本書の購入の仕方ですが、私はまずキンドル・アンリミテッドで0円で入手してから一読し、気に入ったら紙の本をあらためて購入する方法をお勧めします。
電子書籍にあまり親しんでない方にとっては、キンドル・アンリミテッドは縁遠い存在かもしれませんが、その本が「買い」かどうかを試すにはいい仕組みです。
ご存じの方も多いと思いますので釈迦に説法かもしれませんが、一応、キンドル・アンリミテッドの概要をまとめておきます。
・料金:月額980円(税込)
・取扱冊数:200万冊以上
・ジャンル:小説、マンガ、雑誌、実用書、ビジネス書、児童書、洋書など
・同時接続端末:最大6台
・ダウンロード可能冊数:最大20冊まで
・対応端末:キンドル端末、スマホ、タブレット、PC
・利用条件:アマゾン会員であること
今のようにサブスク全盛になる前から始まっていた電子書籍のサブスク読み放題サービスですが、今ひとつ利用価値が周知されていない感がありました。すべての本が対象ではないことや、キープできる冊数に限りがあることで敬遠した人もいたことでしょう。
しかし、紙の本だと古典的な「立ち読み」でしかお試しの方法はありませんでしたが、このサービスを使えば本の中身をすべて読むことができます。対象になっている雑誌などは、毎号このサービスを使って読んでいれば、購読費は不要になります。
特に初めて読む作者の小説やマンガは、このサービスで自分に合うかどうかを確かめることができますから、買って後悔することが少なくなると思われます。
なぜ本書をキンドル・アンリミテッドで試し読みするのがいいかというと、本書は基本、紙の本に書き込むワークブックだからです。まず電子書籍でお試し読書をしてみて、気に入ったら紙の本を買えばいいということです。
このためだけにキンドル・アンリミテッドに加入するのはためらわれるというのであれば、初回のみ入会3か月無料の特典を使うといいでしょう。
本書はワークブックであると紹介しましたが、出版社からの宣伝コピーにはこうあります。
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人生100年時代、どう生きると決めますか?
人生の「使える時間」を見える化し、
明日を変えて本気で生きるための問いとワークブック
「人生100年時代」を生きる人のためのワークブック
本書は、ディズニーリゾート、日本航空、NTT、資生堂、三井不動産など、10万人以上の人材育成を手がけた著者による、「これからどう生きるか」を導き出す問いとワークの本です。
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それでは、目次を眺めてみましょう。
・プロローグ 過去・いま・未来をつなぐ「100年カレンダー」
・100年カレンダーJOURNEYに出発する前に
・100年カレンダーJOURNEY
・0 人生という名の「JOURNEY」に出発しよう
・1 自分の原点を探しにいく
・2 最後の日を決めれば、本当に「使える時間」が見えてくる
・3 あなたの人生の「ストーリー」をつかむ
・4 どう生きてきたか。どう生きているか。どう生きるか。
・5 欲しかったものは、何だろうか? これから欲しいものは、何だろうか?
・6 人生に影響を与えた出逢いは何だろうか?
・7 何に歓んできただろうか? これから、何に歓びたいだろうか?
・8 時間をかけてきたこと、お金をかけてきたことは、何だろうか?
・9 許せないことは、何だろうか? いつ、それを許すだろうか?
・10 後悔していることは、何だろうか?
・11 幸せを感じるために、行動しよう
・12 自分は、誰として生きるのか?
・エピローグ 未来は、いますぐ変えられる
・1930年~2131年カレンダー
プロローグで著者は次のように読者に問いかけています。
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突然ですが、こんな思いを抱くことは、ありませんか?
いま、何をしたらいいのかわからない。
最近、うまくいかないことばっかりだ。
自分は何が好きなのか、わからない。
仕事や人間関係から、逃げ出したい。
やりたいことが見つけられない。
「夢や目標は?」と言われても、途方にくれる。
生きている意味を感じられない。
なぜ、私は生きているのだろう?
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こうした思いを、著者は「魂の火」だと言います。
いまのこの状態から抜け出したい、いま変化を起こしたいという切実な気持ちだからです。自分ではどうにもならないことに取り囲まれて、未来に対する不安や心配事に悩まされている現状への不満のエネルギーでもあります。
そして、著者は続けて問いかけます。
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いま、あなたは何歳ですか?
もし今日が、あなたの最後の日であっても、後悔しないでしょうか?
(中略)
一度きりの人生のすべての時間を、思う存分生きつくしたと、心から言い切れるように生きるために、それを実現するために、いま、何をすべきでしょうか?
いまこれから、できることは何でしょうか?
命がつきる最後の日まで、どのようなことに時間を使い、情熱を燃やし、何者として生きるのか?
この本は、その答えを探す海図だと思ってください。
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プロローグでは続いて著者の自己紹介があります。
先ほどの出版社の宣伝コピーにあったように、著者はさまざまな企業の人材育成支援や講演、コンサルティング活動をしていますが、同時に難病を患う子どもとその家族を応援する公益法人も経営しています。
その前は、約20年間、東京ディズニーランドや東京ディズニーシーを運営するオリエンタルランドで人材教育やプロジェクトの立ち上げ、マネジメントを行ってきました。その経歴から、著者の考え方の基本は、ウォルト・ディズニーの人生や物事に対する視点や実現力にあるようです。
著者が言うには、ウォルト・ディズニーがつねに提唱していた「いま、ここ(Now and Here)」の精神は、先の見えない不安な時代を生きるうえで、軸にしたい考え方だそうです。
人はともすれば過去にとらわれたり、未来を不安に思ったりするなかで、「いま」を見失いがちだといいます。常に「いま」を見失わないようにして自身を持って生きていくことは、意外に難しいものです。
そこに「いま、ここ」の視点を取り入れ、人生を変えるための行動変革を起こすためにはどうすればいいのか。著者はその答えが本書であるといいます。本書のツールである「100年カレンダー」を使うことで、「いま、ここ」を軸にした人生が送れるというのです。
実際に著者は自分が展開している人材育成やミッションワークのセミナーにおいて、この「100年カレンダー」を欠かさず用いているそうです。
「100年カレンダー」とは、自分の生まれた年から100歳にいたるまでの100年間がひと目でわかるカレンダーです。本書の巻末には、1930年から2131年までのカレンダーが用意されているので、すべての読者の人生がその範囲内に収まるようになっています。
ということは、読者の生まれた日はもちろんのこと、いつかはわからないけれども亡くなる日もこの中に存在することになります。
「そんな不吉なことは考えたくない」と思うかもしれませんが、生まれてからほぼ100年以内で人生が終わるというのは、逃れようのない事実です。その事実にしっかりと目を向けて、自分の100年という人生を可視化することから、本書の旅は始まります。
そして、著者は本書巻末のカレンダーに、ペンでマークしたり、書き込んだり、付箋を付けたりすることを要請しています。そのために、本書を100%役立たせるためには、電子書籍版ではなく紙版を購入する必要があるわけです。
まず、巻末のカレンダーの中の、自分の生誕日にマークを付けます。そしてそこから今日の日付までの人生を振り返ります。これまでの人生を振り返ることで、いまからをどう生きるかを考えるわけです。
とはいいながら、本書でのワークは、いわゆる「自分史」を作る作業ではありません。過去を振り返ることで自分の人生に流れているストーリーを知ることが目的です。
人はよく、「あの時はわからなかったが、いまなら意味がわかる」という人生上のポイントを持っているものです。過去の出来事や出逢い、感動したことなどを振り返ることで、自分自身の非力さや未熟さに気づき、本当の自分を知ることができます。
ウォルト・ディズニーの有名な言葉に「Story behind the Story」というものがあります。表面に見えているストーリーの背景に隠れている真の見えないストーリーを見つけることが大事だという意味です。
「私は○○になりたい」といった夢はたいてい「表のストーリー」で、その裏には「影のストーリー」が存在するものです。それを可視化して、アクションプランに具現化していくのが、本書の目的です。
さて、いよいよ本書の本論に入っていきますが、著者は次の道具を用意するようにと言っています。
・好きな色や形の付箋
・楽しく書ける、書きやすいペンやマジック
これらを使って、本書のどのページにも付箋を貼り、書き込むようにと著者は言います。書き込む時には、後で移動できるように付箋を使います。また、家族の写真や記事のスクラップ、思い出のチケットなどを貼ってもいいとのことです。
特に重要なのは、未来の日付に対して「ここまでに○○○をやる」「この日までに○○○になる」といったゴールを設定することです。それを100年カレンダーに目立つように記入します。
たくさんの付箋や書き込みが付くと、それを他人に見られたくないと思うようになりますが、本書は人に見せるものではないと著者は言います。それを含めて、著者は5つのポイントを強調しています。
1 ひとりで行い、自分と対話する
2 嘘をつかず、正当化せず、言い訳せず
3 視点をあえて変えてみる
4 点で見ず、点と点でつないでみる
5 行動計画を立て、行動し続ける
1の「自分と対話する」は、自分自身を知るために必要なプロセスです。自分の誕生日から始まり、どこに住んでいたのか、どんな学校に通ったのか、歓びを感じたこと、後悔したことなど、さまざまなことを深掘りしていきますが、それは自分だけで行う必要があります。
ウォルト・ディズニーは「スウィング(振り子)」という考え方を大事にしていました。自問自答を繰り返し行い、自分はどのように考え、どのように行動するのかを問い続けることで、成長を果たそうというものです。
2の「嘘をつかない」というのは、人が無意識に行っている記憶のデフォルメを防ぐためのものです。過去の記憶に対して「本当にそうだったのだろうか」と問うことで、本当に自分が見えてきます。
3の「視点を変える」は心理学でいう「リフレーミング」です。いままでと違った角度からアプローチして自己認識を変えていきます。そうすると、これまで見ないようにして逃げていたことや棚上げしていた不都合なことが見えてきます。
4の「点と点でつなぐ」は、過去をいまに活かすということでもあります。ウォルト・ディズニーは貧しい家庭で育ちましたが、その貧困の暮らしを送った街並みが、ディズニーランドの「ワールドバザール」に再現されています。「あの時代があったからこそ、いまがある」という彼の考えからです。失敗を失敗のままにしない方法は、それを未来の糧にすることです。
5の「行動計画」は、未来をどう生きるかを決めるための重要なポイントです。ゴールを定め、そこから逆算して細かい予定を立てることで、いまからの行動がやりやすくなります。
この場合に大切なのは、計画をできるだけ具体的にして、必ず数値を入れることです。「1日に多くの人と話す」ではなく、「1日に5人以上の人と話す」という計画にしましょう。
ここから先は、本書に記入しながらのカレンダーワークになります。まず最初は、自分の生まれた年のカレンダーページを開き、誕生日にマークすることです。そしてカレンダーページの年齢を書く欄に、0歳から100歳まで記入します。そしていまの自分の年齢の年に、目立つように付箋やシールを貼ります
この「自分の100年」を生まれた年から100歳になる年まで何度も見返します。人によっては、残りの人生の時間が少ないと感じるかもしれません。でもそれが客観的な事実なのです。
次に、自分のテーマBGMを決めます。子ども時代、学生時代、社会人になりたてのころなど、よく聴いていた曲や思い出深い曲をBGMに決めます。その曲を何度も聴き返すことで、忘れていた記憶がよみがえってくるものです。
それから自分の好きな歴史上の人物を誰か決めて、その人の人生をネット検索します。その人物がどのようなストーリーの人生を歩み、何歳で亡くなったかを確認します。そして歴史に名を残す原因となったエピソードが何歳の時のことかを調べます。これらを付箋にまとめ、その人が亡くなった年齢に相当する自分の人生カレンダーの年に貼ります。
織田信長47歳、坂本龍馬31歳、ウォルト・ディズニー65歳、スティーブ・ジョブズ56歳、ジョン・レノン40歳、ゴッホ37歳という付箋を貼っていくと、自分の人生に残された時間に思いを馳せることができます。
そして未来の自分の誕生日に印をつけ、そこを自分の人生のマイルストーンにします。それが何の節目になるのかは、本書のワークでそのうち見えてきます。
以上はほんの手始めで、これから面白くなるのですが、その内容は本書を手に取る人のためにとっておきましょう。自分自身を内側からしっかり観察することができる本です。