金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」が人気を博したことで明らかなように、令和に生きる若い人たちにとって、昭和時代はすでに「異世界」です。ノスタルジーというよりは「不適切」という言葉が代表するように「違和感」の対象なのでしょう。
本書のメインタイトルである「昭和の仕事術」は、半ばギャンブル的なネーミングです。というのは、本書で著者は必要以上にそれを強調することなく、むしろタイトルの後半が本来のテーマだったのかと思わされるからです。
その意味では、キャッチーなタイトルを付けて話題になることを狙ったのは、著者サイドではなく出版社側だったのかもしれません。このようにネーミングの背景を想像するのも、本を鑑賞する時のひとつの楽しみといえます。
著者は大手広告代理店出身のビジネス書作家。「気配りのプロフェッショナル」を標榜し、著書10冊、ネットメディア寄稿100本以上、メディア露出50回以上を数える人物です。noteでは「凡人なのにプロ物書きを10年続けられる方法」を連載しています。https://note.com/ryosuke_ushiroda/
本書がユニークなのは、目次の前に「本書を事前に読んだ方の感想」が6ページにわたって掲載されていることです。まるで通販広告のような印象ですが、それを眺めるだけで本書の性格が見えてくるので、少し引用してみます。
「この本は、ビジネスだけでなく、人とコミュニケーションを取るうえで必要なスキルだと思います」20代女性
「今までこのような内容の本を読んだことがなかったので、とても新鮮な気持ちで読ませていただきました」20代女性
「今日からすぐに使えるような仕事術がたくさんあり、とても勉強になりました」20代女性
「この本は著者が自分の未熟だった部分をさらけ出してくださっているおかげで『共感』からスッと内容が入りやすかった印象です」20代女性
「上司が本当に求めていることは私の行っていることと合っているかを確認することが、この本の面白さだと感じました」20代男性
「どんどんデジタル化が進んでいく時代の中で、アナログな仕事術を身につけることがいかに大切であるかを痛感させられました」20代女性
「仕事の悩み(上司との価値観の不一致)に関しても冷静になってこの本を読めば(読み直せば)ひとつ上のステージに近づけると確信しました」20代男性
「わざわざ先輩や上司が教えてくれない細かい所作などの説明があったのがよかった」30代女性
「ちょっと読んでみようかと手にとり、そのまま一気に読み終わりました。ひとつのパートが簡潔で気づきにあふれており、とても面白かったです」30代男性
「自分の営業スタイルを再点検する機会になりました。本書で紹介されている内容のベースは、どれもいかに相手の気持ちになれるかというおもてなしの気持ちだと思います」30代男性
「一つのテーマについて、『やり方』『効果』と端的に記載されており、詳細な解説についても1ページに記されていて、とても読み進めやすかった」30代女性
「人と人の本質はデジタルではなく、アナログです。全人類がロボットにならない限り、昭和の遺産(レガシー)は永遠に生き続けると思います」40代男性
「どのスキルもその先にはリアルな『人』がいる。それを改めて気づかされる内容でした。またどんなタイプでもどのような仕事でも必要なものがバランス良く入っていたのは、他書とは違いますし、その時々で見返すことができるバイブルになると思います」40代女性
「20代~30代に対して『昭和の仕事術』を伝える書籍でありながら、それ以上の年代にとっては処世術や基本的なマナーを振り返るための教科書の役割も担っていると思いました」40代女性
「昭和の粗さの中にこんな繊細な理論があるとは! 驚きました。20年前の自分に読ませたいです」40代男性
「20代の方には、社会人になったあと、人付き合いがしんどい、うまくいかないと感じるときに読んでほしい。もっと上の世代には、自分の仕事のスタイルを変えたいと思ったとき、周りのうまくいく人をうらやましいと思ったときに読んでほしい」40代女性
「ビジネスの中では『自分がどうか』より『相手にどう思われるか』が大事であることを若い人に知ってもらえるいい本だと思います」50代女性
「この本に書かれていることの何か一つでもいいから始めてみるといい方向に進むと思います」50代男性
「人間同士の心と身体の距離が近かった日本の昭和にこそ、多くのヒントがあるのだと思いました」60代男性
それでは本書の目次を紹介し、その後で気になった項目を抜粋していくことにします。
・はじめに 誰も教えてくれない最強スキル
・本書を事前に読んだ方の感想
・Chapter 1 基本の仕事術
・Chapter 2 不快にさせない仕事術
・Chapter 3 メール・SNS・リモート会議の仕事術
・Chapter 4 会話の仕事術
・Chapter 5 ビジネスシーンの仕事術
・Chapter 6 ワンランク上のビジネスシーンの仕事術
・Chapter 7 社内の仕事術
・Chapter 8 営業の仕事術
・Chapter 9 会食の仕事術
・Chapter 10 自分を鍛える仕事術
・おわりに
「はじめに」の最初の段落で、著者は簡潔に本書を紹介しています。
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「仕事の失敗と成功の秘密」を研究して30年。
その成果を100個の仕事のコツにまとめ、1テーマたったの3分で読めるように、ぎゅっと凝縮してまとめたのがこの本です。
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そして後半では、次のような熱いメッセージが語られています。
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「人に叱られなくなったら終わりだ」なんて昔から言われていたのはもはや死語です。
あなたの上司や先輩は「あなたのミスや失敗を指摘しアドバイスすると、パワハラと言われるかもしれない。だったら言わないでおこう」と考え、自分の保身のために叱ることはもちろん、指導すら意図的に放棄しています。
それにも関わらず彼・彼女らは心の中で「本当は違う」と考え、あなたにマイナスの評価を下している……。これが令和の残酷な現実です。
コミュニケーションに対しての苦手意識は、あなたに問題があるわけでなく、時代に原因があったのです。だからこそ私は、誰も教えなくなった昭和の仕事術をあなたに伝えたい。
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昭和の仕事術は簡単なものばかりです。しかしその極意はまるでアートと言ってよいほど奥が深い。高級ホテルのサービスやホスピタリティの上位概念とも言える「デキる人・一流の人だけが知っている昭和の仕事術」を、ぜひあなたも身につけていただきたい。
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Chapter 1 の最初の項目は「よい人間関係を作る方法 相手の気持ちを想像する」です。【やり方】としては「相手の気持ちを想像するために、主語を『自分』から『相手に』に入れ替える」とあります。その【効果】は「あなたの好意が相手に伝わり、人間関係が好転する」です。
「自分はどうしたいか?」を、
「相手はどうしたいか?」に、
「自分は何をすると心地よいのか?」を、
「相手は何をすると心地よいのか?」
のように、主語を自分から相手に入れ替えて相手の気持ちを想像します。たったそれだけで相手は「あなたと仕事をするのは楽しい・心地よい」と感じ始めてくれるというわけです。
その少し先には「成長も信頼も引き寄せる人の仕事の姿勢 『やってみます』と一旦、受け入れる」という項目があります。
「無茶振りかよ」「ほかに適当な人はいないの」と思えるような仕事のオファー。でもそれを受け入れてみようという提案です。
「できそうにない」「失敗しそうだ」と断るのは簡単ですが、成長したいなら困難に挑戦する必要があります。「あなたならできそうだ」と思うからこそのオファーですから、受けてみて挑戦するほうがプラスになります。
失敗しても大丈夫。依頼した相手はそんなことは織り込み済みです
その次には「キャリアと信頼を獲得する人の作法 人が嫌がることに手をあげる」という項目があります。これも自分の成長の糧となり、周囲からの信頼が増すメリットだらけの方法です。
Chapter 2 の最初の項目は「コミュニケーションの最強スキル あいさつは自分からする」です。小学校で必ず教わることなのに、社会人でこれができている人はあまりいません。相手から好感を持たれるだけでなく、自分が気持ちよくなることなので、ぜひ実行したいものです。
次は「イライラされない話し方 『まず結論』で返す」です。これもよく語られていることなのですが、世の中で徹底されているとはいえません。その背景に「相手の貴重な時間を奪わない」という精神があることを知れば、より実践したくなるでしょう。
Chapter 3 の最初の項目は「メール・SNSの丁寧な終わり方 SNSのラリーは自分で終える」です。これを徹底することで相手から丁寧な人だと思われ、終わり時で悩むことがなくなります。
著者が仕事上で付き合った3000人のVIPの多くは「メールやSNSの終わり方がうまい」と著者を感心させました。その極意を聞くと「メールではなく手紙だと思えばわかりやすい」とのことでした。
ただし、相手が同じルールで対応してくるとエンドレスになりそうなので工夫が必要かと思います。
その次の項目は「相手想いの反応スピード メール・SNSは最低2時間以内に反応する」です。相手のやきもきした気持ちを防ぎ、コミュニケーション上手と思われるやり方です。これも自分の中でルール化しておけば簡単に実行できるでしょう。
かつては「メール返信は24時間以内」というのがビジネスマナーの定番でしたが、今では「トップ社員のメール返信は15分以内」というデータもあるほどスピードアップしています。
すぐに返信できない内容の場合は「○日の×時までに返信します」ととりあえず返しておきましょう。
まだまだ紹介したい内容は続きますが、興味があったらぜひ本書を手に取って確かめてみてください。