オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

脳の名医が教える すごい自己肯定感

加藤俊徳・著/クロスメディア・パブリッシング・刊

990円(キンドル版・税込)/1,295円(紙版・税込)

本書は今のところ「キンドル・アンリミテッド」に登録されているので、会員なら無料で読めます。

今年はもしかすると紙の本の販売額を電子書籍が追い抜くのではないかといわれていて、出版界では注目されています。少し前までは「電子は売れない。マンガだけだ」と吐き捨てられていたのですが、時代の流れを感じます。

本書の発行元である株式会社クロスメディア・パブリッシングは、2005年10月創業という、日本の出版社の中ではかなり若い部類の会社です。東京・代々木上原のアパートの一室で産声を上げ、ビジネス・実用分野を中心に出版活動を続けています。

本書の著者である加藤俊徳氏は新潟県生まれの脳内科医で、株式会社「脳の学校」の代表のほか、昭和大学の客員教授も務めています。「脳番地トレーニング」、「脳活性おんどく法」の提唱者でもあります。

これまでに小児から超高齢者まで1万人以上の脳を診断・治療しており、脳の成長段階、強み弱みの脳番地を診断し、薬だけに頼らない脳番地トレーニング処方を行っています。主な著書は『1万人の脳を見た名医が教えるすごい左利き』(ダイヤモンド社)、『不安を力に変える』(扶桑社)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)などです。

本書がどのような意図で発刊されたかは、「はじめに」を読むとわかります。

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「自己肯定感」という言葉がよく使われるようになりました。
●自分は自己肯定感が低いから、なかなか人とうまく接することができない。
●自己肯定感が低いので自信が持てず、前向きに生きることができない。
●成功している人、人生を明るく元気に生きている人は自己肯定感が高い――。
(中略)
もしも皆さんが自己肯定感の低さで悩んでいるとしたら、それは本来の脳の働きを抑え込んでいる「何ものか」があるということ。それをどう外すか? そこがポイントになります。
***

つまり、「自分は自己肯定感が低いから人生をうまく生きられていない」と思う人は、自分の脳の働きを抑え込んでいる「何ものか」に気づいて、それを外すことでよりよく生きられると著者は言っているわけです。

ちなみに、「(中略)」とした部分では、著者が若い頃に悩まされた自己肯定感の低さの原因とその克服について語られています。著者は生まれつき左利きで、子どもの頃から何かと不自由な思いをしてきました。

それに加えて「音読困難」というハンディキャップもありました。文字を目で拾ってそれを言葉として発音するのがとても苦手だったのです。声に出せないだけでなく、目で拾った文字の意味がなかなか汲み取れないという問題もあり、小学校の低学年ではずいぶん低い成績をつけられたそうです。

そのため著者は「自分は劣っている」「自分は人より頭が悪い」という強烈なコンプレックスにとらわれていました。

それを脱却することができたのは、後年、脳の研究をするようになって自分の脳の画像を見たからです。著者の脳は明らかに他の人と違い、“読書脳”と呼ばれる左脳の視覚系が発達しておらず、逆に右脳側の視覚系が人一倍発達していました。

そのため、文字を見たときにいきなり左脳で文字として処理をすることができず、映像として右脳で処理してから左脳で文字処理をするという仕組みになっていました。つまり、文字を見てそれを発音するまでの間に、脳の回路が遠回りしていたわけです。

それを知った瞬間、著者は「そうか、自分は能力が低いのではなく、人と脳が違うだけだったんだ」と腑に落ちて、コンプレックスから抜け出すことができました。

自分の脳のメカニズムを詳しく知ると、自分にしかない長所に気づくこともできました。著者は文書を受け取ると、文字を読むのではなくざっと全体を眺めるだけで、そこに記されている書き手の意図がつかめるといいます。見ているだけでイメージとして書き手の意図が浮かび上がってくるからです。さらに、そこに書かれていない足りないポイントまでわかるのだそうです。しかも、そのプロセスは画像処理なので、とても速く行われます。これは1文字ずつ読んでいる人には追いつけない速度です。

もうひとつのコンプレックスであった「左利き」に関しては、2021年9月に出した『すごい左利き』(ダイヤモンド社)が予想を上回る売れ行きを記録したことにより、「世の中に自分と同じように左利きで悩んでいた人がこんなにいたのか」という思いとともに払拭することができました。

最終的に著者が自分の自己肯定感の低さを克服できたのは、国内の医師や研究者たちから関心を寄せられることがなかった自分の研究が、論文にして国際学会に出してみたらすんなり審査を通ってしまってからです。

まわりから支持されずに「自分はやはりおかしいのだろうか」と思っていたところが、1割くらいしか審査を通らないという狭き門を論文が通過して国際的に認められたことにより、一気に「他者から評価され、認められた」という実感になって著者を引き上げてくれたのです。

著者は「日本という国は自己肯定感を育む上では決してよい環境ではない」と言っています。公平さと公明正大さが求められるアカデミズムの世界にあっても、日本ではさまざまな人間関係や上下関係が入りこんできて、フェアな土壌が作られていないからです。

それにより、本来すばらしい能力を持っている人が環境に阻まれて能力を開花できず、自己肯定感を引き下げられているケースが多いと著者は言います。そのような場合は、環境を変えることで自分を評価し、認めてくれる人たちを探すことも一つの方法です。

ところで、自己肯定感の低い人がいる一方で、はじめから自己肯定感のやたらに高い人もいます。その人はスーパーエリート、いわゆる「勝ち組」かというと、そうとは限りません。はじめから高い自己肯定感は、何かの拍子に落ちてしまうともろいものなのだそうです。

反対に、自己肯定感が低く、自己否定ばかりしていた人がマイナスをプラスに変えて自己肯定感を高めることができたとき、それははじめから自己肯定感の高かった人よりもずっと強固な自己肯定感になるといいます。著者自身も若い頃からの2つのマイナスを克服したからこそ、現在の自分になれていると自覚しています。

ところで、自己肯定感を高めるには、まず「自己認知」という作業をしなければなりません。自己認知とは自分を客観的に知り、それを受け入れることです。著者の経験によると、自己肯定感の低さに悩む多くの人に共通しているのは、自己認知の弱さだということです。

自己認知が弱いと、自分のあらゆることをマイナスにとらえてしまいがちです。他の部分は人並みかそれ以上であっても、ある点が弱点であると感じてしまうと、そこに意識が集中して全体の自己評価を下げてしまう傾向があるそうです。

その結果、必要以上に自信を喪失し、能力を開花させることができなくなります。

客観的な自己認知ができれば、「自分にはマイナス部分もあればプラス部分もある。マイナスと思っているところも、じつは自分の個性であり、うまく活かせばプラスにできる」と考えることができるでしょう。

そういう考え方ができないのは、自己認知がゆがんでしまっているからです。それは幼少期の出来事が原因かもしれませんし、親やまわりから受けた教育が原因かもしれません。

ただし、著者は言います。「脳はいくつになってもつねに成長し続ける」と。正しく脳を使ってさえいれば、脳は勝手に自己肯定感を強化するべく働くのだそうです。

ここまでが「はじめに」に記された著者の本書発刊に関する思いです。それでは以下、目次を紹介します。

・はじめに
・第1章 「いい自己肯定感」と「悪い自己肯定感」がある
・肯定コラム01 「自己否定」によって自分を守っていませんか?

・第2章 ありのままの自分を受け入れるすごい自己肯定感10の強み
1.ストレスに強い
2.仕事ができる
3.人間関係力が高い
4.「怒り」をコントロールできる
5.嫉妬することが少ない
6.孤独に強い
7.「集中力」と「やる気」が高い
8.失敗を怖れずチャレンジする
9.創造性に富んでいる
10.おのずと成功への道が開ける
・肯定コラム02 二刀流・大谷選手の自律性自己肯定感

・第3章 脳の中から「自己否定」を追い出す方法
・肯定コラム03 自分をダメな親だと考えてしまう人の特徴

・第4章 自分を肯定する基準をつくる
・肯定コラム04 2500年前に「自己肯定感」を説いていた孔子の言葉

・第5章 あなたの脳に自信が宿る10の習慣
1.「100日カレンダー」で生活リズムを整える
2.1日7時間の睡眠をとる
3.毎日5kmの「朝散歩」をする
4.「くり返し」をやめる
5.「別の場所」に人間関係をつくる
6.「逆から考える癖」をつける
7.スマホの電源を切り、2メートル離れた場所に置く
8.身の回りの整理整頓をする
9.誘いにはとりあえず乗ってみる
10.時間を「先取り」する
・肯定コラム05 ほめ言葉で1日を終えよう!
・おわりに

第1章は自己肯定感に「いい自己肯定感」と「悪い自己肯定感」があるという話です。最初の部分に「『自己肯定感』判定テスト」があるのでご紹介しましょう。次の設問に「よくあてはまる」は5点、「どちらかと言えばあてはまる」は4点、「どちらとも言えない」は3点、「どちらかと言えばあてはまらない」は2点、「まったくあてはまらない」は1点として採点してみてください。

□私には「やりたいこと」や「夢」がある
□人にどう見られているか、おおよそ理解している
□コミュニケーション能力に自信がある
□言ってはいけないことは言わない
□手先が器用
□体を動かすことが好き
□他人の目はあまり気にならない
□不慣れな場所、はじめての場面でもいつもどおり行動できる
□言われたことを聞き漏らしたり、うっかり忘れることがない
□人の話を最後まで集中して聞ける
□その場に合った適切な態度や行動がとれる
□新しい知識を取り入れることに興味がある
□予定を決めたり、見通しを立てたりするのが好き
□嫌なことはすぐ忘れることができる
□他人の成果を素直に祝福できる
□人と一緒に仕事をしたり、行動したりするのが好き

65点以上の人……まぎれもなく「自己肯定人間」
50~64点の人……「準自己肯定人間」
35~49点の人……「自己否定傾向人間」
34点以下の人……「自己否定人間」

上記の設問は、それぞれが著者の主張する「脳番地」に対応しているので、どの設問の点数が低いかで、自分の行動をどのように変えていけば良いのかが判定できます。

またこの章では、高すぎる自己肯定感についても警鐘を鳴らしています。自己肯定感ばかりで、自己否定がほとんどない人は、自己認知力が欠けている場合があるからです。その結果、単なる自信過剰で現実から遊離しているおそれがあると著者は指摘しています。

さらに著者は、自己肯定感を「他律性」と「自律性」の2つに分けて論じています。他律性とは、社会評価に基づいた自己肯定感のことで、学校の成績や会社での評価に満足して自己肯定感が高いものを呼びます。自律性とは、自己認知に基づき、自分の内的な基準による自己肯定感のことです。

著者は「他律性」の自己肯定感はもろくて不安定であり、「自律性」はとても強固で安定していると説明しています。したがって本書では自律性自己肯定感の獲得に焦点を当てて、これ以降の章を進めていきます。

第2章の内容は目次に記したので省略し、第3章にいきましょう。この章では、自分の脳の悪いクセを直す方法を解説しています。悪いクセを直すことで、自分の脳の中から「自己否定」を追い出そうというものです。

まずはじめに、自分を知ることで自己肯定感を上げる練習からです。
・あなたの「強み」と「弱み」は何ですか?
・大切にしている「価値観」と「価値基準」は?
・あなたの興味や好奇心の対象は?

上記3つの設問に対する答えを書き出し、あなたをよく知る友人などに見せてみましょう。それから、この設問についてその友人と話し合ってみます。自分の考えていた自己像と他者が見たあなたの像の違いを知ることで、自己認知が進み、自分の認知のゆがみがどこにあるかがわかります。

この作業によって、自分がマイナスだと考えていた部分が、単なる個性であることが見えてきます。さらに、それを克服する方法もわかるでしょう。この作業により、自己否定を自分で生みだしてしまう負の連鎖を自律した自己肯定の正の連鎖に切り替えることができます。

そして「自己否定しやすい人の8つの特徴」が列挙されていますので引用しましょう。
1.他人の評価に依存している人
2.自分に嘘をついてしまう人
3.愛情を受けていない人
4.道徳心、公共心が低い人
5.共感力が欠如している人
6.無理に現状変更しようとする人
7.根拠のない優越感に取りつかれている人
8.完ぺき主義の人

自分の考え方や行動が上記8つの特徴に当てはまる人は、特に自己否定の負のスパイラルに入らないように注意が必要です。

ここまでで約半分を紹介しました。興味があったら、ぜひご一読をオススメします。


 

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