偶然ですが、2回続けて同じ出版社の本になりました。カタカナで書くと長い社名ですが、英語表記の「Discover 21」のほうがお馴染みかもしれません。1985年創業の比較的若い出版社で、取次を通さない書店直接取引が特徴です。
著者の古川武士氏は「習慣化コンサルティング株式会社」の代表取締役で、習慣化をテーマにしたコンサルティング会社としては日本唯一をうたっています。関西大学を卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。24冊100万部の習慣化に関する著書があります。
本書のテーマは、「幸せの9割は習慣から生まれる。だから習慣化スキルを身につけて理想の人生を手に入れよう」というものです。
具体的には「計画したことが続けられない」(→第1章)、「すぐにあきらめてしまう」(→第2章)、「マイナスのことばかり考えてしまう」(→第3章)、「自分はこのままでいいのか疑ってしまう」(→第4章)といった形で、読者が自分のタイプに合わせて習慣を変えていく方法が示されています。総ページ数343という、なかなかに厚い本です。
全体を通して、65の習慣化の方法が提示されており、どんな人でもこのうちのいくつかを実践することで、自分の苦手を克服できるような構成になっています。
今回はこの65の方法をずらっとご紹介しようと思いますが、その前に、著者の考えを「はじめに」から読み取ってみましょう。
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「なにをやっても三日坊主……コツコツ続けられるようになりたい」
「自分のやりたいことってなんだろう? それが見つかれば人生変わるのに……」
「自分を変えたいのに同じ毎日を繰り返してばかりで進歩していない!」
誰しもがこうした思いを大なり小なり抱いているのではないでしょうか?
実はこれらはすべて「習慣」が原因です。
あなたの人生は「習慣の積み重ね」によってかたちづくられています。
「人生を変える」ということは「習慣を変える」ことなのです。
(中略)
本書で、行動・思考・感情・環境の切り口からうまく自分を乗せて習慣化できるようになる65の方法をご紹介します。
いますぐ習慣化のスキルを身につけて悔いのない理想の人生をつくりましょう!
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本書は第1章で行動の習慣が変わる26の方法を、第2章で思考の習慣が変わる18の方法を、第3章で感情の習慣が変わる15の方法を、第4章で環境の習慣が変わる6の方法を紹介しています。ではさっそく、それらをご紹介しましょう。
第1章 行動の習慣〈先延ばし・続かないを乗り越える〉
01 楽しむことを第一優先にする
02 「これならできる!」からはじめる
03 試しにとりあえずやってみる・やめてみる
04 大変な日は「例外ルール」で乗り切る
05 カタチから入る
06 人と一緒にやる
07 人の真似をしてみる
08 テンションが上がるご褒美を用意する
09 記録をつけて達成感を味わう
10 みんなに「いいね」をもらう
11 やる気アップツールを探す
12 「いつやるか!」タイミングを工夫する
13 みんなに宣言して退路を断つ
14 燃える目標を設定する
15 「損したくない」心理を活力にする
16 憧れの理想をつくる
17 自分を乗せるルーティンをつくる
18 「ながら作業」にしてしまう
19 気持ちが上がる場所に行く
20 飽きたら刺激と変化をつける
21 15分単位で区切る
22 リストアップして終わったら消す
23 タスクを細かく分解する
24 ピンポイント行動にする
25 余計なことを考えず淡々とやる
26 「今やる主義!」で乗り切る
第2章 思考の習慣〈マイナス思考から抜け出す〉
27 他人ではなく昨日の自分を超える
28 “ある”ものにフォーカスする
29 結果は、行動量と確率で考える
30 「できること」に目を向ける
31 複数の選択肢を探す
32 「1%改善」の行動で最適化する
33 相手も自分も得する解決策を考える
34 人事を尽くしたら天命を待つ
35 「今はこれでいい」と納得する
36 相手への期待値を見直す
37 がっかりタイムを想定済みにする
38 骨太の理由を考える
39 よいストーリーに自分を投影する
40 プラスの意味を見いだす
41 自分の過去の体験とつなげて考える
42 やる気の湧く口グセを使う
43 無駄なものはないと考える
44 感謝思考で世界観を変える
第3章 感情の習慣〈やりたいことを見つける〉
45 放電を減らし、充電を増やす
46 マインドフルになる
47 「主導権」を取り戻す
48 わくわく行動を実践する
49 あるがままの自分を受け入れる
50 無条件に愛されていることを思い出す
51 他人からの評価に振り回されない
52 ダメなときがあっていいと受け入れる
53 過去の成功体験からパワフルな信念をつくる
54 座右の銘をつくり自分の心に刷り込む
55 「やるべき」と「やりたい」を区別する
56 自分の性格タイプを知る
57 熱中できることを大切にする
58 他人から認められたい自分を受け入れる
59 自分の使命を見つける
第4章 環境の習慣〈変化しない自分を成長させる〉
60 環境を変えてみる
61 自分の憧れ・手本となる人を持つ
62 自分の波長に合う仲間と時間を過ごす
63 チャンスに気づく感度を高めておく
64 良いタイミングを待つ
65 最高のフィードバックをもらう
それでは第1章から気になったところを見ていきましょう。
01 楽しむことを第一優先にする
これは実践している人が多いのではないでしょうか。しかし、著者によると「楽しむ!」は習慣化において意外と見落とされがちなポイントなのだそうです。
日本人が昔から教育されてきた「苦痛なことでも根性で続けることにこそ美徳がある」という価値観は、習慣化にとっては邪魔な考えでしかありません。その価値観を受け入れると、楽しみながら取り組むことが「遊び」に思えてしまうからです。
しかし、楽しくないことを無理にやっても長続きしません。好きなことは続くし辛いことは続かないというのは人生の大原則だからです。
たとえば、著者はジムにあるランニングマシンが苦手です。でも水泳は好きなので、行くのが楽しみになります。脂肪燃焼効率から考えると水泳よりもランニングの方が効果が高いのですが、歯を食いしばって苦手なランニングをするよりも楽しく感じられる水泳の方が継続できるので、長い目で見れば効果的です。
同様に、早起きや片付けも楽しめるようにできれば継続は簡単になります。習慣化の第一歩は、「なにをすべきか」ではなく「なにをしたいか」からスタートするべきなのです。
02 「これならできる!」からはじめる
継続のコツは「無理しないこと」と著者は言います。たとえば10年間毎日日記を書き続けている人に継続のコツを聞くと「1行だけでもいいから、毎日書くこと」だと言っていたそうです。これを「ベビーステップ」と言います。赤ちゃんの小さな1歩のことです。
習慣化の大きなポイントは、「0を1にするのは大変だが、1を2にするのは簡単」ということです。完璧を目指す人はここがわからず、いきなり0から5や10を目指して挫折してしまいます。「どうせやるのなら、ちゃんとやろう」と考えてしまうからです。
そういう人には「日記を1行だけ書く」という発想は出てきません。自分で心の中に高いハードルを築いてしまい、実行を困難にしているわけです。
ベビーステップのコツは、「面倒」「怖い」「不安」などの感情が出てこなくなるまで徹底的に行動のハードルを下げることだと著者は言います。どんなにハードルを下げても、0にはなりません。
著者が示したベビーステップの具体的な設定方法を参考にしてください。
・ジョギングをする → ウェアに着替える
・ダイエットする → お昼ご飯のライスを半分にする
・片付ける → 5分間だけ片づけをする、トイレだけ綺麗にする
・禁酒する → ビール3杯のところビール2.5杯に減らす
・朝5時に起きる → 今より15分だけ早起きする
次は第2章です。
27 他人ではなく昨日の自分を超える
「できる人」と自分を比べて「成長できていない」と嘆いてしまうタイプの人がいます。そういう人は、自己嫌悪に陥る前に比較対象を変えることが大事です。他人ではなく、「過去の自分」と比較するのです。
ここで大切なのは、「できること」を数値化して過去の自分と比較することです。その結果、過去の自分より1ミリでも成長していれば、それは自分の史上最高記録を更新したことにほかなりません。今の自分は史上最高だと実感することがモチベーションになり、継続する意欲につながります。
28 “ある”ものにフォーカスする
「起業したいのに資金がありません」という起業家志望の人に、若き日の孫正義は「あるお金ではじめればいいんだよ」と答えたといいます。
私たちはともすれば「何かがない」ということを「できない理由」にして前に進もうとしなくなります。しかし「今“ある”ものでスタートする」という発想に変えると、視界が180度変わります。
『ユダヤ人大富豪の教え』で有名な作家の本田健は、わずかな資金で無料の小冊子を作り、それを知り合いに配ることからビジネスをスタートさせました。どんな人でもやりたいことのために必要なスキルや知識はゼロではないはずです。充分になるまで待つよりは、今すぐスタートするべきです。
29 結果は、行動量と確率で考える
著者は処女作を世に出すとき、人脈がなかったので出版社に片端から企画書と手紙を送りました。100社の出版社に送ろうと思っていたそうです。しかし33社に送った時点で11社から返答があり、のちにシリーズ12万部を記録する『30日で人生を変える「続ける」習慣』を2010年に発刊することができました。
今では非常に評判の悪いテレアポですが、それが廃れないということは、一定の確率で成果が上がっていることを示しています。大量行動は普遍の成功法則です。結果が出ないことについて私たちは「スキルがないから」「人脈がないから」と理由を口にしますが、そもそも行動量が足りていないことが原因であることも多いのです。1%の成功確率があるなら、100回やれば成就します。
第3章を見てみましょう。
45 放電を減らし、充電を増やす
この章では「感情習慣」を変えることが目的ですが、まずは自分の心のエネルギーを下げている要因について考えてみようというのがこの項目です。
1日の中で、自分の感情・気分・エネルギーを下げているものには、何があるでしょうか。
・朝早く起きようと思っていたのに、7時半ギリギリに起きてしまった
・お昼ご飯をドカ食いしてしまった
・洗濯物が山ほど溜まっている
・イライラして子どもに怒ってしまった
・家が片づいていなくてため息をついた
・友だちとの飲み会の約束をドタキャンしてしまった
・仕事で先週出さなければいけなかった報告書を今日も先延ばしにしてしまった
これらの感情エネルギーを下げたものを、著者は「心の放電リスト」と呼んでいます。そういうものにエネルギーを奪われないようにするためには、まず放電リストを書き出して自覚することです。
しかし、それだけでは心は豊かになりません。マイナスがゼロに近づくだけで、プラスにはならないからです。次に自分の心を豊かにするものを数え上げてリスト化してみましょう。著者はこれを「心の充電リスト」と呼んでいます。
・書斎でゆっくり30分、読書ができた
・クイーンの音楽を移動の電車で聴いた
・腕立て、腹筋運動ができた
・じっくりと日記を書いた
・家族と一緒にご飯を食べられた
・上司から「資料がわかりやすいね」と褒められた
これらのリストを1日の最後に振り返ることで、その日の総合的な充実度がはかれます。しっかりとリスト化することで、徐々に放電が少なくなり、充電が増えていきます。その結果、感情習慣が良くなっていきます。
最後は第4章です。
63 チャンスに気づく感度を高めておく
著者は2006年に勤めていた会社を辞めようか迷っていました。ある日、新聞を何気なく見ていたら、「雇われない生き方」という文字が目に飛び込んできました。その瞬間、心の内側で「そうだ。雇われない生き方がしたいんだ!」との共鳴が起こり、次の行動を起こしました。そして何をするかを決めないままに独立を決意したのです。
学生時代の友人に声をかけ、起業しないかと誘ったところ、あっさりと承諾してくれました。そして毎晩のように2人でファミレスに行き、事業アイデアを練りました。その中からコーチングというアイデアが生まれ、スクールに入ってプロコーチとして独立したわけです。
あとから見てみると、人生とは不思議な偶然の重なり合いから展開していくものです。しかし、それぞれの瞬間に人生を変えるサインや兆し、人との出会いがあり、それをつかみ取ってきたからこそ、今の自分があるわけです。
人生を変えるようなサインに出会うと、心が強く反応します。大事なのは、サインに気づく感度を高めておくことと、心の反応を無視せずに行動することです。具体的には、すぐに行ってみる、やってみる、会ってみることです。そこから運命が動き始めます。
人生を好転させる65のヒント、ぜひ一読してみてください。