オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

宇宙人とみつける仕事図鑑

二村大輔・絵/リクルートエージェント・監修/文響社・刊

2,653円(キンドル版・税込)/2,498円(紙版・税込)

装幀を見ると「絵本かな?」と思うかもしれませんが、中身はマンガと細かいイラスト解説で、小学校高学年から読めるように漢字にはルビがふられています。

主人公が12歳の男の子なので、ターゲット読者はそのくらいの年代なのでしょう。学校で「将来どんな仕事をしたいか」と聞かれて困るお子さんとその親が主要読者なのかと思われます。

絵本のような大判で横長の本を開いてページをめくっていくと、オールカラーでイラストがふんだんに使われた緻密なページ構成に驚かされます。いい値段の本ですが、クリエイターたちの仕事が詰まっています。おそらく「損をした、金返せ」と叫ぶ人は皆無でしょう。

出版社は文響社。前にも紹介しましたが、2010年創業の若い出版社です。それでも『うんこ漢字ドリル』シリーズが累計で900万部、創業メンバーである水野敬也の『夢をかなえるゾウ』シリーズが430万部など、続々と超ベストセラーを送り出しています。最近では健康本ジャンルのマキノ出版とその子会社のわかさ出版を傘下に収めたことでも話題になりました。

膨大な量のイラストを提供しているのは、国際的イラストレーターの二村大輔。単なる挿絵ではなく、マンガとイラストルポのような丁寧な絵で読者をぐいぐいと引き込みます。

内容の監修はリクルートエージェント。日本最大級の転職支援サービスだけあって、各業界・職種に精通したキャリアアドバイザーとリクルーティングアドバイザーを総動員して、576種もの職業を簡潔・平易に解説しています。

通常の本なら「はじめに」や「まえがき」がある部分には、12ページのマンガが挿入されています。主人公の一本杉ユメオが学校で宿題の作文「しょうらいの夢」を出されて困っているシーンからです。

ユメオは「何か適当に書かなくちゃ」と、とりあえず「学校の先生」と書き始めましたが、自分の中で「うそだ、ぼくこんなこと思ってない」と鉛筆を止め、消しゴムで消そうと筆箱を開けます。

すると筆箱が光り、中から宇宙人のワプリン25号が出てきます。ワプリン25号は自分のことをムアムア星のワーピストと紹介します。ワーピストとは、星と星をワープでつなぐ仕事なのですが、ワプリン25号は間違えて地球にきてしまったのでした。

ワプリン25号が言うには、ムアムア星の人たちは全員がワーピストだそうです。ユメオは今自分が将来の仕事のことで悩んでいると打ち明けます。するとワプリン25号は一緒に仕事を見つけてあげようかと言い出しました。

ワプリン25号が持っている「データ見スコープ」と「心の声イヤホン」を使うと、見た人の仕事データが閲覧でき、心の声が聞こえます。似たような職業の人が並んでいるときは、ワプリン25号の「ちがいはっきりビーム」を当てると、仕事の特徴がわかりやすくなります。

こうしてユメオはワプリン25号のUFOに乗って、日本の(地球の)いろいろな職業を見に行くのでした

その次からの4ページは、目次です。この本は章立てがありませんが、かわりに「特集」や「仕事の開拓者たち」というコラム的なページが何箇所かに挟まっています。目次全体を載せるのは割愛しますが、最初はこんな感じです。

▶アニメ制作会社
アニメ演出家 アニメ監督 アニメーター(原画・動画) アニメ脚本家 作画監督 アニメプロデューサー 制作進行 アニメ撮影 色彩設計 CGデザイナー 原型師 声優

▶サッカースタジアム
クラブチームスタッフ 審判 スポーツエージェント サッカー選手 グラウンドキーパー スポーツトレーナー チアリーダー 実況アナウンサー スポーツカメラマン 監督 メンタルトレーナー コーチ スポーツライター 通訳 スカウト

▶とあるマンション
漫画家 ベビーシッター リノベーションプランナー アフィリエイター ユーチューバー デイトレーダー イラストレーター 翻訳家 ハンドメイド作家 オンライン家庭教師 マンション管理士 ビルメンテナンススタッフ

▶ショッピングモール
占い師 美容部員 写真・DPEショップ店員 アパレル店員 ショッピングモール運営スタッフ 実演販売士 書店員 シューフィッター オプトメトリスト 大道芸人 弁当屋店員 映画バイヤー

目次の次のページは、見開きでアニメ制作会社の仕事場を俯瞰したイラストが描かれています。そこで13人の人が机を並べていて、それぞれの職業が紹介されています。

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001アニメ演出家
ここは軽快なテンポで笑わせて、場面が切り替わると一変、重い空気の食卓。うん、これでいこう。
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002アニメ監督
最終話では、主人公たちがひとまわり成長した姿を描きたいんだよな。そのために、何かもう一展開あるといいんだけど……。
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003アニメーター(原画担当)
ものすごくうれしいとき、じろうだったらどんな動きをする? あ、あの水泳選手が優勝したときのガッツポーズ……。うん、これだ!
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004アニメ脚本家
むむっ、それ入れると前の話とのつながりが……。でも、たしかにそのシーンはあったほうがいい……。
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005作画監督
じろうは、こんな笑い方はしない。輪郭はもう少し細く。あと、目元のシワの入り方もちょっとちがう。直すか。
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006アニメプロデューサー
ここから大きな修正が入ると、またスケジュールが厳しくなるな。人手を増やすにはお金がいるが、予算もあまりない……。たのむ、何事もなく進んでくれ!
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その次の見開きでは、それぞれの仕事がさらに詳しく紹介されています。
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001アニメ演出家
【仕事内容】作品やキャラクターの魅力を深く理解し、制作の各段階でそれを最大限に引き出す仕事。まず、監督や脚本家と方向性を確認したら、作品の設計図となる「絵コンテ」を作成。それをもとに作画監督などに細かく指示を出し、上がってきた絵をチェック。その後、シーンの編集、声優への演技指導まで行う。
【なるには】アニメ制作会社に入り、演出助手などで経験を積んでからなる人が多い。
【特殊能力】(1)登場人物の心情をカメラワークで的確に表現できる「だからこのカットなのよ力」(2)各スタッフが上げたものが理想通りになっているかを厳しい目で見る「チェックの大魔神」
【つらいとき】自分のやりたいことがなかなか相手に伝わらず、思うような絵が上がってこないとき。
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次の見開きでは、ユメオとワプリン25号が話しています。アニメ制作会社の人たちが子どものころにどんな夢をもっていたのかを「データ見スコープ」で見たところ、みんなアニメに夢中だったわけではなく、パティシエ、プロ野球選手、マンガ家などさまざまでした。

「夢は変わってもいいんだ」と気づいたユメオは、もっといろいろな仕事を見に行きたくなります。そしてサッカースタジアムで働く人たち、クラブチームスタッフ、審判、スポーツエージェント、サッカー選手、グラウンドキーパー、スポーツトレーナーなどの仕事に触れることができました。

その次のページには「リアル・ボイス~働く人に聞いてみた」と題したコラムが掲載されています。

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Q.子どものころ好きだったことは?
ドキュメンタリー映画監督(38さい)小学生のときに、『スタンド・バイ・ミー』という映画を観て、映画を好きになりました。そして『ベスト・キッド』や『グーニーズ』などのアメリカ映画を観て、映画に夢中になりました。
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レーシングドライバー(25さい)サッカー選手をめざすくらいサッカーに夢中でした。しかし、当時からレースも好きで、ミハエル・シューマッハ選手のレースだけは観ていました。
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中学校教諭(数学)(40さい)とにかくプラモデルを作るのがすごく好きでした。ふつうに組み立てるのも楽しかったのですが、自分なりのオリジナルのカラーリングを施したりして楽しんでいた記憶があります。
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調理師(37さい)お菓子・ケーキ作りが大好きでした。11さいのころおこづかいで購入したシフォンケーキとタルトの本は、今でもよく参考にしています。
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続いて「とあるマンション」でマンガ家やベビーシッター、リノベーションプランナー、アフィリエイター、ユーチューバー、デイトレーダーなどの仕事を眺め、「ショッピングモール」では占い師、美容部員、写真・DPEショップ店員といった人々を観察していきます。

次の「映画館」では、ちょうど映画が終わるところでエンドロールが映されていますが、そこにフキダシで脚本家、スタイリスト、俳優、ナレーター、撮影監督、助監督、音楽プロデューサー、映画監督などが紹介されます。

その次は「ゲーム制作会社」です。ここではキャラクターデザイナー、サウンドクリエーター、プロゲーマー、デバッガー、ゲームディレクター、ゲームプロデューサー、ゲームデザイナー、ゲームグラフィッカー、ゲームプログラマーといった職業の解説があります。

そして、「商店街」「駅」「とある事務所」「銀行」「市役所」「コンサートホール」「家の中」「ご近所」「学校」「スポーツ公園」「フィットネスクラブ」「介護施設」「児童福祉施設」「病院」「電車の中」「住宅メーカー」「広告代理店」「オフィスビル」「インターネットサービス会社」「コワーキングスペース」「街の裏通り」「とある会社」「ビル街」「テレビ局」「新聞社」「国会議事堂」「大学」「山村」「空港」「海」「とある外国」「テーマパーク」「自動車工場」「国道沿い」「建設現場」「ホテル」「旅館」「寺院」「牧場・田畑」「宇宙」と場面が進んでいきます。

「コワーキングスペース」には女性のネットショップオーナーがいて、「なぜかこの福井のサバ缶だけ、すっごくリピーター多いな。お客さんに感想聞いて、特設ページ作っちゃおっかな」とつぶやいています。

そして次の見開きには、このように紹介されています。
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321ネットショップオーナー
【仕事内容】食品や洋服、化粧品、雑貨など、さまざまな商品をインターネット上で販売する仕事。ショップサイトを作り、注文が入ったら支払いを確認して商品を荷造りし、発送する。どんな商品なら買ってもらえるか、どんな説明や写真をのせれば魅力が伝わるか、購入しやすいかなどを考えて、日々工夫する。
【なるには】ネットやシステムに関する知識とパソコンなどの機材、ネット環境、販売する商品の仕入れ先があれば、だれでも開業できる。
【特殊能力】(1)自由に店を作れる中でも、店の「売り」をしっかり定められる「唯一無二のコンセプト力」(2)ネット上の店でもお客さんを思い、こまめに対応できる「オンライン接客力」
【つらいとき】ライバルのサイトがより安い商品を売り始め、お客さんを取られたとき。
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「特集4」では「事務の1日」と「営業の1日」というタイトルで、子どもたちになかなかわかりにくい会社員の仕事を1日の流れの中で解説しています。華やかさとは無縁の仕事の中にある魅力を、しっかりと引き出しています。

紹介される職業の最後は、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の掃除屋さん。専用の人工衛星で磁石やロボットアームを使って宇宙ゴミを捕獲し、宇宙空間の安全を守る仕事です。

576もの仕事を見てきた2人は、1日の終わりに今日の感想を述べ合います。そしてユメオは大切なことに気づきます。「どんな仕事につきたいかが夢なのではなくて、どんな人間になりたいかが夢なんだ」

最後のユメオのセリフは「夢って、明日が楽しみになれば、何だっていいのかもしれないね」でした。

Kindle Unlimitedに登録している人は、今なら無料で読めますから、ぜひ眺めてみてください。最終ページに索引があるので、読みたい職業を探してからページを開くのもいいでしょう。


 

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