望みの場所」へと渡る橋を架けられることを、心から願っている。
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それでは第1章から拾い読みしていきましょう。
まず著者は、よく言われる「成功した姿をイメージすればそこに近づける」というメソッドについて「それではうまくいかない」と批判しています。

よく自己啓発セミナーなどで、高級外車の前でポーズを取って写真を撮り、それを自分の部屋に飾っておけば、やがてそれが実現するなどと教えられます。それは違うと著者は言います。

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バラ色の未来を「イメージ」してばかりいる人たちは、成功を手にする前に簡単に挫折してしまい、イメージの中に逃げ込む可能性が高い。(中略)夢があっても実現させる方法を知らない人たち、方法は知っていても努力をすることが嫌な人たちに、「イメージすればかなう」という言葉ほど甘いものはない。
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著者は「目標を達成した姿をイメージするだけでは駄目だ」と強く言います。イメージを実現するためには必ず満たしておくべき前提条件があるからです。その前提条件とは「成功への道を探し出すこと」です。

つまり、成功するためにはゴールを視覚化するよりも目標までのルートを正しくとらえる「プロセスの視覚化」のほうがずっと重要だということです。

著者は目標を達成するためには「スタート・モチベーション」と「持続モチベーション」のふたつの動機付けが必要だとしていますが、ゴールの視覚化はスタート・モチベーションをつくるだけです。もうひとつの持続モチベーションはプロセスの視覚化によってのみつくられます。

出版社の宣伝コピーにもあった「スケジュールを逆から立てる」ですが、本書にはこんな例が載っています。いつか自分のクリニックを開業したいと思っている20代の大学院生数名に「いつ開業するつもりか」と聞いたときの1人の学生の答えです。

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わたしは15年後に自分のクリニックをオープンするつもりです。そのためには開業の2年前までに最低限、自分の専門分野の論文3本を書き上げて本を1冊出版し、博士の学位をとらなくてはなりません。そうするためには、7年以内に博士課程に入学しなくてはならず、さらにそのためには、これから5年以内に臨床研修を終え、専門家の資格試験に合格しなくてはなりません。そのために、わたしは必ず2年以内に大学院を卒業します。だから今日、これまでにまとめた論文のテーマについて先生とご相談したいのです。
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スケジューリングには順行スケジューリングと逆算スケジューリングのふたつがあるそうです。順行スケジューリングの習慣しか持っていない学生は、こんなふうにする可能性があります。

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いざ勉強を始めようとしたら、友人から、落第点をくらってガッカリしているから酒でも飲もうという電話がかかってきた。1杯だけ飲んで帰ろうと思ったが、酔っぱらって二次会、三次会まで行ったあげく、朝方に帰宅した。アラームが鳴っても、酒のせいで目が覚めなかった。ようやくベッドから出て鏡を見ると、髪がボサボサだ。あわてて顔を洗い、母親の小言を聞きながら、朝食もろくにとらずに家を出た。息を切らして走ったが、今日もやっぱり遅刻してしまった。
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ここに「後回しにしてしまう習慣」の要素が出ています。そして著者は「もしも」と前置きしたうえで、この学生に逆算スケジューリングの習慣が身についていたら、という場合を書いています。

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明日は絶対に遅刻できない。9時までに教室に入るには、8時40分までに校門に着かないといけない。それには7時10分には地下鉄に乗る必要がある。そうするには家を7時に出なければ。7時に家を出るなら、6時40分までには朝食をとっておかねばならない。そのためには6時に起きることが条件だ。だとすれば、今夜は12時前にはベッドに入るようにしよう。だから申し訳ないけれども、友人と会うのは後日にして、9時前に帰宅しよう。
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さまざまな誘惑に簡単に負けてしまう人は、逆算スケジューリングの習慣よりも順行スケジューリングの習慣が体に染みついています。そのために、すべてのことが重要に感じられてしまい、重要なことより急ぎの用を選ぶ可能性が高くなります。

しかし、目標の達成を基準にして逆方向から現在の状況を見れば、選択の幅はずっと狭まるはずです。それにより、誘惑を振り切るのも簡単になり、目標と関係のないことを退けるのも容易になります。さらに、ストレスも減ります。

ということで、後回しにしない人になる第一歩として、逆算スケジューリングの習慣を身につけるということが、著者からの最初の提案です。

次に著者が提案しているのは「プランB」、すなわち「代案」の重要性です。著者は「どんなときも『代案』を用意すること」を勧めています。

「想定外」という言葉が、責任を逃れたい人たちの口からよく出てきますが、どんなに準備しても突発的事態はやってくるものです。彼らは「すみません、代案を用意していませんでした」と言っているようなものです。

著者が言うには、成功した人たちはうまくいかない場合に備えてプランBを用意しているが、失敗する人たちはうまくいかない場合を予測しないか、想像したくないことが多いそうです。

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目標達成のプロセスの途中であきらめる習慣を持っているなら、それに対する強力な代案をつくっておかねばならない。たとえば、次のような3段階を考えればよい。
(1)目標達成のための具体的な実践計画(プランA)を考える
(2)実践のプロセスで実践を妨害する突発事態を予想し、箇条書きにする
(3)それぞれの事態に対する代案(プランB)を考える。可能なら代案の代案(プランC)も考える
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プランBを常に考えるクセをつけることで、不確実性への不安感が和らぎ、状況や自分自身をコントロールする力が増強されます。また、後悔と損失を味わう機会が減ることで、成果と満足感を味わう機会が増えます。

いまやらなければならないことを、つい後回しにしてしまう人の行動には、共通点があります。それは、着手しなければならないときに、他のことをしてしまうことです。

本書には「大事な仕事の前に雑用をやりたくなる理由」として、次のように書かれています。
「やりたくない仕事から逃れるためのいちばん簡単な方法は、その仕事と少しでも関係があって、しかも楽な仕事を見つけることだ」

人間には、本当に重要だけれどもやりたくない仕事(頭を使わなくてはならない仕事)があるとき、単純な仕事(頭をあまり使わなくてもいい仕事)をすることで、ストレスから逃れようとする傾向があるそうです。そのため、後回しにしがちな人ほど準備時間が長いという結果になります。

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失敗する者は常に、将来は苦痛の種になるかも知れないが当面は楽しい仕事に一生懸命になり、成功する者は、将来的に大きな満足を与えてくれるが現在は苦痛な仕事――つまり、失敗する者が嫌う仕事を先にする。
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まずは手に取ってみてください。ときどき読み返すことで、自分の行動が変わってくる本です。


 

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